Q. ホルモン補充療法(HRT)はしたほうがいいの?
A. 試してみる価値はあります!
「更年期の不調は女性ホルモンが揺らぎながら減ることで起こります。HRT(ホルモン補充療法)はそれならば、少なくなった女性ホルモンを少しだけ足すことで、そういった不調を改善しようという療法です。必要最小限の量を補って、急激なホルモン減少を穏やかにしてさまざまな症状を抑えます。効果の出方は個人差がありますが、HRTを受けた人の多くは、我慢しないでもっと早く受ければよかったと言います」(小川真里子先生)。
◆HRT(ホルモン補充療法)の考え方
急激に減り始めた女性ホルモンを少しだけ補充し、体を徐々に慣らしてソフトランディングさせることで、さまざまな症状を改善します
日本の普及率は欧米各国やアジア諸国と比べても驚くほど低いのが現状。その理由は2002年にアメリカで発表された「HRT(ホルモン補充療法)で乳がんが増える」というメディアによる報道が影響していると思われます。「今ではその報告は再検討され、リスクよりもベネフィットのほうが高く、多くの医療機関で推奨されています」
Q. HRT(ホルモン補充療法)はどの病院でも受けられるの?
A. 積極的に行っている病院が多いです
「HRT(ホルモン補充療法)は誰でもどこででも受けられるわけではありません。体の状態により適さない場合もありますし、更年期医療に詳しい医師であれば、たいていHRTに積極的ですが、中には消極的な考えの人もいます。HRTでは、来院するのは数カ月に一度なので、多少家から遠くても納得のいく医師を探すのがいいと思います。最近はオンライン診療も少しずつ増えています」
◆HRT(ホルモン補充療法)ができる医療機関の目安
- ・「更年期外来」を掲げている
- ・更年期医療関連学会や団体に所属している
- ・外来患者に更年期世代の女性が多い
- ・HRT(ホルモン補充療法)についての問い合わせに親切に答えてくれる
- ・「日本女性医学学会」などの認定医、登録医から探す
Q. HRT(ホルモン補充療法)ってどんな更年期症状に効くの?
A. 特にホットフラッシュに効果的ですが、更年期症状全般に期待できます
「HRT(ホルモン補充療法)はさまざまな症状に効果がありますが、その中でも特に改善しやすいのは、急に顔がほてったり、汗が出るといったホットフラッシュです。ほかにうつや不眠といった精神的な症状にも効果が見られます。また皮膚や粘膜の乾燥をやわらげるので、肌のツヤがよくなったり、性交痛の緩和にも役立ちます。一方、肩こりにはあまり効かず、頭痛はエストロゲンが増えることで逆に悪化することがあります。その場合は漢方薬に切り替えたりします。
◆HRT(ホルモン補充療法)が効く症状
- ・ホットフラッシュ
- ・うつや不眠などの精神症状
- ・だるさ・疲れやすさ・倦怠感
- ・頻尿・尿もれ
- ・腟の乾燥感・腟炎・性交痛
- ・動悸・息苦しさ
- ・皮膚の乾燥感・かゆみ
- ・睡眠障害
また、閉経前の場合、避妊や月経困難症などの治療を目的に、OC(低用量ピル)を用いる場合もあります。しかし、特に年齢が高くなると、血栓症のリスクが高まることから、更年期症状の治療の目的だけで使うことはほとんどありません」
婦人科医にはなんでも聞いて、話していいんです。私は患者さんの話を聞くのが大好きなんですよ。(小川真里子先生)
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。
イラスト/内藤しなこ SHOKO TAKAHASHI 構成・原文/山村浩子