寒さによる冬の不調は軽いストレッチで予防!
正月気分はすっかり消えて、寒さだけが身にしみる時期です。立春を前に日は少しずつ長くなってはいますが、まだその実感は湧かず、ただただ春が待ち遠しいという人も少なくないでしょう。
「小寒と大寒を合わせた時期を『寒の内(かんのうち)』や『寒中(かんちゅう)』といい、大寒の最終日は『寒の明け(かんのあけ)』と呼ばれています。まさに一年で寒さが最も厳しくなる時期です。
『水沢腹堅(さわみずこおりつめる)』と沢の水が厚く凍るなかで、『款冬華(ふきのはなさく)』と、地中からはふきのとうが顔を出し始めます。
そして、『鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)』と、鶏が卵を産み温めるために小屋にこもる時期になります。『乳』は鳥が卵を産むことを表し、『とや』は鶏小屋のこと。長い冬が終わり、春がそう遠くないところまできていることを告げています。
寒の内の水は『寒の水』と呼ばれ、その冷たく澄んだ水には霊力がこめられていると考えられています。特に味噌や日本酒などの仕込みに用いると味わい深くなるとして、『寒仕込み』は珍重されてきました。
この時期は、寒さで手足が冷え、体が縮こまっているので、肩こりや関節痛などを起こしやすく、胃腸の働きが悪くなり便秘にもなりがちに。血管が収縮するので、血圧が上がったり、心筋梗塞や脳梗塞などの発症が増えます。風邪やインフルエンザの流行も気になります。
こんなときは、体の機能の低下を防ぐため、軽いストレッチやマッサージなどで、外から刺激を加えるのがおすすめです」(齋藤友香理さん)
手を温めたり「陽池(ようち)」のツボ押しも◎
「特に、手の甲側の手首にある『陽池』のツボを圧したり、温めると、血流がよくなり自律神経のバランスが整い、免疫力の強化に役立ちます。
陽池は手の甲側の、手首を反らせたときにできる横ジワの中央にあります。ここをもう片方の手の親指で気持ちいい圧で押します。
この手首の部分を冷やさないように注意してください。外出時は手袋をして、家では手浴をしてしっかり温めるのがおすすめです。
手浴は深めの洗面器に湯を張り、手首の上までつかります。お湯が冷めるまで10~20分くらい行い、手をしっかり温めてください。好みの精油を1滴垂らすと、香りがよく気持ちも和み、リラクセーション効果が高まります。
食べ物で体の内から温めるのもいいですね。おすすめは温め食材であるサケ、エビ、鶏肉。これらを具にした鍋物を、辛味の食材である、しょうが、ねぎ、にら、大根などを加えたたれにつけて食べるのはいかがでしょうか? また、ジンジャー、シナモン、フェンネルなどのスパイスティーも体を芯から温めてくれます。
『冬の土用』は立春前の17日間、2025年は1月17日~2月2日です。冬の土用は未(ひつじ)の日として、『ひ』がつく食材や赤いものを食べるとよいとされています。例えば、ひじき、ひらめ、トマト、りんご、パプリカなど。ぜひ料理に加えてみてください」
二十四節気の養生法とは?
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至(6/21)、最も短い日を冬至(12/22)と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分(3/20)と秋分(9/23)を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。(詳しくは第1回参照)
※日にちは国立天文台発表の2025年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」
【教えていただいた方】

東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト/河村ふうこ 取材・文/山村浩子