更年期を終えたあとの時期をポスト更年期といいます。更年期の症状が抜けてからも、気をつけるべきことがあることを知っておきたい。
Q. 更年期が終わったら、今感じている不調は全部なくなるの?
A. 人それぞれ。でも、「真っただ中」のつらい症状は卒業していきます
「ポスト更年期の不調は、その人の性格や主観によるものが大きいと思います。ただ、ホットフラッシュなど『更年期真っただ中』の不調は、ほとんどの人が卒業できるといっていいのでは?
ポスト更年期以降も不調が続く場合は、HRTを続けることで萎縮性腟炎、頻尿、関節や手足の痛み、記憶力の低下といった症状の改善に効果がありますが、開始年齢によっては血管が炎症を起こして血栓症のリスクが高まるため、専門医との相談が必要です。
その場合はHRTの代替治療として、エクオールサプリメントや漢方薬の力を借りて、自律神経の乱れからくる症状を改善する方法も。また、骨密度の低下による骨折リスクがあり、生活習慣病の悪化が進行し、動脈硬化の変化もすでに起きている人が多い世代。
特に動脈硬化系の検査として頸動脈エコーや、70代以降は脳ドックで脳血管疾患の傾向を、カルシウムスコア測定(心臓CT検査)で疾患リスクの有無を、知ることが望ましいでしょう」(吉形玲美先生)
Q. 更年期が終わったら、婦人科も卒業?
A. 健康長寿のためにも、婦人科とのつき合いは一生続けてください
「ポスト更年期以降も健康長寿のことを考えて、『婦人科とは一生のおつき合い』ととらえてください。もちろん、婦人科検診も卒業ではありません。
ポスト更年期の健康トラブルで相談が多いのは、『健康診断で骨密度が低いと判明したので、詳しく知りたい』という骨密度検査の二次検査のほか、『子宮や内臓が下がってきている』という骨盤臓器脱、『腟の痛み・性交痛』などの萎縮性腟炎、また『尿もれ』や『膀胱炎を繰り返しやすい』などのGSM問題など、当院でも多岐にわたります。
『更年期を卒業し、不調が抜けた』という人でも、年1回婦人科系のがん検診を受けることは十分に意味があります。その他の検診についても継続して行ってください。同時に、長く受診・相談できるかかりつけの婦人科、医療施設を持つ&探すことはあきらめないで」
●ポスト更年期の健康トラブル
ポスト更年期には、骨盤底が弱ることが原因で、子宮や膀胱などの内臓が体の外に出てしまう「骨盤臓器脱」という病気が起こることも。ひと言で「臓器脱」といっても、種類はこんなに。手術のほか、骨盤底サポーターや、腟内に入れる「リングペッサリー」などの方法もあるので婦人科に相談を
浜松町ハマサイトクリニック特別顧問。大学病院で医療の最前線に立ち、女性医療・更年期医療のさまざまな臨床研究にも数多く携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、現クリニックへ。更年期、妊活、月経不順など女性の体のホルモンマネジメントが得意。著書に『40代から始めよう! 閉経マネジメント』(講談社)
イラスト/平松昭子 構成・原文/井尾淳子