更年期の不調に対する根本治療の発想から生まれたのがHRT(ホルモン補充療法)。治療を始める時期は? 使用する薬は? などの疑問に、医学博士の対馬ルリ子先生がお答えします。
お話を伺ったのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座院長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康を推進するNPO法人「女性医療ネットワーク」を設立、さまざまな啓発活動や政策提言を行う。2020年秋に発売の『「閉経」のホントがわかる本 〜更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が好評。
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Q 閉経しないとHRTはできないの?
血液検査で卵巣の働きが低下していることがわかれば、閉経前でもHRTを始めるケースもあります。ただ、一般的には、閉経前の不調にはOC(低用量ピル)が使われることが多いもの。HRTに比べて補うエストロゲン量が何倍も多いOCを補充することで脳が安心し、バランスが安定します。
●閉経前後の不調に対する治療法
OCとHRTはどちらもエストロゲンを補うものですが、閉経を境に使い分けられます。漢方薬は年齢にかかわらず不定愁訴の緩和に。
Q 簡単に言うと、HRTってどんな治療法?
HRT(Hormone Replacement Therapy:エイチアールティ)は日本語で「ホルモン補充療法」。女性ホルモン(具体的にはエストロゲン)を薬で補う治療です。物理的にホルモンを増やすので、不調改善のほか髪や肌が潤うなどのメリットも。とはいえ、若い頃のような量に増やすわけではなく、必要最小限の量でホルモン低下に体を慣らすイメージです。
閉経前後に一気に減少する女性ホルモン。急な変化に体がついていけず、いろいろな症状が起こります。ホルモンの急降下をほんの少し緩やかなカーブにして、ソフトランディングさせてくれるのがHRTです。
Q ホルモンを補充するというと注射するの?
「ホルモン注射」のイメージと混同してしまうせいか、注射による補充だと思っている人も少なくありません。でも、HRTで補う女性ホルモンの量は想像以上にわずかな量。使われる薬剤は注射ではなく、飲む錠剤、皮膚に貼るシールのようなパッチ剤、腕などに塗るジェル剤、腟に挿入する腟剤などです。
皮膚が弱くかぶれやすいから飲むタイプがいい、胃腸や肝臓に負担をかけたくないから貼るタイプに…など、使用する薬剤も医師と相談して選ぶのが普通です。
Q HRTの薬や使い方は?
HRTはエストロゲンを補うのが目的ですが、それによって厚くなる子宮内膜を"お掃除"するため、また子宮内膜がんのリスクを回避するためにも、子宮がある人は黄体ホルモン(プロゲステロン)剤を一緒に使うのが一般的です。
●HRTの使用方法は、おもに以下の6種類
【子宮を摘出した人、または1〜2カ月だけ試したい人】
- ①エストロゲンの単独使用。休まずに連続して使用。
- ②エストロゲンの単独で、1カ月に約1週間休薬。不定期な出血はありますが、黄体ホルモンによる不調は回避できます。
【子宮のある人】
- ③エストロゲン連続使用+月の後半で黄体ホルモンを2週間ほど併用。閉経前後で更年期症状の強い人向き。
- ④エストロゲン連続使用+黄体ホルモン剤を併用、その後休薬。おもに閉経に向かっている人や閉経して間もない人向き。
- ⑤エストロゲンと黄体ホルモンを連続併用。不定期な出血がありますが徐々になくなるため、閉経後時間のたった人向き。
- ⑥⑤の方法と同じで、エストロゲンと黄体ホルモンが一緒に入った配合剤を使用。
カメラ&スタイリスト/山下かおり グラフ/ビーワークス 構成・原文/蓮見則子
※次回も、HRT(ホルモン補充療法)の疑問に対して対馬ルリ子先生にお答えいただきます。