婦人科医・小山崇夫先生に、更年期症状に対応する漢方について教えていただくシリーズの第4回です。
最終回の今回は、症状別に、よく使われる漢方薬を伺いました。
連載①②で説明があったように、それぞれの人の「証」の分類などにより、処方される漢方が違い、選択肢が広いのが特徴です。
【症状1・イライラ・うつ気分など】
「気」の流れが滞った「気虚」「気滞」によるイライラ、気分の落ち込み。
喉のつかえ感やお腹の張りなどの症状も代表的。
● 半夏厚朴湯 ハンゲコウボクトウ
心身ともに疲れやすく、冷え症で繊細な人に向く処方。喉のつかえ感にも。「虚証」向き。
● 補中益気湯 ホチュウエッキトウ
胃腸の働きをよくして体力を回復させ、元気を取り戻すのをサポート。「虚証」向き。
● 抑肝散 ヨクカンサン
神経の高ぶりを抑え、筋肉のこわばりを緩めて、リラックス状態に。中間証~やや「虚証」向き。
【症状2・のぼせ・発汗・動悸など】
漢方では「気」の不調の特徴的症状がこれ。
「気」が乱れて「気逆」になると、自律神経が乱れ、のぼせ、動悸、発汗などの症状が。
● 桂枝加竜骨牡蛎湯 ケイシカリュウコツボレイトウ
神経の高ぶりを沈め、気力をつけることで心の状態をよくする薬。「虚証」に向く処方。
● 温清飲 ウンセイイン
血液循環をよくし、のぼせや手足のほてりを取る作用。体力は中程度、皮膚がかさつく人向き。
● 温経湯 ウンケイトウ
手足がほてり、唇が乾くが足腰は冷えやすい、不眠、イライラなどにもよい。
【症状3・肩コリ・便秘など】
「血」の不調で起こる代表的な症状。血の滞りによる「瘀血」では
肩コリや便秘、腹痛など。血が薄い「血虚」では貧血などの症状も。
● 桂枝茯苓丸 ケイシブクリョウガン
血行をよくして熱のバランスを整える作用。ホルモンのバランスを整える効果にも期待。
● 通導散 ツウドウサン
血液循環や便通をよくする効果。「実証」で肥満体質、お腹の張りが強く、便秘がちの人向き。
● 加味逍遙散 カミショウヨウサン
血液循環をよくして体を温めつつ、上半身の熱を冷まします。「虚証」で疲れやすいタイプに。
【症状4・めまい・頭痛など】
「水」は体液の流れとかかわるため、代謝や免疫関連に影響します。
むくみ、めまい、頭痛のほか、下痢や排尿障害なども代表的症状。
● 苓桂朮甘湯 リョウケイジュツカントウ
水分循環を改善し水毒を取り去ることで、めまいや立ちくらみに対応。「虚証」向き。
● 女神散 ニョシンサン
血行と水分循環を改善。おもにのぼせとめまい、不眠、頭痛や動悸などに対応。体力中程度の人に。
● 当帰芍薬散 トウキシャクヤクサン
血行促進、貧血改善など。「虚証」で、さまざまな更年期症状のある人向き。
漢方で更年期不調 ① は こちら
漢方で更年期不調 ② は こちら
漢方で更年期不調 ③ は こちら
小山崇夫
婦人科医。小山崇夫クリニック院長。
更年期と加齢のヘルスケア学会および日本サプリメント学会理事長。
専門は内分泌(ホルモン)で、特に女性の更年期に詳しく、日本のHRTの第一人者。
著書に『遺伝子を調べて選ぶサプリメント』『女性ホルモンでしなやか美人』(ともに保健同人社)、
『40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」』(角川学芸出版)など