【教えていただいた方】
1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年「日本機能性医学研究所」を設立(2009年に法人化)。2017年、スーパーフードとしての牧草牛(グラスフェッドビーフ)の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)ほか多数。斎藤クリニック、Saito Farm
♦普通のアレルギー検査では反応が出ない食品も、遅延型アレルギーで高反応!
今回登場するのは、渡邊奈津子さん(1974年生まれ・ヘア&メイクアップアーティスト)。
雑誌や広告、ショーなどでモデルのヘア&メイクをする仕事に加え、一般女性へのプライベートメイクレッスンもしています。
子宮筋腫のため2年半前に子宮摘出をし、強制的に閉経。
卵巣はあるので、急に更年期の症状は出ないだろうと思っていましたが、気がつけばさまざまな不調に襲われていました。
【渡邊さんが特に気になっていた不調】
1)めまいや耳鳴り、時々動悸など(15年ほど前から)
2)逆流性食道炎の症状が時々出る(その場合、処方薬を飲む)
3)肌の乾燥や血行不良、皮膚炎が起こりやすい
そのほか、毎春、花粉アレルギーの症状がひどいことも悩みでした。
食事に直結した不調としては、食後に眠くなる、特定の食品でお腹が痛くなったり気持ちが悪くなったりすることも…。
例えば、コーヒー、オクラ、乳製品、大豆製品などを食べた後に手が震えたりめまいがしたこともあれば、肉、大豆などのタンパク質を少し多めに食べると気持ち悪くなる。どの食品に反応してかはわからないけれど、手首がかゆくなる、などです。
渡邊さんには、まず行きつけの皮膚科で普通のアレルギー検査を受けてもらいました。
ところが!
調べた数十項目の食品は、アレルギー抗体のすべてが陰性。
まるで何も反応していません。
その後、遅延型フードアレルギー(食物過敏症)の検査にトライ。
この連載で再三紹介した「アンブロシア」の検査キットを利用しました。
キットを14年前から販売しているアンブロシアは、米国シアトルのラボと提携し、海外の郵送式検査キットとしては初めて厚生労働省の改正薬事法に準拠した認可を取得しています。
遅延型フードアレルギー(食物過敏症)の検査結果が届いてみると、今度は高反応の食品が10個以上あったことに驚かされます。
通常のアレルギー検査では、すべて陰性だったのにです!
今回のアンブロシアの検査結果でいちばん数値の高かった「カゼイン」は、牛乳やチーズなどに含まれるタンパク質のひとつ。
牛乳に含まれるタンパク質は「ホエイ」と「カゼイン」があり、どちらも検査項目に入っていますが、渡邊さんはカゼインに反応していたのです。
渡邊さんにはこの連載記事を最初から読んでもらい、一定期間、高反応食品を除去することから始めてもらいました。
ひと言で簡単に「除去」と言いますが、レベル5と6の食品を完全に除くということは、乳製品(ヨーグルトや牛乳)・チーズ・卵・などが食べられなくなるということ。
特に覚悟がいったのは大好きなカフェラテをやめることでした。
飲んだ2時間後くらいに決まって気持ちが悪くなったりお腹が痛くなるなどの症状が出るにもかかわらず、やめられずにいたのです。
それでも、今回の検査結果を受けて、意を決してカフェラテ断ち!
「カフェラテは長いこと癖になっていたのですが、卵などを含め、今の自分の体には適していないことが検査結果で目に見えてわかったので、意外にもすんなり受け入れることができました!」と渡邊さん。
もともと野菜中心の食生活でしたが、卵や乳製品を除去するに当たっては、そのことでタンパク質が不足してしまうため、代わりになるタンパク質をとってもらうことを約束しました。
外食でタンパク質をとるとなるとお肉が多めになりがちなので、家での食事は魚や大豆製品をふんだんに。
ある日の食卓はこんな感じです。
[左上から時計回りに:ツナ缶と小松菜和え、ねぎ納豆、カツオのたたき、厚揚げ焼き、鮭入り呉汁、もち麦入りご飯]
今回の食事療法で特に大活躍だったのは高タンパク質を意識した具だくさんスープ。
魚に肉に緑黄色野菜に根菜に…栄養たっぷり!
「健康には以前から気をつけているつもりだったのですが、今回、食事の写真をよく撮るようになって、意識しないとタンパク質をあまりとれていないことに気がつきました。
粉っぽいものを飲むことが昔から苦手なので、プロテインも渋々だったのですが、自分にも飲めるタイプのものを見つけたので、プロテインデビューです!」
そして、この連載を監修してくださった斎藤糧三医師のアドバイス(連載第3回目)を受けて、ビタミンDを含むサプリメントも追加。
[左:渡邊さんがもともと飲んでいたEPA配合サプリ。中央:斎藤先生開発のサプリで、ビタミンDやAを含む多種のビタミン群とミネラル類を豊富に含む「newBasic」(日本機能性医学研究所)。右:タンパク質が足りないときに飲んだオーガニックのプロテインドリンク]
おやつには、オーガニックプロテインバーを選んだりして、ここでもタンパク質摂取に努めました。
♦あっという間に起きた変化は胃の不快感のなさ。そして花粉症が出ないこと!
こんなふうにして、それまで欠かせなかった卵や乳製品をとらずに過ごしていた渡邊さん。
すると1カ月もしないうちに、大きな変化が起きたのです!
「いちばん大きかったのは逆流性食道炎の胃の不快な症状がなくなったこと。
医者から処方された治療薬も飲んでいないんです!
コロナ禍であまり食欲がない時期も、タンパク質をとろうとほとんど毎日卵料理を食べていたので、いつも胃がシミシミヒリヒリ…としていたのが嘘のよう」
そして、花粉の季節がやって来ても、今年は花粉症の症状が出なかったんです!
これはビタミンDのなせるわざだと思います。
友人知人にもビタミンDで花粉症が治ったという人が多いので。
そのほか、寝つきがよくなったこと、血行不良が改善されてきたことも大きな変化です」
こんな渡邊さんの変化について、斎藤先生に見解を聞いてみました。
「卵と乳製品を除去したらあっという間に体調がよくなる人はいます。
逆流性食道炎の症状が治ったのは本当によかったですね。
渡邊さんが飲んでいたような胃薬は、タンパク質の分解を妨げてしまいます。
未消化のタンパク質が腸内に行くことで、せっかく高タンパク質食にシフトしても遅延型フードアレルギーのリスクがぐっと上がってしまうからです。
長年続いているというめまいや耳鳴りがまだ残っているそうですので、もう少し今の食事やサプリを続けてみることをおすすめします。
大好きなカフェラテを飲んだり卵料理を食べられるようになる日はきっと来ますから」(斎藤先生)
実は、このレポートにはオチがあります。
食生活を改善して4カ月経った頃、渡邊さんがこっそり教えてくれました。
「ここ最近かなり体調がよくなったので、調子にのってチーズと卵を食べてみたんです。
そうしたら、やっぱり逆流性食道炎の不快感が出てしまいました。まだダメですね」
はい、斎藤先生のアドバイス通り、もうしばらく続けてみてくださいね!
検査を受けたときより、肌のハリもツヤもよくなっていた渡邊さん。
これからますます健康になっていきそうな勢いです!
取材・文・撮影/蓮見則子