「爪水虫」と聞くと、なんとなく「自分には関係ない」と思っていませんか?でも実は、私たちが思っている以上に爪水虫を患う人は多いのだそう!そういえば、この時季はブーツを履いて足が蒸れるということがありがちですよね。
水虫はジムや温泉などでうつるイメージですが、実は家庭内の感染がダントツで多いそう。おうち時間が増えた今、家族に水虫の人がいると感染リスクもグッと上がってしまうのだとか。
もはや人ごととは思えなくなってきますね。そこで、爪水虫について、佐藤製薬のセミナーに参加して学んで来ました!
◆足水虫と爪水虫は別の疾患⁉
セミナーには、東京女子医科大学名誉教授の川島 眞先生、順天堂大学医学部皮膚科学講座講師の木村有太子先生、内科・皮膚科医の友利 新先生の3人が登壇されました。
まず気になるのは、足水虫と爪水虫は何が違うの?ということ。原因菌は同じ「白癬菌」です。足水虫は白癬菌が素足に付着して12~24時間以上すると感染するもので、足の角層に菌が住み着きます。それに対して爪水虫は、足に白癬菌がついたまま通気性の悪い靴などを履いたりすることで増えた菌が、爪のまわりの皮膚から爪に入り込んで住み着いたもの。
◆実は10人に1人が爪水虫になっていた!
足水虫と爪水虫の違いはわかりましたが、「私は大丈夫」とどこかで思っていませんか?ところが、全然そうではないんです!
「水虫以外の症状で皮膚科を受診した人の爪を見せてもらう調査をしたところ、その1割が爪水虫だったという調査結果があります」と川島先生。しかも、その約半数が女性だったというから驚きです!
この結果をもとに推測すると、日本人の10人に1人の約1100万人が爪水虫ではないかと考えられています。そのうち爪水虫で皮膚科を受診している人が約170万人なので、隠れ爪水虫患者は約930万人いる可能性も!
この結果も多いなと思ってしまいますが、「皮膚科を受診した人の1割なので、実際の爪水虫患者さんはもしかしたら1割より多いかもしれません」と木村先生。だとすると、自分も感染しているかも⁉と不安になってきます。
◆あなたは大丈夫?爪水虫60秒セルフチェック
※このあと、爪に異常がある写真が続きます。苦手な方はご注意ください。
自分は大丈夫かな?と思ったら、下記を参考に、爪の状態を見てセルフチェックをしてみましょう。女性はヒール靴を履いて爪が変形したり、足の人差し指が長い人は幅の狭い靴を履くなどで爪をケガして厚くなったりということがありがち。「医師でも、内科医だと爪水虫かそうでないかの区別が難しく、皮膚科の受診を促すことが多いですね」(友利先生)。ということは、一般の人が自分で見ても判断しづらいということなので、レベル2以上が当てはまる人は皮膚科で受診するのがおすすめです。
【レベル0】
爪は滑らかで透明でうすいピンク色。足の水虫は自分も家族もない。
⇒健康な爪です。
【レベル1】
爪は滑らかで透明でうすいピンク色。ただし、足の水虫が自分にまたは家族にあり。
⇒現在は心配ありませんが、将来的に爪水虫のリスクがあります。
【レベル2】
一つあるいは少数の爪の一部に濁りや変形や厚みあり。
⇒爪水虫やほかの爪の病気の可能性があります。皮膚科で爪の検査が必要です。
【レベル3】
一つあるいは複数の爪の一部が変形して白や黄色あるいはすじ状の濁りあり。
⇒初期の爪水虫が強く疑われます。適切な治療で短期間で治ることが期待できます。
【レベル4】
複数の爪の半分くらいが白や黄色に濁り、厚くなり、爪の下がぼろぼろになっている。
⇒中等症の爪水虫が強く疑われます。治すには適切な治療を十分行うことが必要です。
【レベル5】
複数の爪のほぼ全体が白や黄色に濁り、厚く変形し、爪の下がぼろぼろになっている。
⇒重症の爪水虫が強く疑われます。皮膚科で適切な対処法について相談しましょう。
◆爪に異常があると転倒リスクが2倍以上に⁉
爪水虫は感染すると、見た目だけでなく健康寿命にも大きく関わってきます。足の爪は体重を支えて歩行時のバランスを取りやすくする働きがあり、爪水虫などで足の爪に異常があると歩行機能が低下し、転倒リスクが2倍以上にも上がってしまいます。女性は骨粗しょう症の人が60代以降増えていき、転倒すると骨折してそのまま寝たきりに…ということもなりかねません。
普段あまり注目していなかった足の爪も、実はこんなに重要な部分だったなんて、気をつけないといけないですね!
◆「早期発見」と「冬の治療」が大事です!
未来の自分のためにも爪水虫がないかチェックし、万一感染していたらしっかり治療しておきたいところ。「冬は空気が乾燥していて治療のベストタイミングです」(木村先生)ということなので、治療するならまさに今!
また、足水虫はドラッグストアで市販薬がありますが、爪水虫は爪の奥に菌が住み着いているので、足水虫の市販薬では治癒が難しいそう。病院でも第一選択が飲み薬の処方薬だそうなので、受診して処方してもらうのが完治への近道。「治療は軽いものであれば2~3カ月、全体に及んでいる場合は1年くらい治療にかかります。軽度なほど短い時間で治癒します」(木村先生)。少々長い道のりですが、途中でやめずしっかり治したいところですね。
足先を温かく保ちたい寒い季節は、足が蒸れることも多いので気をつけておきたいところですね。チェックや対策をして、未来の自分が元気に過ごせるようにしていきましょう!
川島 眞(かわしままこと)先生
東京大学医学部を卒業後、パリ市パスツール研究所に留学。東京大学医学部皮膚科講師などを経て東京女子医科大学名誉教授に就任。アトピー性皮膚炎をはじめ、美容、皮膚ウイルス感染症、接触皮膚炎などを研究。
木村有太子(きむらうたこ)先生
順天堂大学医学部皮膚科学講座
独協医科大学医学部卒業後、順天堂大学浦安病院皮膚科での臨床経験、ドイツミュンスター大学病院皮膚科での留学経験を経て、順天堂大学浦安病院皮膚科准教授、順天堂大学医学部皮膚科講座講師を歴任。
友利 新(ともりあらた)先生
東京女子医科大学卒業後、同大学病院の内科勤務を経て皮膚科へ転科。現在都内2ヵ所のクリニックに勤務の傍ら、医師という立場から美容と健康を医療として追求し、美しく生きるための啓発活動を雑誌・TV・SNSで展開中。
◆資料提供/佐藤製薬
取材・文/倉澤真由美