【セルフチェック】あなたも隠れ「巻き肩」では!?
肩が内側に巻き込まれ、本来の位置より前にいってしまうことを「巻き肩」(前肩とも)と言います。
猫背と似ていますが、猫背は背中が丸くなった状態、巻き肩は背中の丸みにかかわらず、肩の位置を指す言葉です。
巻き肩は生まれつきの骨格ではありません。長らく続けている日常の姿勢、そして呼吸に原因があると言うのは、呼吸コンサルタントの肩書を持つ大貫崇さんです。
「長時間のスマホやパソコン操作は前傾姿勢になりやすく、それが猫背やストレートネックへつながることは以前お話ししました(第12回参照)。
背中を丸めた姿勢が定着してしまうと、いずれ巻き肩になってしまいます。
なぜかというと、猫背の姿勢では体の前側、特に胸の筋肉が硬く縮まって胸に空気が入りにくくなる。つまり正しい呼吸がしづらくなります。その間違った呼吸がますます背中を丸め、肩が前に巻きやすくなるんです」
大貫さんによれば、巻き肩の始まりは反り腰だとのこと。
そして、猫背へ。さらにはストレートネックが高じて、最終的に肩が巻いてしまうというプロセスです。
巻き肩は見た目がよくないこともありますが、首こり、肩こりなどのほか、嚙みしめグセがあったり、頭痛の人が多いことも確か。
40代以降の人は、長年続けていた姿勢のために、知らず知らずのうち巻き肩になっているかもしれません。
一度チェックしてみましょう。
次のうち、当てはまるものは?
上記のうち、3つ以上当てはまる場合は、巻き肩になっている可能性大。まだ巻き肩になっていなくても、リスクが高いと自覚しましょう。
胸の筋肉を緩めて深く呼吸することが、巻き肩の根本改善に
巻き肩は、こりや痛みの原因になるだけでなく、女性に多い手足の冷え症状につながることもあると、大貫さん。
「背中を丸め、小胸筋など前側の筋肉がこり固まって縮んだままの状態では、息を吸ったときに胸が広がらず、肺にきちんと空気が入らない。結果的に呼吸が浅くなる。呼吸が浅くなればますます背中が丸くなり、肩が前に来るという悪循環に。
その結果、鎖骨の下側が狭くなり、神経や血管が圧迫されて手足が冷えたりしびれたりする『胸郭出口症候群』という症状に発展することもあります。
巻き肩は、早い段階で治したいもの。
巻き肩の改善として『肩甲骨を寄せる』『背すじを伸ばす』などのストレッチが紹介されていることがありますが、単に背中側を動かすだけではちょっと足りません。
なぜなら、巻き肩の人が力ずくで肩を後ろに引っ張っても、無理やり胸を張るだけで、肩が前に来てしまう原因にはアプローチできていないからです。
まず最初に、胸の筋肉群を伸ばして緩ませるようなストレッチに呼吸を加えてもらったほうが、肩が自然に後ろに行きやすくなります。
この場合、筋肉を伸ばすことが目的なのではなく、胸の筋肉群の下にある胸郭を風船のように膨らますことが本当のねらい。
それが巻き肩の根本改善になります!
手足の冷えがつらいと感じている人も、ぜひ続けてみてください。私の呼吸サロンでも、今回のストレッチと呼吸で冷えが改善した方もいましたよ!」
続けることで巻き肩を治す! 胸ストレッチ&呼吸
巻き肩を治していくステップは、
1)ストレッチで胸の筋肉を緩め、胸郭に空気が入るようにする
↓
2)健康な呼吸ができるようになる
↓
3)内側からも筋肉が伸ばされて緩み、肩を後ろへ引きやすくなる
もちろん、このためには大貫さんが教える「きほんの呼吸」ができることが大前提。
きほんの呼吸の仕方は、こちらを参照してください。
その上で、胸のストレッチをしましょう。
【巻き肩改善ストレッチ&呼吸】
①横向きに寝ます。
頭の下にはタオルや枕を入れて首が下がらないように。
股関節と膝は、それぞれ90°に曲げます。
膝が浮かないように、下側の手で押さえます。
お腹と床の間に卵が入っているつもりで、少し浮かせておくのがポイント。
上側の手を肩の高さで真っすぐ伸ばしておきます。
この理由はのちほど!
②伸ばした手をゆっくりと上に上げ、体の上を通って反対側の頭上へ。
目線は自分の手を追うようにします。
膝が浮いたり骨盤が後ろへ倒れないように注意しながら。
③手をできる限り遠くにゆっくり伸ばします。
鎖骨の下から脇の下のあたりが伸ばされているのを感じつつ、
そこで「きほんの呼吸」を4、5回くり返し、
鎖骨の下に空気が入るのを感じます。
その後、同じ経路でゆっくり手を元の位置に戻します。
この際、先ほど潰さないように置いておいた下腹の卵(のイメージ)を思い出してください。これが潰れてしまうようだと、空気圧が漏れて、ねらった鎖骨の下あたりに空気が入ってこないんです。
これを3回繰り返し、反対側も同様に繰り返しましょう。
よくあるNGは、膝が浮いたり骨盤が倒れること。
無理をせず、膝や骨盤が動いてしまうようなら、その手前まででOKです。
肩だけが後ろに行きすぎてはNG。
肩を痛めることにもなりかねないので気をつけて。
目的は、肩ではなく胸を回旋させてストレッチすることです!
このストレッチ&呼吸を1日1回でよいので続けてみましょう。
そのうちに呼吸がしやすくなっていることに気がつくはず。
それが、巻き肩が改善傾向にある証拠です。
手足の冷えがなかなか治らないと感じていた人も、トライしてみましょう。
■■まとめ■■■■■■■
巻き肩は、猫背・ストレートネックのなれの果て。
肩をいくら後ろに引いても、巻き肩は治らない。
胸の筋肉を伸ばして緩め、胸郭に空気をしっかり入れることが先決。
胸に空気が入るようになれば、肩が後ろに行きやすくなる。
【教えていただいた方】
1980年神奈川県生まれ。呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。京都にある呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」主宰。大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室 特任研究員。呼吸に関連した企業研究や商品開発など法人向け呼吸コンサルティング事業を展開し、アスリートから高齢者まで呼吸目線でのコンディショニングに従事。著書に『きほんの呼吸 横隔膜がきちんと動けば、ムダなく動ける体に変わる!』(東洋出版)など。
【呼吸についての悩みや質問、大募集】
呼吸について、大貫さんへの質問を募集しています。
●レッスンの内容でよくわからなかったこと、うまくできなかったこと
●自分の呼吸についての悩みや困ったこと
●呼吸についての素朴な疑問
内容についての感想などもOKです。大貫さんにお答えいただく予定です。
こちらからお気軽にどうぞ!
撮影/露木聡子 取材・文/蓮見則子