- このページで紹介している子宮筋腫の手術法 -
- お腹を切らない『UAE(子宮動脈塞栓術)』
- お腹を切らない『MEA(マイクロ波子宮内膜アブレーション)』
- お腹を切らない『FUS(集束超音波治療)』
- 体への負担が少ない『腹腔鏡下手術』
- どんな筋腫にも対応できる『開腹手術』
- 粘膜下筋腫に適用『子宮鏡下手術』
- 最新手術『ロボット支援下手術』
- 子宮を取るってどういうこと? -
自分にとっての最良は? 利点・欠点をよく理解して
筋腫だけを取る「子宮筋腫核出術」にしても「子宮全摘術」でも、手術となったら尻込みしてしまうのが普通です。どんな状況でも、自分にとっての最良の方法を選びたいもの。
最近は、セカンドオピニオン、サードオピニオンも普通になりました。ただ『子宮は残せない』と言われる一方で『筋腫だけ取れますよ』と言われたり。はたまた『これは開腹手術じゃないと無理』と言われたのに、他では『これは腹腔鏡下手術でできる』と言われた…なんてこともよくあります。
その医療機関の設備や、医師の考え方、もちろん技量にもよるので、どの意見も正しいと思います。
決めるのは自分自身。
閉経を軸として今後の方針、将来の自分を視野に入れ、ベストな選択をしてください。
妊娠を望まない人に適用!
お腹を切らないUAE(子宮動脈塞栓術)
足の付け根から血管にカテーテルを挿入し、塞栓物質を注入して筋腫への血流を止めて小さくする治療法。
入院期間は3~5日。健康保険適用。
妊娠を望まない人に適用!
お腹を切らないMEA(マイクロ波子宮内膜アブレーション)
過多月経の治療法。
腟から器具を入れてマイクロ波を照射し、子宮内膜を焼いて壊死させ、できるだけ月経を止める方法。
入院は1泊2日。健康保険適用。
妊娠を望まない人に適用!
お腹を切らないFUS(集束超音波治療)
MRIで撮影しながら、患部に超音波のエネルギーを集中させ、筋腫を焼ききる治療。大きさや数に適用範囲あり。
所要時間は数時間で入院は不要。自費診療。
今や主流! 体への負担が少ない
腹腔鏡下手術
お腹に3~4カ所の小さな穴をあけ、腹腔鏡(カメラ)やメスなどの器具を挿入。お腹の中をモニター画面で見ながら行います。
開腹せず、お腹に小さな穴をあけて行う手術。子宮筋腫だけの摘出にも全摘にも使われますが、実施している医療機関、できる医師の数はまだ多くないのが現実。
どんな筋腫にも対応できる
開腹手術
筋腫を取る、または子宮全部を取る、どちらの場合もお腹を切って行う手術。手術中の視界が広いため、確実で安全。その反面、痛みを伴うのと、回復に時間がかかる、傷あとが残るのが難点。
全身麻酔をして、下腹部を物理的にメスで切開し、お腹の中を目で直接見ながら摘出。
粘膜下筋腫に適用、腟経由の手術
子宮鏡下手術
子宮の内側にできる粘膜下筋腫に限った摘出手術。
開腹はせずに子宮鏡を用いて筋腫を取り出します。大きさなどの制限もあるため、限られた人向けです。
腟から子宮用の内視鏡を挿入し、電気メスで筋腫を少しずつ取る手術。先端にあるカメラの画像を見ながら操作します。
保険適用になった最新手術
ロボット支援下手術
子宮筋腫のロボット支援下手術は、離れた場所で3D画像を見ながら操作し、ロボットのアームで繊細な手術ができるもの。
2018年に子宮筋腫への手術にも健康保険適用になり、手術費用や術後の痛み、傷あとも腹腔鏡下手術とほぼ同じに。
腹腔鏡下手術を、ロボットのアームで行う最先端手術。人間の手以上の繊細な手術が可能ですが、技術者はまだひとにぎりです
子宮を取るってどういうこと?
全摘する際、卵巣だけ残し、一般的には子宮体部と頸部を切り取ります。緊急手術などで子宮頸部(子宮の入り口)を残した場合、子宮頸がんのリスクは残ります。
●普通は子宮頸部まで取る
子宮は丸ごとなくなり、腟の最上部を縫い閉じます。性交には影響がないのが普通
●稀に子宮頸部を残すことも…
子宮頸部まで残すと、子宮頸がんのリスクがあるので、がん検診が必須になります。
本来、大切にしたいのは卵巣機能を保つこと
「治療について、特に丁寧に説明するのは40代。更年期に入っているものの閉経まで時間がある場合です。対症療法でもまだ症状がつらい。偽閉経療法でも小さくならない。筋腫だけ取るか子宮ごと取るか…。筋腫は再発するのですべて摘出できても後に再手術になる可能性も話すと、皆さん迷います。
そんなときに言うのは、女性ホルモンを出すのは卵巣なので、大事にしたいのはむしろ卵巣であること。近年は、昔に比べて子宮を温存する傾向にありますが、更年期の症状が出て、ホルモン補充療法(HRT)をしたくなったとき、エストロゲンを補充すればまた筋腫を育ててしまうことになり、しかも子宮体がんのリスクが高まってしまうことも話します。そのうえで、子宮を取るか残すかをじっくりと考えてほしいのです」
【教えていただいた方】
日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本生殖医学会生殖医療指導医。日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医。女性医療や女性ヘルスケア領域の確立に尽力
構成・原文/蓮見則子