陰から陽に転ずる変化で自律神経が乱れがち
2月18日頃~3月4日頃を「雨水」といいます。3月3日には「桃の節句」を控え、春らしい陽気が増えてきます。「桃の節句」は「上巳(じょうし)の節句」ともいい、女の子の健やかな成長を願う「雛祭り」として定着しています。
「雨水の七十二候の初候である『土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)』は、空から降るものが雪から春の暖かな雨に変わり、寒さで凍てついていた大地が潤うという意味です。
そして、『霞始靆(かすみはじめてたなびく)』と山々には霞がかかり、『草木萌動(そうもくめばえいずる)』と草木が芽生えてくる時期になります。自然を観察していると、着実に春の足音が近づいていることを感じます。
春一番が吹くのもこの頃ですが、まだ気候が不安定なので、突然雪が降ることもあります。油断せずに暖かい服で体を冷やさないように気をつけてください。
陰から陽へ転ずる気の変化により、自律神経が乱れ、疲労を感じやすく、情緒不安定になりやすくなります。そんなときこそ、早起きをして朝の光を浴び、深呼吸をしましょう。
春は新鮮な陽気に満ちた季節。そのなかでも陽気が生まれるのは朝です。春の養生の一番のポイントは早起きと覚えておいてください」(齋藤友香理さん)
「内関(ないかん)」のツボ押しで自律神経を整えて!
「乱れがちな自律神経を整えるためには、『内関』のツボを押すのが効果的。万能ツボのひとつで、自律神経を整えて、精神を安定させる効果があるとされています。 ほかに乗り物酔いや二日酔い、胃の不快感、頭痛を軽減する効果も期待できます。
内関の場所は、手首の内側で手を曲げたときにできるシワから指3本分、腕側に上がったところ。2本の腱の間になります。ここをもう片方の手の親指の腹で、軽く円を描くように刺激します。強すぎると逆効果になることもあるので、あくまで気持ちがいい圧で行うのがコツです。
こんな時期に積極的に食べたいのは、芽吹く春のエネルギーを持つアスパラガスやブロッコリー、ごぼう、元気食材であるエビやホタテです。春菊やセロリ、ふきのとう、菜の花などの苦味食材には解毒作用があり、『気』の巡りをよくして精神を安定させる効果があります。
3月3日の『桃の節句』に食べるものといえば、五穀豊穣を祈った『ちらし寿司』や夫婦円満を願う『はまぐりのお吸い物』が有名。これらも旬の食材をふんだんに使ったものが多く、この時期独特の体調を整え、健康増進に役立ちます」
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二十四節気の養生法とは?
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至(6/21)、最も短い日を冬至(12/22)と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分(3/20)と秋分(9/23)を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。(詳しくは第1回参照)
※日にちは国立天文台発表の2025年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」
【教えていただいた方】

東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト/河村ふうこ 取材・文/山村浩子