漢方薬剤師・漢方ライフクリエーターの樫出恒代です。
「汗」に関するお悩みは暑い夏だけではなく、一年中あるのですが、「暑さによる汗なのか、更年期の不調によるものなのかわからないんです」という質問が、この季節には増えてきます。

先日も漢方カウンセリングにいらしたMさん(52歳)が、
「ぶわーっと汗が噴き出すんですよ。ほんとに滝汗…。
この前もお友達と4人でランチしているときに汗が出て。
タオルハンカチで拭いてたら、「私もよ」ってほかの3人も言ってくれたんです。
それで、私だけじゃないんだと少し安心できました」
と話してくれました。
どんなときに汗が出ますか?とお聞きしたら
「人と話しているとき、レジで並んで待っているとき。あとは、電話で話している最中や急いで仕事を進めなければならないときかなあ。急に身体がカァーっとなって、顔と頭と首から汗がブァーッと出て、その後は熱くなったり、寒くなったり…」
これは、更年期によく見られる「ホットフラッシュ」と呼ばれる症状の一つ。
自律神経の乱れが原因なのですが、ホットフラッシュによる汗の場合は氣温には関係なく、いきなり熱くなり、頭や顔、首などから汗が出るのが特徴。
人前で、特に顔や首など見えるところに出る汗は、女性にとってはかなりのストレスです。それが原因で、外出するのが億劫になったり、人に会うのをためらったり、仕事にも支障が出てくることもある辛い症状。
命に関わる重い病いではなくても、更年期にはこころを閉ざしがちになる、そんな辛い症状が出てくるのです。
たかが汗、されど汗。
汗の出方や体質ごとに対処法が。あなたの汗はどのタイプ?
暑い時の汗は、上がった体温を体温調整するために出る汗です。汗がさらっとしていて、出始めてから20分ほどで引いてくれば、問題ない汗の出方といえます。
漢方では、汗の出方もカウンセリングで重視することのひとつ。
「更年期~汗をかく場所からわかる、あなたの体調は?」というコラムを以前書きましたが、汗の出る場所によって、また、出方によって体質を見極めることが大切です。
汗は出せば出すほど良いわけではなく、例えば、「寝汗」は身体が弱っているサインです。「手汗・足の裏の汗」は氣が不足気味だったり、緊張感がある、自律神経のバランスがよくないとき、などと考えます。
更年期はさまざまな要因が重なりホットフラッシュのような“いやな汗”に悩まされる時期。
「先生、この滝汗なんとかしてください(涙)」というMさん、漢方や養生で乗り越えていきましょう!
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更年期の汗に、今すぐできる養生と汗を止めるツボ
☆すぐできる養生
・急な汗は首の後ろを冷やす
・汗が出始めたら、息を深くゆっくり吐く(顔や頭に上がった氣を下げるイメージで)
・氣持ち良い汗をかくために 普段から身体を動かす
・冷たいものは控えて、胃腸を冷やさない
・夏でも下半身は冷やさない
☆汗止めのツボも
大包(だいほう)
ワキの下あたりにあるツボ。舞妓さんの顔汗を食い止めているとも言われます。顔はもちろん上半身の汗を抑えたいときにも効果的。
屋翳(おくえい)
バストトップから5cmほど上。顔汗や脇汗に効果大。

腕を組んで中指を脇の下の大包に、親指を屋翳に当てると
同時に二つのツボを押せます。
合谷(ごうこく)
親指と人差し指の骨が“合”わさる場所の、前の“谷”間。

汗のタイプと体質別、更年期の汗におすすめの漢方
☆こんなタイプにこんな漢方薬
○柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
首の後ろ、頭にに汗をかきやすく、寝汗もある。
神経質なところもあり疲れやすい。
ストレスを感じやすく、頑張り屋さんタイプ
○加味逍遥散(かみしょうようさん)
疲れやすく、不定愁訴が多く、悩みが多く氣になることが多いタイプ。
ホットフラッシュ、汗がブァーッと出て止まりにくい。
冷えものぼせ感もある
○ 抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
ストレスが溜まり、イライラしやすく落ち着かない、歯ぎしりする、眠りが浅いタイプに。
汗が止まりにくく、寝汗をかく方にも。
○桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)
体力がなく、身体が重だるく、腰から上に汗をかき、そのためにあせも・湿疹ができやすい。
多汗症にも。更年期以外にも使える漢方薬
○苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
めまい、ふらつきがある。
または動悸があり、神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛があるタイプ
○六味丸(ろくみがん)
疲れやすく、疲れると手足がほてり、口が渇く。
のぼせ、目の充血、寝汗、腰痛にも。
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「汗を止める力」は、その人自身が持っている氣の力
今回の漢方カウンセリングにいらしたMさんは、お友達が「私もホットフラッシュがある」と話してくれたことで、(症状の程度は違っても)少し安心した、とおっしゃってました。
みんなもそうなんだ、自分だけじゃないんだ、ということだけでも、こころが強くなる。こころとからだは2つでひとつ。〈心身一如〉と漢方ではいいます。
こころは「氣」であり、「氣」というのはエネルギーです。
私たちの「見る力」「聴く力」「眠る力」「何かを始める力」「継続する力」などになり、更年期の女性の底力を上げてくれます。
「汗を止める力」も氣のちから
漢方で底上げして、氣をめぐらせて、人のことより自分のこと。先のことより今のこと。
ワクワク・ニヤニヤ・ドキドキする、そんな楽しみをたくさん見つけて「氣」をパワーアップすることも汗対策には大事なのです^_^
漢方の知恵と漢方薬やツボなどを味方に、更年期の不快な汗問題をさわやかに、のりきっていきましょう〜。
漢方カウンセリングルームKaon
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