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誤嚥を予防するために。飲み込む力を鍛える「呼吸筋トレーニング」にトライ!

食べた物が食道ではなく気管に入ってしまう「誤嚥」を予防するには、喉の筋力を強化するとともに、呼吸筋を鍛えて肺活量をアップすることが重要。飲み込む動作は呼吸とかかわっているのです。誤嚥予防に効果的な呼吸筋トレーニングについて、耳鼻咽喉科専門医の西山耕一郎先生に教えていただきました。

どうして、呼吸筋トレーニングが必要なの?

 

体内に酸素を取り込む呼吸は、生命維持に欠かせない機能。息を吐き切って、酸素をたっぷりと取り込むためと、誤嚥した物を吐き出す力=肺活量を鍛えることが重要です。勢いよく息を吐き出す「肺活量」が鍛えられると、万一食べた物を誤嚥しかけたとしても、大きく咳をして吐き出すことができます。そうすれば、気管に入るのを防ぐことができるのです。

 

「息を吐き出す力」を鍛えるには、口すぼめ呼吸がおすすめ。口すぼめ呼吸をすることで、肺や心臓を取り囲んでいる胸郭を広げ、肺の下にある横隔膜などの呼吸筋を動かすことができるようになります。すると肺が大きく膨らんで、たっぷりと空気を吸い込むことができるようになり、息を吐き出す力が強くなるのです。

 

「実際に、“誤嚥したグループ”と“誤嚥していないグループ”を比べたときに、“誤嚥したグループ”の人たちは呼吸機能が低下しているという研究データがあります。誤嚥を防ぐためにも、日頃から呼吸筋を鍛えて肺活量を強化しましょう」(西山耕一郎先生)

 

ドクターがすすめる「呼吸筋トレ」実践編

 

まずは、呼吸筋トレの基本となる口すぼめ呼吸をマスターしましょう。鼻から深く息を吸い、軽く口をすぼめて、ゆっくりと息を吐きます。

 

「最近は姿勢の悪い人が増えていますが、猫背で呼吸していると呼吸が浅くなってしまいがち。浅い呼吸をしていると胸郭や横隔膜の動きが悪くなり、呼吸筋が衰えてしまいます。体内に取り込む酸素の量も減ってしまうため、体の冷えや疲れやすさ、便秘などの不調につながりやすいのです。でも、腹式呼吸をすると副交感神経が優位になり、リラックスできます。誤嚥予防はもちろんのこと、さまざまな体の不調の改善に役立ちますよ」

 

下に紹介するエクササイズは、「息を吐く」ことに意識を向けたトレーニングです。いずれも呼吸筋を鍛える効果が高いので、毎日どれかひとつ、朝昼晩に1セットずつ実践してみましょう。

 

横隔膜を大きく動かして肺活量をアップ!
<口すぼめ呼吸>

誤嚥_口すぼめ呼吸法

1.しっかりと息を吐き切ったあと、鼻から深く息を吸います。このとき、お腹が膨らんでいるのを確認しましょう。

 

2.次に、軽く口をすぼめて、ゆっくりと息を吐きます。

 

吐く時間は、吸う時間の2倍ほどをイメージして。1セット5~10回。1日3セット行いましょう。

 

縮んだ胸を大きく広げて、呼吸筋を強化
<バンザイ体操>

 

1.椅子に座って背すじを伸ばし、息を吸いながら、両腕をゆっくりと上げてバンザイします。このとき、腹部を伸ばすのを意識して。

 

2.左右のひじと脇腹を伸ばしたまま、ゆっくりと息を吐きながら両腕を下ろしていきましょう。背すじが伸びて猫背が改善され、頸部の筋肉を柔軟にする効果も期待できます。

 

1セット10回。1日3セット行いましょう。

 

息を吐く力を鍛えるとともに、嚥下機能を高める効果が!
<ペットボトル体操>

誤嚥_ペットボトル呼吸法

1.まずは手でつぶせるくらいの柔らかい空のペットボトル(500ml)を口にくわえます。ペットボトルがぺちゃんこになるまで、思い切り息を吸い込みましょう。

 

2.ぺちゃんこになったら、今度は息を強く吹き込んで、ペットボトルをパンパンに膨らませます。肺の中の空気を出し切るつもりで、息を吐くのがポイント。慣れてきたら、材質が硬めの500mlペットボトルや、材質が柔らかい1lのペットボトルに替えて行ってみてもいいでしょう。
※血圧が高い人は、主治医に相談してから行ってください。

 

1セット10回。1日3セット行いましょう。

 

ペットボトル体操がうまくできない人向けにおすすめ
<腹式呼吸>

 

1.あお向けになって横になり、両膝を軽く立てて、手をお腹と胸の上に置きます。まずは鼻からゆっくりと息を吸って、お腹が膨らむのを手のひらで確認しましょう。

 

2.次に、口をすぼめ、お腹の力を抜いて、ゆっくりと息を吐きます。このとき、お腹をへこませながら、5秒かけて息を吐き切りましょう。

1セット10回。1日3セット行いましょう。

 

楽しみながら「息を吐く力」を鍛えよう
<手作り吹き矢トレーニング>

誤嚥_手作り吹き矢呼吸法

1.まずは吹き矢を自作しましょう。ラップの芯を筒の代わりに、また、丸めた新聞紙を矢の代わりに使用します。新聞紙を筒の穴よりも小さめに丸めるのがコツ。

 

2.丸めた新聞紙をラップの芯に仕込み、空のペットボトルを的に見立てて、勢いよく息を吹いて当ててみましょう。的に当たるようになったら、徐々に自分と的の距離をあけていきます。的に当たらなくても、肺機能が鍛えられていきます。

 

1セット10回。1日2セット行いましょう。

 

息を長~く吐く「口すぼめ呼吸」で肺活量をアップ!
<風車を回す>

 

1. 高齢者の誤嚥予防、嚥下トレーニングとしても行われる呼吸筋トレです。まずはたっぷり息を吸い込んで、息を長~く吐く「口すぼめ呼吸」で、風車に息を吹きかけてみましょう。

 

2.息を吐く時間が、吸う時間の2倍ほどになるように意識してみて。慣れてきたら、だんだんと強く息を吹きかけてみましょう。

 

1セット10~20回。1日2セット行いましょう。

 

 

【教えていただいた方】

西山耕一郎
西山耕一郎さん
西山耳鼻咽喉科医院院長
公式サイトを見る

医学博士、東海大学医学部客員教授、藤田医科大学医学部客員教授。耳鼻咽喉科頭頸部外科専門医、日本嚥下医学会嚥下相談医、日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。現在は複数の施設で嚥下外来と手術を行うかたわら、教鞭をとりながら、学会発表や医師向けセミナーを行う。著書に『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)、『のどを鍛えて肺炎を防ぐ』(大洋図書)、『誤嚥性肺炎に負けない1回5秒ののどトレ』(宝島社)など多数。

 

イラスト/カツヤマケイコ 取材・文/大石久恵

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