更年期の手指の不調には3つのタイプがある

更年期世代の女性の手に起こりやすいメノポハンドは「痛み、しびれ、こわばり」の3タイプ。症状が起きる場所によって、その名称が異なります。
「『ばね指』は指のつけ根に、『ドケルバン病』は手首の親指側に痛みが出ます。親指から薬指にしびれや痛みが出るのが『手根管症候群』、痛みやこわばりが第1関節に出るのが『へバーデン結節』、第2関節では『ブジャール結節』、親指のつけ根では『母指CM関節症』と呼びます」(下江隆司先生)
ばねをはじいたように動く「ばね指」、手首の親指側が痛い「ドケルバン病」

メノポハンドの中でも最初に起こりやすいのが腱鞘炎。パソコンのキーボードを打ち続けると指のつけ根が痛くてつらい、指が曲がったまま戻そうと思っても1本だけ指が戻らない…。そんな経験はないでしょうか?
「同じ動作を長時間続けるのがつらい腱鞘炎ですが、指が曲がったままの状態で動かせなくなるのが『ばね指』です。動かない指を無理に動かそうとするとばねを縮めてパチンとはじいたように動くので、ばね指という名称がついています。腱は腱鞘と呼ばれるトンネルの中を走行しているのですが、更年期には女性ホルモン(エストロゲン)の減少により、腱や腱鞘を保護している滑膜、腱鞘が腫れやすくなります。それが原因で手がこわばり、痛みが起こりやすくなるのが更年期世代の女性に多い腱鞘炎です。
ばね指では特に手のひらに痛みがあり、症状が進行すると第2関節を曲げたときに『パキッ』『コキッ』とひっかかりが生じるのも特徴です。放っておくと指が曲がったまま伸びなくなってしまうこともあります。
『ドケルバン病』は、手首の親指側に発生する腱鞘炎です。手首の親指側が熱を持って赤く腫れたり、親指を動かしたときに痛みが生じます。しかし、ばね指のようなひっかかりはありません」
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痛みが強い場合にはステロイド注射で改善する可能性大
「腱鞘炎の症状があらわれても、手を全く使わずに安静にするのは難しいと思います。逆にむやみに安静にすると関節の動きが悪くなってしまい、さらなる痛みを生じかねません。腱鞘炎の場合、使いすぎることは問題ですが、適度に動かすことも大切なのです。
医療機関で行う治療は、ばね指の場合は生活の中でひっかかりを出さないような指の使い方に注意をしてもらい、痛みが強い場合には腱鞘内にステロイド注射を行ないます。これによって、痛みの改善が得られますし、個人差はありますが、ひっかかりの症状も改善することがあります。効果の持続期間は3カ月程度です。ステロイド注射を行なっても痛みが出る場合や、ひっかかりによる機能障害が強い場合には、局所麻酔をして腱鞘を切開する5分程度の手術をおすすめすることもあります。
痛みが主な症状のドケルバン病では、痛みをとるためにステロイド注射を行ないます。ばね指とは異なり、痛みが改善すると手術をする必要のない方がほとんどです。ただし、症状をくりかえす場合には腱鞘を切開する手術を行う場合もあります。
ばね指、ドケルバン病、いずれの疾患も絶対治らないものではありません。炎症が自然におさまって、治療をせずに改善することもあります。そのため注射や手術は急ぐことはなく、ご自身のお仕事や生活などに支障をきたさないよう、専門医と相談をしながら、治療法を選んでいくのがよいでしょう」
【教えていただいた方】

手外科専門医・指導医。和歌山県立医科大学整形外科学講座講師。医学博士。日本整形外科学会専門医、日本足の外科学会認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。診察を行いながら、更年期と女性の手指の不調に関する疫学調査や臨床研究に積極的に取り組んでいる。
イラスト/てぶくろ星人 取材・文/山本美和


