暑さを避ける、体を冷やす、水分補給の3つが必須
熱中症というと真夏の猛暑のときの話では? という印象ですが、まだ体が暑さに慣れていない、6月の梅雨時にも急増します。もしものときのために、正しい対処法を頭に入れておきましょう。
「熱中症の初期の場合、めまい、立ちくらみ、生あくび、大量の発汗、こむら返りなどが現れます。このような状態で、意識がはっきりしていて、自力で水分補給ができるようであれば、病院へ行かずにひとまず自分たちで対処しても問題ないでしょう」(谷口英喜先生)
やるべきことは下記の3つ!
1 暑さを避けて涼しい場所に移動する
「まずは涼しい場所に移動します。エアコンが効いたところがベストですが、屋外の場合は日陰の風通しのよいところがいいでしょう。移動したら、衣服を緩めるなどして、楽な姿勢で安静にします」
2 体を冷やす
「熱中症による後遺症で最も多いのが脳神経障害なので、まずは頭に近い首の後ろ側を冷やします。ほかに、太い血管が通っている脇の下や脚の付け根などもいいでしょう。
冷たい飲料のペットボトルや濡れタオル、保冷剤(冷凍庫から出したばかりのものは手ぬぐいなどでくるむ)などを当てます。エアコンを使うのはもちろん、扇風機やうちわなどで風を送るのも効果的です。
やってはいけないのは、頭から水をかけることです。頭から水をかぶっても体は冷えません。かえって口に水が入り、誤嚥性肺炎につながる可能性があり危険です」
3 水分と塩分を補給をする
「熱中症が疑われる場合の水分補給には、経口補水液がベスト。
経口補水液は、水と塩分が体に吸収されやすい分量で配合されているので、最も効率よく水分補給ができます。
経口補水液が手元にない場合は、ひとまず真水かスポーツドリンクでもかまいません。ただし、真水やスポーツドリンクでしのいでいる間に、経口補水液を入手してください。
どうしても経口補水液が手に入らない場合は、水と一緒に塩飴や塩分タブレットなどで、塩分も補給します。
真水だけ1時間当たり1L以上飲むと、水中毒になる可能性があります。水中毒になると、意識が遠のいたり、頭痛や動悸、脱力感が現れます。
また、スポーツドリンクも水分補給にはよいのですが、アミノ酸が含まれている商品には注意が必要です。アミノ酸は体温を上げる作用があるので、熱中症対策の水分補給には適しません。
真水やスポーツドリンクでの水分補給は500ml程度に抑えてください」
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救急車を呼ぶか迷ったら、まず#7119
「意識がはっきりしていて、水分補給が自力でできたとしても、経口補水液を1本(500ml)飲んでも回復せず、どんどん体調が悪くなる場合は注意が必要です。
特に下記の症状があったら医療機関の受診、もしくは救急車を呼ぶ必要があります」
【医療機関の受診が検討される症状】
〇呼吸が荒い
〇顔が青ざめている
〇頭痛
〇嘔吐
〇倦怠感
〇判断力の低下
〇集中力の低下
〇虚脱感(力が入らない)
【救急車を呼ぶ症状】
〇自力で水分補給ができない、もしくは十分な量を飲めない
〇今いる場所、時間、自分の名前などが言えない
【一刻も早く救急車を呼ぶ症状】
〇呼びかけても反応しない
〇体が痙攣(けいれん)している
「救急車を呼ぶか迷った場合には、#7119に電話をして相談するといいでしょう。現在の状況を説明すると、救急搬送が必要かどうかを判断してくれます。
熱中症の体へのダメージは軽度でも24時間くらい続きます。たとえ体調が回復したとしても、すぐに今まで行っていたこと(仕事や運動、屋外での作業など)に戻らずに、しっかりと休んでください。
外出先の場合は、回復してから帰宅するようにしてください」

済生会横浜市東部病院患者支援センター長。福島県立医科大学医学部卒業。横浜市立大学医学部麻酔科に入局し、2011年に神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授。2016年より現職。現在、東京医療保健大学大学院客員教授、 慶應義塾大学麻酔科学教室非常勤講師を兼任。専門は麻酔学、集中治療学、周術期管理、栄養管理、経口補水療法、脱水症対策など。著書に『熱中症からいのちを守る』(評言社)など多数。テレビや雑誌、Webでも活躍。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子