妊娠・出産経験や加齢、運動不足などさまざまな原因で骨盤底筋は衰える
骨盤底筋は、子宮、膀胱、直腸などの臓器を下から支えているハンモック状の筋肉。この筋肉が緩むと、尿もれや骨盤臓器脱など、さまざまなトラブルが生じてしまいます。
そもそも、骨盤底筋が緩んでしまうのは、何が原因なのでしょうか?
「まず、女性の場合は妊娠・出産が原因のひとつです。妊娠中は女性ホルモンの変化で筋肉が緩みやすいことに加えて、子宮が大きくなるため骨盤底筋に負荷がかかり、たわんで緩みやすくなります。
また、経腟分娩では骨盤底筋が傷ついたり伸びすぎたりしやすく、それも緩む原因です。
ですから出産経験者は骨盤底筋が緩みやすい傾向にあります。
ただ、加齢や運動不足による筋力低下も原因になります。また、腹圧がかかると骨盤底筋に負担がかかるので、
慢性的な便秘でいきむことが多い人、慢性的な喘息で咳をすることが多い人、瞬発的に強い腹圧がかかるスポーツを長期間している人など、さらに肥満の人も骨盤底筋が緩みやすいので要注意です。
そのほか、猫背姿勢で骨盤が後傾していたり、前傾していたりすると、骨盤底筋に力が入りにくくなるので、それも骨盤底筋が衰えてしまう原因になります」(北條裕紀恵さん)
骨盤底筋が緩むリスクが高いのはこんな人
- ・妊娠・出産経験のある人
- ・運動不足の人
- ・便秘の人
- ・喘息などで咳をすることが多い人
- ・瞬発的に強い腹圧がかかるスポーツを長期間している人
- ・肥満の人
骨盤底筋が緩んでいると体にどんなサインが表れる?
では、骨盤底筋が緩んでいると、体にどんなサインが表れるのでしょうか?
「以下に挙げたような項目に当てはまる人は、骨盤底筋が緩んでいる可能性が高いです。多く当てはまるほど、その可能性は高くなります。自分でチェックしてみましょう」
骨盤底筋が緩んでいるサイン
□尿もれしやすい
□お風呂から上がったとき、腟からお湯が出てくる
□ヨガやストレッチなどをして脚を上げたとき、腟から空気音がすることがある
□下腹部に重い感じがあったり、内臓の下垂感、異物感などがある
□股間にピンポン玉のようなものが挟まっている感じがする
□夕方になると排尿後すっきりせず残尿感がある
□排便後に残便感があったり、会陰部を押すとすっきり出る
腟に指を入れて骨盤底筋の状態をチェックしてみよう
また、骨盤底筋が緩んでいるかどうか、自分で腟に指を入れてチェックする方法もあります。
「腟に人差し指や中指を第2関節まで入れて、指を体の中に吸い上げるようなイメージで骨盤底筋を締めてみましょう。入浴時に、座った体勢で試すとやりやすいと思います。
このとき、指がまわりから締めつけられるような感じがあればOK。指に圧迫感を感じなかったら、骨盤底筋を正しく動かせていないか、衰えているということ。
また指を押し出すような力がかかっていたら、そもそも骨盤底筋の動かし方が間違っているということになります」
骨盤底筋の緩みを感じた人は、骨盤底筋トレーニングを始めましょう。詳しいやり方は次回6月14日配信からお伝えしていきます。
【教えていただいた方】
2011年より医療施設の骨盤底筋トレーニング外来にて多数の患者に指導を行った後、2018年に「骨盤底筋トレーニング YUI」を開業。尿もれや骨盤臓器脱など、骨盤底の緩みに悩む多くの女性をサポートする。現在は、骨盤底筋のトレーニングだけではなく、骨盤調整や筋膜の施術など、サービスの幅を広げる。日本女性骨盤底医学会所属。
写真/Shutterstock 取材・文/和田美穂