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30代~50代に急増中の「腱鞘炎」。その理由と治療法は?

パソコンやスマホの操作が日常化する昨今、手や指の使いすぎによる手首の腱鞘炎(けんしょうえん)が30代~50代に急増中! ひどくなると日常生活に支障が出ることも。そこで、最近多い腱鞘炎について、整形外科医でピラティスインストラクターでもある武田淳也先生にお話を伺いました。

その手首の痛み…「ドケルバン病」かも!

瓶のフタを開ける、重いフライパンを振る、雑巾を絞るといった動作をすると、手首が痛むことはありませんか?

 

「腱鞘炎とは、手を使いすぎることなどで腱鞘という組織に炎症を起こし、痛みが生じる症状名のことです。腱鞘とは、骨と筋肉をつないでいる腱を包み、滑らかに動くように滑車のような働きをする組織です。

 

特に最近増えているのが、手首の親指側に起こる腱鞘炎であるドケルバン病です。ドケルバン病は別名、狭窄性腱鞘炎とも呼ばれ、おもに何かをつかんだり、握ったり、つまむ、絞るといった動作を繰り返し、手を酷使する人に多く発症します。好発年齢は妊娠世代や更年期世代の30代~50代です」(武田淳也先生)

 

ドケルバンという病名は、1895年に最初にこの症状を報告した、スイスの外科医ド・ケルバン(de Quervain)医師から命名されました。

腱鞘炎 解剖図

その構造を見てみましょう。

 

親指と手首は短母指伸筋腱長母指外転筋腱という腱でつながれています。その2本の腱は腱鞘のトンネルの中を走っており、ドケルバン病はこの短母指伸筋腱と長母指外転筋腱、腱鞘が炎症を起こした状態です。

腱鞘炎 骨解剖図

 

また似た症状では、母指CM関節症という病気もあります。母指CM関節は第1中手骨(ちゅうしゅこつ)大菱形骨(だいりょうけいこつ)の間にある関節(イラストの赤い部分)で、ここの関節軟骨がすり減ってしまい、その結果として関節の炎症や腫れ、痛みを引き起こす病気です。症状が進行すると、亜脱臼を起こして、手の変形などが起こります。

 

 

こんな生活をしている人は要注意!

「ドケルバン病も母指CM関節症も、痛む場所が微妙に違い、骨の変形があるかどうかなどの違いがありますが、要は親指の使いすぎ病です。発症する要因や対処方法(手術療法以外)は似ています。

 

ドケルバン病と母指CM関節症になる要因

●長時間のパソコンやスマホの操作
●家事(重いフライパンを振る、タオルを絞るなど)
●ドアノブを回す
●手を使う仕事(美容師、ピアニスト、料理人など)
●赤ちゃんの抱っこ
●介護
●更年期によるホルモンバランスの乱れ

 

 

【見分け方】

腱鞘炎 チェック法

ドケルバン病/親指を曲げ、ほかの4本の指でそれを包むように握ります。この状態でこぶしを小指側に倒すと痛む(フィンケルシュタインテスト変法)など。

 

母指CM関節症/親指の根元が痛み、フタが開けられなくなった、親指の根元がでっぱってきたなど。

 

 

医療機関で行う検査と診断法は?

問診(生活習慣、痛み状況など)、触診(痛みの部位を特定する)、超音波検査、レントゲン検査などの画像検査を行います。特に、母指CM関節症が疑われる場合はレントゲン検査でCM関節の変形の有無を確認します。

 

【治療方法】

患部の安定・安静
ドケルバン病や母指CM関節症の治療でいちばん大事なことは、親指や手首をできる限り動かさずに休ませることです。専用のサポーターなど装具を当てて固定します。

 

投薬治療
消炎鎮痛剤などの湿布、塗り薬、腱鞘内へのステロイド注射などで、炎症、痛み、腫れを抑えます。

 

リハビリテーション
関節の曲げ伸ばし方法を訓練します。

 

手術療法
ドケルバン病/腱鞘を切開し、ふたつの腱を分けている壁も切除して、腱を解放します。局所麻酔による日帰り手術で、所要時間は15~30分程度です。

 

母指CM関節症/亜脱臼を伴う、関節や手首の変形が見られる場合は、関節固定術や大菱形骨の一部を切除して靱帯(じんたい)を再建する切除関節形成術などの手術を行います。

 

 

 

体の使い方(モーターコントロール:略してモタコン)の見直しが重要!

何より大切なのは、日常生活の中で親指や手首への負荷を軽減することです。それには、作業時の姿勢や手の使い方に気をつけるよう心がけましょう。

 

特に親指は、ほかの指と対で使うことが多いので、ついつい出番が多くなりがちです。だからこそ工夫して、親指を使わなくてもできるようなことは、意識して極力使わないように心がける…そんな意識が必要です。

 

NG!

スマホ使い方NGイラスト

「例えば、長時間のパソコン操作時には、キーボードの手首部分に専用のクッションを置いて、手首の角度を工夫します。また、スマホ操作を片手で行わないことも大事。

 

長時間にわたる作業や繰り返しの動作を行う場合は、適度な休息をとり、そのつど手首を動かすなど軽いストレッチを行い、手にストレスをためないようにしましょう。

 

どんな病気も同じですが、初期の症状が現れたら、早めに医療機関を受診してください。症状が進行する前に、適切な診断と治療を受けることが重要です」

 

 

 

【教えていただいた方】

武田淳也
武田淳也さん
医師、米国国家認定ピラティス教師
公式サイトを見る
Facebook Instagram

「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力

 

イラスト/かくたりかこ 構成・文/山村浩子

 

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