あなたは骨折リスクが高い? 危険度をチェックしてみましょう。
骨折リスクチェックリスト
若い頃にダイエットをしていた
痩せ型である
閉経後である
運動をまったくしていない
牛乳や乳製品は好きではない
偏食ぎみである
紫外線は徹底的に防いでいる
最近、身長が縮んできた
母親や祖母に骨粗しょう症の人がいる
今までに骨折したことがある
お酒をよく飲む
タバコを吸う
多く当てはまった人ほど骨折リスク大!
こんな人は骨折しやすい
40代以降骨がもろくなるメカニズム
更年期以降は骨形成より骨吸収が進みやすい
40代〜50代になると骨がもろくなる理由を、骨がつくられる仕組みからさらに詳しく伺いました。
「骨には、古くなった骨を壊す破骨細胞と、新しい骨をつくる骨芽細胞があり、破骨細胞が古い骨を壊すことを骨吸収、骨芽細胞が新しい骨をつくることを骨形成といいます。このふたつを繰り返すことで骨は新しく生まれ変わっています。これを骨代謝といい、約5カ月かけて一定の形と密度を保ちながら骨を再構築し、大人は約3〜5年で全身の骨が新しく入れ替わります」(中村格子先生)
ところが女性は40代以降しだいにこのバランスがくずれてしまいます。
「女性ホルモンのエストロゲンには骨芽細胞の働きを助けて、破骨細胞の活動を抑える働きがあります。でも40代以降にエストロゲンが減っていくと、ふたつの骨細胞のバランスが乱れやすくなります。特にエストロゲンの分泌がなくなる閉経後は、破骨細胞の骨を壊す働きが、骨芽細胞の骨をつくる働きより上回ってしまうため、骨吸収が進んで骨密度が下がってしまうのです」(中村格子先生)
骨は日々、生まれ変わっている
●破骨細胞
破骨細胞は古い骨細胞を破壊(吸収)し、カルシウムを血中に溶かし出します
●骨芽細胞
骨芽細胞は血中のカルシウムやタンパク質を利用して、新しい骨をつくります
●破骨細胞の働きが骨芽細胞より上回る
加齢に伴い女性ホルモン・エストロゲンが減ってくると、骨芽細胞が骨をつくるスピードより、破骨細胞による骨吸収のスピードが上回り、骨がもろくなってしまいます
骨は若返りホルモン「オステオカルシン」を分泌
骨というと単に体を支える構造物と思いがちですが、近年、ホルモンを分泌する臓器でもあることが判明。
「骨から分泌されるホルモンのひとつがオステオカルシンです。このホルモンは血液を通じて脳や生殖器、筋肉、膵臓(すいぞう)などに届けられ、記憶力や筋力、生殖力などを若く保つ、“若返り物質”。また、もうひとつ、オステオポンチンという骨ホルモンには免疫力を高める働きが。骨がもろくなるとこれらのホルモンも減るため老化が進みます。これも死亡リスクが上がる要因です」(中村格子先生)
オステオカルシンのおもな働き
- ・認知・記憶機能の改善
- ・心臓・血管の健康維持
- ・血糖値の上昇抑制
- ・肝機能を高めて脂肪肝を防ぐ
- ・筋肉を増やす
- ・脂肪の蓄積を抑える
- ・生殖能力を高める
- ・栄養素の吸収を促進
ダイエットや生活習慣で骨の老化が早く進む人も
残念ながら年齢に関係なく、早い段階から骨がもろくなってしまっている人もいます。
「女性の場合、10〜13歳頃の成長のピークを過ぎて初潮を迎える頃に骨が著しく発達し、格段に強くなります。しかしこの時期に無理なダイエットをしていると、初潮が遅くなり、骨が丈夫にならないまま大人になってしまいます。ですから若い頃ダイエットをしていた人は、骨が早くもろくなりやすい傾向があります。
そのほか、痩せ型の人や、カルシウムなど骨に必要な栄養をとっていない人、運動をしていない人、タバコを吸う人、お酒を飲みすぎている人なども骨が早くもろくなりやすいので注意が必要です」(中村格子先生)
最初のチェックリストに多く当てはまる人ほど、骨折リスクは高くなります。気をつけて!
●骨がもろい人は骨の老化も早い
最も骨密度が増えるべき成長期や思春期に、ダイエットなどの理由で骨密度が正しく増えないと、一般的なレベルより最大骨量が減ってしまい、その後も骨密度が低いレベルに。骨粗しょう症も早く進んでしまいます。
骨折したらどんな治療をする?
骨折してしまった場合に備えて、治療法を知っておきましょう。とにかく早く病院へ行くことが大事。
ギプスなどで固定。ひどいと手術が必要
「骨折の治療の基本は固定です。骨折部のずれが少ない場合や、ひびが入っているだけの場合などは、ギプスやシーネ(副(そ)え木)、包帯、三角巾、装具などで外から固定して骨がつくのを待ちます。これを外固定といいます。部位にもよりますが、40代〜50代の女性の場合、完治するまでに2〜3カ月かかることが多いです。骨のずれが大きいなど外固定で治りにくい場合は、金属製のねじやボルト、プレートなどを用いて骨をつなぐ手術をすることも。
また、骨折後は体の機能が落ちるので回復するためのリハビリも行います。そのほか、骨折を早く治す超音波骨折治療などもあります。いずれにしろ骨折は治るまでに時間がかかり、その間に体力が落ちやすいので気をつけましょう」(中村格子先生)
●外固定
骨折した骨を元の位置に戻し、ギプス、シーネ、包帯、三角巾、装具などで固定する方法。固定して動かさなければ治るが、我慢できずに動かすと治りが遅くなるので注意。
●内固定(手術)
手術で皮膚を切開し、金属製のねじやボルト、プレートなどを用いて骨折した部位を内側から固定させる方法。骨の損傷がひどい場合やずれが大きい場合などに行われる。
●リハビリ
骨折した場所を固定して動かさずにいると筋肉量が減少して体の機能が低下するので、それを回復させるためにリハビリが必要になることも。早期から行うのが効果的。
●超音波骨折治療(LIPUS)
微弱な超音波を1日1回20分間、骨折部に当てることで治癒を促進する方法。治癒期間を約40%も短縮することが可能。自費診療だが、難治性骨折など保険がきく場合も。
Dr.KAKUKOスポーツクリニック院長。スポーツドクター。一般患者からアスリートまで広く診療にあたる。健康な体をつくるエクササイズ指導も人気
イラスト/平松昭子 取材・原文/和田美穂