最も多いのが足首の内反捻挫
「捻挫とは関節に不自然な強い力がかかることで、靱帯(じんたい)や腱、軟骨を損傷した状態のことです。
足首をはじめ、手首、指の付け根、肩、膝など、関節ならどこでも起こりますが、そのうち、最も頻発するのが足首です。なかでも、足裏を内方向にひねって、外側くるぶしの前部分、前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)を損傷する内反捻挫が約9割を占めます」(武田淳也先生)
足をひねる原因で多いのは、スポーツ時では、走っているときに他人の足を踏んでしまったり、急に止まろうとしたときなどです。それ以外には、歩行時にわずかな段差で足をひねったり、階段を踏み外すなど、ちょっとした瞬間に傷めることがあります。
ハイヒールや厚底靴、サボなどの靴を履いていたり、酔ったときなどに起こすケースが多いようです。筋力や柔軟性の低下など、年齢を重ねると増えてきます。
症状は外くるぶしの前の腫れや痛み
捻挫を生じると、外くるぶし(外果)の前や下部分が腫れて、痛みます。内出血で青あざができることもあります。重度の場合は、靱帯が完全に切れてしまって、歩行が困難になることも!
軽度
腫れも痛みも軽く、一時的に靱帯が伸びている状態。腫れがほとんど見えないか、少し確認できる程度で、歩行に問題はありません。
中度
靱帯の一部が切れている状態で、痛みと腫れや関節に張りを感じます。変色が見られることも。軽い可動域の低下がみられ、歩行に痛みを伴います。
重度
靱帯が完全に切れて、関節が不安定になった状態です。激しい痛みと腫れ、張りや変色がみられます。可動域の低下がみられ、歩行が困難になります。
対処法の第一はRICE処置
傷めてしまったときの処置はRICE処置を行います。
RICEとは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったもので、患部の炎症や出血を防ぐための応急措置です。
Rest(安静)
まず行うことは安静です。むやみに動かさないようにします。
Icing(冷却)
次に、患部を冷やします。保冷剤や冷たいタオル、冷感湿布などで、炎症を鎮静させます。
Compression(圧迫)
包帯などを巻いて、患部を圧迫して関節が動かないように固定します。
Elevation(挙上)
患部を心臓の位置よりも高い位置に挙げておきます。例えば、床に横になり、ソファの上に足を乗せるなど。これにより、内出血による腫れを軽減することができます。
たかが捻挫と思わず、整形外科へ!
しばらく安静にしていると、痛みや腫れが治まってきます。放っておいても大丈夫かな? と思いがちですが…。
「足首は構造上とても繊細で、きちんと元の形に戻すためには、適切な治療が必要です。これを怠ると、関節が不安定になり、同じように内反捻挫を繰り返すことがあります。いわばクセになるというケース。多くは適切な治療がされていない場合に起こりがちです」
また、骨折や剝離骨折などを起こしていることもあるので、たかが捻挫だと決めつけずに整形外科で診断してもらうことをおすすめします。
【診断】
問診でどのようにしてケガをしたか、触診で痛みの位置や程度を確認。症状により、レントゲン検査や超音波検査などで、骨折や脱臼などの異常がないかを調べて診断していきます。
【治療方法】
薬物療法
痛みが強い場合は、炎症鎮静剤の内服薬や湿布、外用薬などの処方。
患部の安静・固定
サポーターやギプスシーネ、テーピングなどで患部を固定する物理療法をします。こうして、足首が動かないようにして、損傷部位のストレスを軽減します。これが再発予防につながります。
物理療法
治りを促すために、微弱電流や超音波治療などを行います。
リハビリテーション
理学療法士によるリハビリテーションで、硬くなった足首のストレッチなどを行います。
再発予防には体幹強化のエクササイズを!
数カ月すると痛みは取れ、日常生活に支障はなくなりますが、同じことを繰り返さない、または捻挫を予防するためにも、エクササイズをプラスしましょう。
「それには、片脚立ちをしたときのバランス感覚を養うことが大切です。例えば、片脚立ちになったときに、上半身が外側へバランスをくずしたり、着地した際に膝が外側に開いてしまうと、足首が内反しやすくなるため、『内反捻挫』のリスクが高まります」
転倒防止エクササイズ
片脚立ちになり、上げた脚を内や外に動かすことで、安定した歩行に必要な体幹をはじめ、股関節まわりの筋力を総合的に鍛えることができます。これは転倒防止にもなるので、日頃から行うことをおすすめします。
①両足を骨盤幅くらいに開いて立ち、 骨盤のあたりに両手で三角を作って当てます。骨盤が床に対して垂直になっていることを意識します。
② 上体はそのまま、息を吸いながら、片脚を内側にクロスするように上げます。
③ 息を吐きながら、股関節を使って、脚を外側に回します。気持ちよく股関節が伸びるのを感じたら、元に戻します。反対の脚も同様に行い、これを5~6セット行います。
たかが捻挫と思わず、しっかり治す。そして予防のためにも足腰のエクササイズを生活に取り入れましょう。
【教えていただいた方】
「整形外科 スポーツ・栄養クリニック」(福岡、東京・代官山)理事長。日本で初めて医療にピラティスを取り入れ、独自の「カラダ取説」プログラムの普及に尽力
イラスト/かくたりかこ 構成・文/山村浩子