美容のため、健康のためにサプリメントを飲んでいるものの、「本当にこのとりかたでいいのかな?」と疑問に思ったことはありませんか? そんなお悩みにお答えいただくべく、26年にわたり臨床の現場でサプリメントのとり方を指導している、佐藤務先生に教えていただきました!
◆代謝促進のためには、不足しているビタミン等を補う必要が!
そもそもの話、普段バランスよく食事をしていたら必要な栄養素が足りるのでは?と思う人もいるかもしれません。ところが、最近は少し事情が変わってきているのだそう。それには、以下の3つの理由があります。
①野菜に含まれる栄養素が低下している
1つ目の理由は、昔と比べて野菜に含まれる栄養が減っているため、同じ量の野菜をとっても必要な栄養素が取れない状況になっているためです。下のダイコンやトマトの例を見ても、大幅に栄養素が減っているのがわかりますね。この不足分を補う必要があります。
②加工によりビタミンやミネラルが減ってしまう
2つ目の理由は、加熱して壊れる栄養素や、ゆでることで水に流れ出てしまう栄養素などがあり、調理することで野菜に含まれていた栄養素が減ってしまうことがあります。ビタミンなどの栄養素が減っているのに、カロリーは残るのでカロリー過多になってしまうことも。
そもそもサプリメントは素材の栄養価の低下や加工することで不足する栄養素を補給・補完するために作り出された食品なのです。栄養学的には通常の加工食品とは真逆の逆加工食品といえます。
③現代食は大幅な栄養の偏り(アンバランス)が問題に
3つ目は、2つ目のお話とも関連しますが、調理で栄養を失われたり、献立で栄養の偏りがあるなどで現代の食事はカロリーが多いのにビタミンなど必要な栄養素が足りていない食事になりがちのため。カロリーをエネルギーや皮膚や筋肉や骨などの各組織に代謝するにはそれに見合った量のビタミンやミネラルが必要ですが、ビタミン類が不足すると代謝が停滞し、代謝しきれなかった余剰カロリーは皮下脂肪や脂肪肝として蓄積され生活習慣病につながります。
現代人が太りやすい原因はこの栄養のアンバランスに加え、代謝のもう一つの材料である運動の不足も大きな原因となっています。
こうした3つの理由で代謝に必要な栄養素をサプリメントで補う必要があります。
◆健康的に活動するためには2種類の代謝の理解がカギに
美肌のため、元気で活動するためなど、さまざまな目的でサプリメントをとると思いますが、サプリメントをとることで体にどのようなことが起きているのでしょうか?
まず、美容にも健康にも代謝が大切です。代謝には大きく2つの代謝があります。1つは古い細胞から新しい細胞に生まれ変わる「新陳代謝」。もう1つは、取り入れた栄養を体を動かすための「エネルギー代謝」です。
まずはきちんと新陳代謝ができることが基本。それができていて初めて、円滑で活発なエネルギー代謝が促進され、その継続が美容や健康につながります。まずはこの2つの代謝の流れを意識して新陳代謝がうまくいくようその材料をきちんとそろえることが大切です。
まず新陳代謝に必要なタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをきちんと補い、次にエネルギー代謝に必要な糖質、ビタミンを補う必要があります。
では、現代食の栄養のアンバランスを理解したうえで、具体的にどのように不足しやすい栄養を補っていけばいいのでしょうか。サプリメントを効果的に補給するためは、2つの代謝を考慮し、優先順位に従ってサプリメントをとることが重要です。
●Step1でとるべきサプリメント
・マルチビタミン
・マルチミネラル
・タンパク質
新陳代謝にもエネルギー代謝にも欠かせない、ビタミンとミネラル。不足するとどちらの代謝も停滞し、不調の原因になります。そこでまずはマルチビタミン&マルチミネラルと、新陳代謝の第一栄養素であるタンパク質をしっかりとり全体の摂取量を底上げします。
●Step 2でとるべきサプリメント
・βカロテン(ビタミンA)
・Bコンプレックス(ビタミンB群)
・ビタミンC
・ビタミンE
ベースの栄養素を底上げできたら、次は個々のビタミンを強化していきます。肌や目の健康に欠かせないβカロテン、糖や脂肪のエネルギー代謝に欠かせないBコンプレックス、ストレスで消費されがちなビタミンC、抗酸化作用が強いビタミンEを取り入れましょう。ただし、過剰摂取にならないよう注意しましょう。
●Step 3でとるべきサプリメント
・ファイバー(食物繊維)
・レシチン
・EPA/DHA
ビタミンの強化ができたら、総仕上げとして大豆に多く含まれるレシチン、魚に多く含まれるEPA/DHA、糖の吸収を抑えて善玉菌を育てるのを助ける食物繊維は現代の食事で不足しがちなので、意識してとりましょう。
◆お悩み別サプリメント活用術
基本的なサプリのとり方がわかったところで、次はお悩み別におすすめサプリをご紹介します。Step3までの栄養素が補えたあとに、自分の目的に合わせたサプリメントをとるようにしましょう。
●肥満を予防・解消したい
〈とりたいサプリメント〉
・還元型コエンザイムQ10
・α-リポ酸
・L-カルニチン
還元型コエンザイムQ10とα-リポ酸、L-カルニチンを一緒にとることで、エネルギーを作り出すシステムのクエン酸サイクルに働きかけ、運動時の糖質や脂質のエネルギー代謝の燃焼パワーを促進します。
サプリをとると同時に、栄養素のバランスを意識する、筋力トレーニングで筋肉量を増やすといった対策を行うことで、効果的な肥満解消につながります。
●風邪を予防したい
〈とりたいサプリメント〉
・ビタミンC
・β-カロテン
風邪の予防をしたいときはビタミンCを多めにとりましょう。また、β-カロテンは鼻やのどの粘膜を強くし、免疫力を高めてウイルスの侵入を防ぐ効果が期待できます。
サプリのほかにも、十分な栄養と睡眠をとってストレスをため込まない、バランスのいい食事をとり体を温めるといった対策が大切です。
●肌荒れを防ぎたい
〈とりたいサプリメント〉
・Bコンプレックス(ビタミンB群)
・レシチン
・還元型コエンザイムQ10
美肌をキープするには、粘膜や皮膚を健やかに保つビタミンB群をしっかりとりましょう。また、コレステロールの分解や排泄に有効に働き、血液中の資質を固まらせずにスムーズに流す作用のあるレシチンも大切。酸素や栄養分を体の隅々まで巡らせ、美しい肌を保つことができます。さらに抗酸化作用のあるコエンザイムQ10をとることで、乱れたターンオーバーを整えてくれる働きも。
サプリをとるとともに紫外線対策をしたり、保湿を入念にするといったことも気を付けましょう。
●疲れを何とかしたい
〈とりたいサプリメント〉
・Bコンプレックス(ビタミンB群)
・還元型コエンザイムQ10
・ガーリック
ベースとなるビタミンやミネラルをしっかりとったうえで、エネルギー代謝を高めて疲労感を緩和してくれるビタミンB群が入っているBコンプレックスや、疲労感軽減に役立つ還元型コエンザイムQ10をとりましょう。またニンニクの疲労回復効果が知られていますが、そのままとるとにおいが気になることもあるので、サプリメントでとると便利。
普段の生活ではまずは栄養バランスの良い食事をとる、休息をとるなどが大切です。
●よく眠れない
〈とりたいサプリメント〉
・マルチミネラル
・マルチビタミン
・プロテイン
・バレリアン
鉄や銅、マグネシウム、プロテイン(アミノ酸のトリプトファン)が不足すると安眠の妨げに。ミネラルをしっかりとると同時に、ビタミンやプロテインもバランス良く撮りましょう。また、リラックス効果があるハーブのバレリアンをとるのもおすすめです。
よく眠るためにはカフェインを多く含むコーヒーやお茶を控え、ストレッチやヨガなどで体を動かすように心がけましょう。また、朝日を浴びることも大切です。
●コレステロール・中性脂肪が高い
〈とりたいサプリメント〉
・Bコンプレックス(ビタミンB群)
・ビタミンC
・ビタミンE
・ファイバー
エネルギーを消費する助けとなるビタミンB群、ビタミンC、ビタミンEを多めにとり、代謝を促進しましょう。また、コレステロールの吸収を抑制する食物繊維をとるのもおすすめです。
サプリをとるほか、食事では脂肪のとりすぎを防ぐために牛肉や豚肉は赤身肉を使う、鶏肉は皮を取り除くなどの工夫を。また運動して筋肉量を増やし、エネルギーを消費しやすい体づくりをしましょう。
●ストレス対策がしたい
〈とりたいサプリメント〉
・ビタミンC
・カモミール
ストレスに対抗するには、ビタミンCをしっかりとりましょう。また、イライラを抑える鎮静作用があるカモミールをとるのもおすすめです。
サプリに加え、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。気の合う友人と食事を楽しむ、運動をする、入浴やマッサージでリラックスなど、心地よいと思うものを探してみて。
まずは基本のサプリをきちんととりつつ、お悩みに合ったサプリをとって、体を整えていきましょう!
稲毛病院整形外科・リハビリテーション科/健康支援科部長。1997年、臨床の現場にサプリメントの摂り方を指導するビタミン外来を新設。2000年には全国初の健康支援科を創設、8つの健康支援外来を新設。昭和大学医学部統合医学科講師に就任し、医学生にサプリメントや栄養の講義を開始。専門は整形外科・リハビリテーション科だが、予防を含めた総合医療を提唱。
◆資料提供/佐藤務先生、『心と体を強くする!サプリメント活用法』(日東書院本社)
構成・文/倉澤真由美