Q. 漢方薬とHRT(ホルモン補充療法)の併用はできる?
A. できます。より効果が出る場合も
「漢方薬はHRT(ホルモン補充療法)と並ぶ、更年期症状の治療方法のひとつ。日本では知名度が高いこともあり、第一選択肢となることが多いですね。
例えば、めまいなどの症状では、漢方薬のほうがHRT(ホルモン補充療法)よりも改善効果は高く、ホットフラッシュに関してはHRTのほうが効くという検証結果があります。症状の出方によっては、HRTと併用することもできます」。
漢方薬は東洋医学の「気・血・水(き・けつ・すい)」という考え方がベースになっています。気は生命活動のエネルギー、血は血液の循環、水は水分代謝を表し、このバランスがくずれると心身に不調が現れます。
更年期症状に処方される3大漢方薬が加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸ですが、人には個々に「証(しょう)<体質や体調>」があり、それを見極めて薬を処方するので、同じ症状でも違う薬を出されることがあります。自己判断で服薬すると効かない場合もあるので、専門家に見立てて処方してもらうことが大切です。
【気・血・水の考え方】
東洋医学では、体の調子が悪いのは気・血・水のバランスが乱れることで起こると考えます。おもに気の乱れはイライラやうつ状態、血の乱れは便秘や肩こりに、水の乱れはめまいやむくみに
よく使われる漢方薬
●加味逍遙散(かみしょうようさん)
虚弱体質で気と血が乱れているタイプの、イライラやうつ症状に
●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力がなく特に血と水が乱れて冷える人に。めまい、肩こりなどにも
●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
体力があるタイプで、ほてりやのぼせる人に。頭痛にも効果があります
●半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
胃腸虚弱の人やめまいに。ほかに頭痛や冷えにも処方されます
●抑肝散(よくかんさん)
体力は中程度でイライラしやすい人に。不眠にも処方されます
●加味帰脾湯(かみきひとう)
虚弱体質&胃腸が弱いタイプで、精神不安や不眠の症状がある人に
●補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
胃が弱く食欲が低下して、元気が出ない、手足に倦怠感がある人に
証にもよりますが、特にメンタル不調に効くのが加味逍遙散、めまいや冷えにいいのが当帰芍薬散、ほてりやのぼせには桂枝茯苓丸がよく処方されます
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。
構成・原文/山村浩子