認知症は今や誰でもなる可能性のある病気です。代表的な4つの種類とその違いを、順天堂大学医学部名誉教授の新井平伊先生に伺いました。
教えてくれた人
新井平伊さん
Heii Arai
1953年生まれ。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と臨床を中心とした老年精神医学が専門。アミロイドPET検査を含む健脳ドックを導入した「アルツクリニック東京」院長。2021年に「健脳カフェ」設立
認知症にはさまざまな種類があります
認知症とは、脳の病気や障害などによって、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる“症状”の総称です。
「いくつかの種類があり、最も多く、日本では認知症の約7割を占めるのが『アルツハイマー型認知症』です。
脳にアミロイドβ(ベータ)やタウという特殊なタンパク質が蓄積され、やがて脳の一部が萎縮していきます。最初はもの忘れから始まり、徐々に進行していくのが特徴です。
次に多いのが、特殊なタンパク質のレビー小体が脳の大脳皮質や脳幹に増える『レビー小体型認知症』。幻視や手が震えるパーキンソン症状などが特徴的。
そのほかに、脳梗塞などの脳血管障害をきっかけに発症する『血管性認知症』は、起こった部位により、症状はさまざまです。
前頭葉や側頭葉前方が萎縮する『前頭側頭型認知症』では、人格変化や行動障害、失語症などの症状が起こります」(新井平伊先生)
代表的な認知症は4種類
●アルツハイマー型認知症
- 原因/脳にアミロイドβやタウなどがたまる。
- 症状/記憶障害、時間や場所が認識できないなど。
●レビー小体型認知症
- 原因/脳の神経細胞にレビー小体がたまる。
- 症状/幻視、手が震えるなど。
●血管性認知症
- 原因/脳梗塞や脳出血などの脳血管障害。
- 症状/ダメージを受けた脳の場所により異なる。
●前頭側頭型認知症
- 原因/大脳の前頭葉や側頭葉を中心に神経変性が起こる。
- 症状/人格障害、失語症など。
厚労省の次の一手は「予防」
厚生労働省の推算では、認知症高齢者の数は2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人が発症するとしています。
今や認知症は家族や身近な人も含めると、誰もがかかわる可能性のある病気です。
「これを踏まえて、2015年に発表された新オレンジプラン(2017年に一部改訂)では、認知症になっても住み慣れた場所で、希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指した、認知症との『共生』の施策が推進されてきました。
さらに、2019年にこの後継となる「認知症施策推進大綱」が発表されると、『予防』が強調されました。ここでの予防とは『認知症にならない』ではなく、『発症を遅らせる』『進行を穏やかにする』という意味です。
生活習慣病を予防したり、運動不足などの生活スタイルの改善、社会参加などに、認知症の発症を遅らせる可能性が示唆されており、今、それらのエビデンスの収集や普及が進んでいます」
イラスト/midorichan 構成・原文/山村浩子