女性は更年期を境に急速に骨が弱くなります。体を支えるだけでなく、全身の健康にも関与しているのが骨。今回は骨の強さや役割、骨が弱くなる原因を中村光伸さんにお伺いしました。
今回の話を伺った先生
光伸メディカルクリニック院長。整形外科医、医学博士。近年、注目の若返りホルモン「オステオカルシン」の研究を進め、骨の強化と全身の機能回復を両立する「骨たたき体操」を考案。近著に『医者が考案した骨粗しょう症を防ぐ1分間骨たたき』(アスコム)がある
骨の強さは骨密度と骨の「質」で決まる
「骨の強さを示す指標のひとつが『骨密度』。骨の中のカルシウムなどのミネラル量を示す値です。しかし、それだけでは十分ではなく、『骨質』も重要です。骨はカルシウムが約70%、残り約30%はコラーゲンなどでできています。タンパク質(コラーゲン)が骨の土台をつくり、そこにカルシウムが付着しています。この土台のコラーゲンが劣化したり減少すると、骨質が悪くなります。骨の強度は骨密度と骨質で決まるのです」。
骨密度は各地域の保健センターで測定可能。骨質は特定の医療機関で、食事内容などの問診、血液検査で骨代謝マーカーやビタミンD・Kの数値などから予測できます。
骨の強度とは?
骨の健康には、骨の量(=骨密度)が7割、骨の質(=骨質)が3割の比率で関係しています。骨質を観察していくことも大切!
女性は60歳を過ぎたら骨粗しょう症予備軍!
「骨はつねに生まれ変わっています。古くなった骨は破骨細胞により壊され(骨吸収)、新しい骨をつくる骨芽細胞がそれを再生(骨形成)します。しかし、年齢とともにこのバランスがくずれ、骨吸収に対して骨形成が追いつかなくなり、結果、骨が弱くなります。その最大の原因は女性ホルモンの急激な減少です。女性ホルモンには骨形成を促進し、骨吸収を抑制する働きがあるため、女性は更年期世代になると骨が弱くなります。閉経後の60歳以降は全員が骨粗しょう症予備軍だといえます」(中村先生)。
骨形成を促すには、骨へ適度な刺激と骨形成を助ける栄養素の摂取が大切!
女性の骨密度の変化
骨密度は40代から減りはじめ、閉経後に急速に低下します。60歳以上はみんな「骨粗しょう症予備軍」といっていいほど。放っておくと、骨は確実に弱くなっていきます
病気を防ぐ“若返り”ホルモンも分泌!
骨の役割は、体を支えて姿勢を維持し、体を動かすこと。もちろん、脳や内臓の保護も大事な役目です。
「しかし働きはそれだけではありません。骨は血液をつくり、生命維持に欠かせないカルシウムを貯蔵。さらに最近では、骨芽細胞が免疫力を高め、各臓器の機能をコントロールするホルモンを分泌していることがわかりました。その中で注目されているのが『オステオカルシン』です。血流に乗って体の隅々まで運ばれ、各臓器を活性化する働きがあり、糖尿病、動脈硬化、認知症などの予防や改善の効果が期待されています」。
骨の健康を守ることは、さまざまな病気の予防にもなるのです。
イラスト/Jessie Hartland(CWC TOKYO) 構成・原文/山村浩子