更年期の頭痛、多くは「緊張型頭痛」
ひと言で頭痛といっても、原因や症状などで細かく分ければ、種類はなんと300種以上もあるのだとか。この多種多様な頭痛を大きく分けると、「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の3つ。「なかでも特に更年期の時期に多いのは、緊張型頭痛です」と、森田遼介さん。
「緊張型頭痛の特徴は、頭全体が締めつけられるような持続性のある痛みです。自律神経とのつながりで説明をすると、更年期の影響で、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下し、交感神経優位になりやすいことが原因。特に急に気温や気圧が上がる日、満月前後のときは交感神経が優位になりやすく、緊張型頭痛が発生しやすくなります」
森田さんいわく、更年期の時期に緊張型頭痛が起きやすい人には、以下の特徴があるそう。
・イライラしやすく、ストレスがたまっている人
・歯ぎしりなど、歯の噛み締めが強い人
・日常で目を酷使している人
・足が冷えている人
・睡眠が浅い人
・首・肩こりがある人
「これらに該当する数が多い人ほど、また長期的に抱えている人ほど、後頭部の筋肉が張りやすく、凝り固まっています。そして、この後頭部の筋緊張こそが、緊張型頭痛の大きな原因になっているのです」
頭痛対策になる、日常のセルフケアとは?
そこで森田さんには、緊張型頭痛を予防する、簡単なセルフケアを教えていただきました。
「すぐにでもできる簡単なものばかりです。例えば、次のようなこと。
① 20分に一度はスマホを見るのをやめて、遠くを見る
② 上と下の歯の隙間を意識する
③ 足湯をする
④ 骨盤の上に頭を乗せるイメージで姿勢を正す
①と②は、後頭部を硬くしないためにも有効です。特に歯の噛み締めが強い人は、後頭部の筋群を硬くしてしまいがち。通常、口は閉まっていても、上と下の歯の間には少し隙間があるのが正常な状態です。ところが心身のストレスが続き、首や肩などの筋肉が緊張している人は無意識のうちに歯を噛み締めていて、睡眠時の歯ぎしりにもつながってしまいます」
ちなみに、④の正しい姿勢については、次のイラストを参考にしてください。
【正しい姿勢とは?】
「正しい姿勢、とは、“背筋を伸ばして骨盤の上に頭をのせた状態”です。立っているときも、座っているときも同じで、この意識を持つことで、骨盤が自然に立ってくれます。頭と骨盤の位置に乱れが生じると、首・肩こりの緊張にもつながります」
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「単なる頭痛」と侮らない
更年期などで血流が悪くなっていると、体は1段階目では、軽い不調(肩こりや眼精疲労など)でサインを出してきます。でも、“よくある不調だから”と放っておくと、2段階目になってひどい頭痛、また吐き気などに発展。
「それは、体からの“まぁまぁ悪いので、気をつけないとマズイよ”というサインだと思ってほしいのです。それをさらに放っておくと、脳や他の疾患が原因で起こる頭痛(くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎など命にかかわる頭痛も含まれる)など、大病に発展してしまうケースも。決して脅しているわけではないのですが、注意が必要です」
また、つらい頭痛など、2段階目の不調になると、「セルフケアだけでは改善することが難しくなる」と言います。そうなると、鍼灸やマッサージなどで後頭部を中心に全身を柔らかくしたり、内臓のバランスを整えて自律神経を整えたりという、全体的な治療も必要になってくるそう。
「鍼灸師として独立する以前、脳梗塞リハビリセンターでも働き、学んでいました。そこでは脳梗塞や脳出血の後遺症を抱える方への治療を、たくさん体験しました。丁寧に問診していくと、“脳血管障害を発症する前は、長期的に頭痛持ちだった”という方が本当に多かったのです。そして、親または親戚に脳の病気を患った人がいる、という方も多いため、該当する人は特に、“単なる頭痛”と侮ることなく、日頃から気をつけるようにしてください」
さらに、「予防意識を持てる人は、これからの時代は絶対的に有利になります」と、森田さん。自然環境が大きく乱れている現代社会では、人間の体は暑さ、寒さ、湿度、乾燥などからストレスを受け、さらに対人間関係では精神的ストレスがかかっているはず、と言います。
「なぜ予防が有利になるかというと、日頃から自律神経を整えておくことで健康を維持し、医療費の削減はもちろん、老化スピードを緩やかにし、心身に余裕を持てるようになることで人間関係もよくなるからです」
【教えてくれたのは】

鍼灸院などに勤めながら、勤務後や休日に個人で訪問治療を行い、予約1年待ちが続いたタイミングで2023年2月に独立、4カ月で予約満杯となる。現在は埼玉・東京エリアの訪問自費治療を中心に活動。人生100年時代をできるだけQOL(生活の質)を落とさない目的の治療が需要として高い。*現在、新規予約は紹介制のみ。近著に「自律神経にいいこと大全100」
イラスト/きくちりえ(Softdesign) 取材・文/井尾淳子