近年、子宮筋腫の治療の選択肢が増えた分、迷うことも多々。まずは状況を「年代」と「妊娠の希望の有無」により4パターンに分類。パターンごとの悩みと治療法を整理しました。
「年代」と「妊娠の希望の有無」によって違う!
子宮筋腫の治療
POINT
妊娠希望なら子宮を守るのが第一選択! 閉経前後は卵巣を優先して
【状況1】妊娠は望まない/治療に専念したい
◆時期
プレ更年期・月経正常・40〜45歳頃
◆悩みと疑問
- ・筋腫が見つかったら、まず何をする?
- ・つらい症状を改善するには?
- ・筋腫を小さくするための治療は?
- ・筋腫自体を取るか取らないか?
- ・筋腫だけ取るか、子宮ごと取るか?
- ・取るならどんな手術を選ぶか?
◆治療法の選択
対症療法から手術療法までさまざまな選択肢があるのがこの時期。妊娠を望まない人が、いちばん考えるべきは摘出手術での再発の可能性。そして更年期以降のQOL(生活の質)です。閉経まで時間があるため、偽閉経療法はもちろん、筋腫だけ取る手術をしても、再発の可能性は高いもの。もし更年期の症状が出たとき、どうしたいのかまで医師と相談できるのが理想です。
【状況2】妊娠を希望する/筋腫をどうするか
◆時期
プレ更年期・月経正常・40〜45歳頃
◆悩みと疑問
- ・妊娠しにくい筋腫なのか、妊娠にかかわらない筋腫なのか?
- ・治療のタイミングをどう考える?
- ・筋腫を小さくするための治療は?
- ・つらい症状があったら?
- ・筋腫を取る、取らないの判断基準は?
- ・どんな手術を選択すればいいのか?
- ・妊活中に見つかったらどうなる?
◆治療法の選択
子宮の内側を変形させる粘膜下筋腫や筋層内筋腫は、受精卵が着床しにくく、不妊の原因に。外側にできる漿膜下筋腫も流産との関連があるといわれます。子宮を温存するのが必須のため、手術は子宮筋腫核出術の一択。術後は避妊期間が必要なので、早めに方針を決定したいものです。また、妊娠中に見つかったら、多くの場合は症状をコントロールしつつ経過観察に。
【状況3】閉経までどのくらいあるのかがわからない
◆時期
更年期・閉経移行期・45〜50歳頃(閉経前)
◆悩みと疑問
- ・閉経までどのくらいかを知るには?
- ・閉経まで逃げきるには何ができる?
- ・筋腫を小さくするための治療は?
- ・筋腫だけ取るか、子宮ごと取るか?
- ・子宮を取るメリット・デメリットは?
- ・すでに更年期症状がある場合、何をすれば?
- ・今後、更年期症状が出たらどう対応する?
◆治療法の選択
子宮を温存したい場合、再発の可能性を考慮して。また、この時期は偽閉経療法もよい選択。短期間の使用では閉経へ逃げ込めない場合もあるので、FSHの値で予測(下記参照)。後々、更年期症状が出た場合、ホルモン補充療法(HRT)を行いたい人や、つらい症状があって子宮を残さなくてもいいと考えるなら、子宮全摘出が第一の選択肢。術式も選択できます。
●閉経の時期を予測するには?
婦人科で調べられる女性ホルモン値の検査が参考に。特に、脳が卵巣へ向けて出す指令「FSH」が高値なほど閉経が近いということ。25以上であれば閉経が間近。E2が低いことと併せて「更年期レベル」の判定に。
●更年期の目安はふたつの数値
【E2(エストロゲン/エストラジオール)が低値】
30pg/㎖以下=エストロゲンが十分に分泌されていない状態
【FSH(卵胞刺激ホルモン)が高値】
35mlU/㎖以上=エストロゲンを出せという指令が多くなっている状態
※FSHとは
脳が卵巣に対し、「エストロゲンを出せ」と指令するホルモンのこと。
【状況4】閉経はしたけれどほかの病気のリスクがある
◆時期
更年期・閉経後・50歳以降(閉経後)
◆悩みと疑問
- ・閉経しても、筋腫が小さくならないが?
- ・閉経後に子宮筋腫が見つかったら?
- ・筋腫はずっと持ったままでよいのか?
- ・更年期症状がある場合、どう対応すれば?
- ・更年期症状に対してホルモン補充療法は?
◆治療法の選択
子宮筋腫は閉経がゴールといわれます。筋腫の症状はなくなるのが普通ですが、筋腫自体はすぐに縮小するわけでなく、5〜10年くらいで徐々に小さくなります。筋腫があれば、また閉経後に筋腫が見つかったら、定期的に検診を受けましょう。更年期症状がある場合、ホルモン補充療法(HRT)で筋腫が大きくなるリスクもありますが、医師の技量次第でできることも。
教えていただいたのは
日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療指導医。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。女性医療や女性ヘルスケア領域の確立に尽力
構成・原文/蓮見則子