お正月気分から通常の生活リズムを取り戻す!
「小寒」は「寒の入り」ともいい、ここから寒さは厳しさを増します。そして1月11日には「鏡開き」として、お正月に丸いお餅を重ねてみかんを飾った「鏡餅」をいただく日になります。お正月気分もここで終わりです。
「にぎやかだった休日が終わり、ちょうど普段の生活リズムを取り戻すタイミングです。外は、北国では雪に覆われる地域も多く、太平洋側では晴れた日であっても冷たい空気に包まれます。
『芹乃栄(せりすなわちさかう)』と芹(せり)が盛んに育ちます。冷たい水で “競り合う”ように育つせりは、春の七草のひとつで、まさに旬を迎えます。
『水泉動(しみずあたたかをふくむ)』とは、凍った泉の水が少しずつ動く様を意味します。自然界では春に向けた準備が着々と進んでいることを感じます。
そして、『雉始雊(きじはじめてなく)』と、雉が活動を始めます。“雊”は雄の雉が鳴くことを表す漢字で、求愛の鳴き声を指しているようです。
一方で人間界は、寒さと空気の乾燥が進み、風邪やインフルエンザの流行が気になる時期です。特に肺炎や胃腸炎が増えているという情報もあるので、体を温かくして保湿も心がけ、体調をくずさないようにしてください」(齋藤友香理さん)
7日の「七草粥」で疲れた胃腸をいたわって!
「お正月で楽しく飲んで食べた胃腸はかなりお疲れぎみ。1月7日の節句では『七草粥』を食べる習慣があり、この頃になると七草がスーパーなどに並んでいるのをよく見かけます。七草は早春に芽吹くことから邪気を払うとされ、消化を助ける働きもあります。一年の無病息災を願う行事食として江戸時代から親しまれてきました。
七草はすずな、すずしろ、はこべら、なずな、ごぎょう、せり、ほとけのざです。すずなはかぶ、すずしろは大根で胃腸の働きを整え、せりは食欲増進の効果があります。そのほかの食材も栄養豊富で、伝統的な行事や食習慣にはきちんとした理由があるのです。
この時期には、食べ物の消化吸収に携わり、『気』や『血』をつくる『脾』の働きが弱りがちです。その『脾』の働きを助けるものを積極的に食べるといいでしょう。それは七草に登場した大根やかぶをはじめ、かぼちゃ、キャベツ、にんじん、柑橘類の皮などです。
自然界に『陽』のエネルギーが不足しているため、お正月疲れなどから気分もふさぎがちになります。ゆずの皮を料理に使うと、その爽やかな香りで気持ちが晴れやかになります。
ほかに元気を補う食材として、ホタテ、エビ、タラ、サバといった魚介類もおすすめ。これらを使った鍋料理もいいですね」
二十四節気の養生法とは?
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至(6/21)、最も短い日を冬至(12/21)と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分(3/20)と秋分(9/22)を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。(詳しくは第1回参照)
※日にちは国立天文台発表の2024年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」
【教えていただいた方】
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト/河村ふうこ 取材・文/山村浩子