三寒四温の不安定な気候は体調不良に要注意!
国立天文台の観測により、「太陽黄経が315度になった日」が「立春」です。節分の翌日で春の始まり。立春から立夏(りっか)までが春とされています。
節分は鬼を追い払って新しい季節を迎える行事。豆まきを行ったり、恵方巻きを食べる家庭も多いのではないでしょうか? 今年(2025年)の恵方は、「西南西やや西」だそうです。
「立春の頃は気候的にはまだ寒い日が続き、春といわれてもピンとこないかもしれません。それでも、『東風解凍(はるかぜこおりをとく)』と東からの暖かい春風が氷を解かし始めます。
『黄鶯睍睆(うぐいすなく)』、『魚上氷(うおこおりをいずる)』というように、山里では鶯が鳴き、川や湖の割れた氷の間から魚が飛び出るなど、鳥や魚が活動を始め、自然界では確実に季節が進んでいます。
春は発陳(はっちん)といわれ、『万物の古い気を発散させて、新しいものを誕生させる』季節。冬の間に閉じ込めていたものを解放し、動植物の成長や動きが活発になり、生命力や新しい『陽気』が満ちていきます。
三寒四温を繰り返しながら、少しずつ陽気が増えて暖かくなってきますが、この時期にはまだ寒い日が続きます。気候が不安定なので、冷えや風邪などで体調をくずしがち。花粉も舞い始めるので、アレルギーにも注意が必要です。外出時は暖かい上着を着て、マフラーやスカーフなどで首元を冷やさず、マスクをするなどして、寒さや花粉の対策を怠らないでください」(齋藤友香理さん)
芽吹き食材で春のエネルギー補給&陽気をアップ!
「植物や野菜もぐんぐんと育ち始める季節。こんな時期には、せり、ふきのとう、わらび、もやしなどの芽吹き食材がおすすめです。旬の山菜がもつ苦味には解毒作用があり、春に活発になる細菌やウイルスによる感染症の予防にもよいとされています。
また、こうした食材は五臓の『肝』の機能を助けます。肝は『血』を貯蔵して、『気』の流れを調整するので、自律神経を整え、新陳代謝を促し、精神を安定させる働きがあり、目の疲れや頭痛の予防効果をサポートします。
また、しょうが、ねぎ、にらなどの辛味食材は発散の力と温める働きがあります。免疫力を助け、風邪などの邪気を追い払い、花粉症の予防にもいいでしょう。
中国の北方では、立春の日に春餅(しゅんぴん/チュンビン)を食べる風習があります。水で溶いた小麦粉を薄く焼いた皮で、もやしやにら、ねぎなどの野菜や肉などを巻きながら、たれをつけて食べる、タイの春巻きに似た食べ物です。そんな春のエネルギーを補充する縁起物で、体調を整えてみてはいかがでしょうか?」
二十四節気の養生法とは?
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至(6/21)、最も短い日を冬至(12/22)と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分(3/20)と秋分(9/23)を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。(詳しくは第1回参照)
※日にちは国立天文台発表の2025年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」
【教えていただいた方】

東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト/河村ふうこ 取材・文/山村浩子