コロナウイルス感染拡大防止のため外出を控えている間、家の片づけをしていたという方も多いと思います。私もそのひとりです。
本棚を片づけたときのことは以前「本棚から出てきた100年前の辞書と詩と数学と」で書きましたが、今回は別の棚を片づけたときのことを書かせていただきます。
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8月初旬のある週末の朝。
リビングの戸棚の整理をすることにしました。
緊急事態宣言中にけっこう片づけはしたのですが、リビングにまだ手付かずの棚があり、気になっていたのです。
やり始めると出てくる出てくる、使わなくなった美容機器とか、前の家で飾っていた置物とか。
出てきたもののひとつに古いメイクボックスがありました。
中をのぞくと入っていたのは古いコスメではなく、昔使っていたアクセサリー。
いくつかの指輪、イヤリング、ネックレス、バングル。
どれも大学時代から30代はじめのころにかけて着けていたもの。
今の家に引っ越してからメイクボックスごと戸棚にしまったままだったのです。
ひとつずつ小さな袋に包んでからボックスに入れたおかげか、15、16年ぶりに取り出したにもかかわらず、どれもきれいに輝いています。
大学のカレッジリング、30歳ちょっとのときにボーナスで思い切って買った超有名ブランドの指輪、20代の終わり頃に海外で買った中堅ブランドのキンキラなバングルなど。
どれも「あー、そういえばあの頃はよくこれを着けてたなぁ」と懐かしくなるものばかり。
使えばいいのかもしれませんが、デザインが可愛すぎて今の自分にはもう似合わなかったり、または古くさかったりで、今後身につけることはないだろうと思いました。
そのときふと頭に浮かんだのです。
「ずっとしまい込んだままでいるなら、いっそのこと手放そう」と。
ここで再びしまいこんだら、次に取り出すのはまたもや15年後くらいになるかもしれません。
その頃には私は60代半ば過ぎです。
〝片づけは元気とやる気があるうちに!〟
これは取材で御世話になった片づけのプロ達がみな口を揃えて言っていたことでした。
それに長年放っておかれたのに、グレることなく今も無邪気に輝いているアクセサリーの姿は「ほかに大事にしてくれる人がいるなら、または別のものに生まれ変わって誰かに使ってもらえるなら、その方がいいんじゃないか」とも思わせたのです。
ここからの私の行動は早かった。
〝思い立ったら吉日〟(裏を返せばせっかちな性分ともいう)。
ネットでさっそく買い取ってくれるところを検索。
すると家から10分くらい歩いたところに「○○屋」という古風な屋号のリサイクルショップがあるのがわかりました。
地図を見たらなんと犬の散歩や買物のときに年がら年中前を通っている所。
「そういえば金色の招き猫をウィンドウに飾っている店があったような……あそこってリサイクルショップだったのか!」
日頃店の前を歩いていながら、用がないものに対してはこの程度の認識なのかと自分の観察力の低さにびっくり。
銀座界隈の貴金属の買い取りをしているお店のHPものぞいてみましたが、店の構えが立派そうなことに気後れ。
〝こんなところに学生時代のカジュアルアクセサリーとかを持っていっていいのだろうか?〟と。
それで近所のリサイクルショップの方へ行ってみることにしました。
『○○屋』と書かれた看板に金の招き猫と古銭が飾られたショウウィンドウ。
昭和生まれには親しみを感じるたたずまいのお店です。
中に入り「片付けをしていて出てきたアクサリーを売りたいのですが」と言うと、奥から現れた女性がその場でさっそく査定を開始。
「先月、先々月はそれはもう多かったのよ~。
お客さんみたいに〝片づけをしていたら出てきた〟って言って売りにきた方が」
そう言いながら受付カウンターのトレイに持ってきたアクセサリーを置くと、白い手袋をした手で取り上げ、ひとつひとつ見ていきます。
査定の最中ところどころ出てくる
「わぁ、これけっこうしたでしょ」
「あ、この指輪とこのネックレスはペアなのね、そのほうがいいわ」
「これはねー、海外のお客さんから人気なのよ」
「このブランドは、デザインが古くてもいい値がつくのよ」
といったコメントが〝持ち込み初心者〟の私にはなかなか興味深い。
女性はルーペで24金か18金か10金かをチェック。
ブランド品の場合は刻印もチェックしているようです。
プラチナのリングは透明な液体が入った容器に入れ、なにかを計測。
ウィーンと唸りはじめた計測機器。
このタイミングを利用してすかさず「それ、○○(新宿の老舗百貨店)で買ったので、モノは悪くないと思います」と商品アピールをしてみました。
「うん、そうでしょうね。それにしてもこれ、相当重量あるね。
当時はけっこうしたでしょうねぇ。
……でも、残念ながら今はプラチナは安いのよ」
そう。
そうなんです。
昔(30年近く前)はプラチナは金より断然高かったのです。
ところが今は大逆転。
2020年8月末現在のプラチナの売り値は1グラム3579円なのに対し、金はなんと7359円。
(※田中貴金属工業株式会社のサイトより)
ほかに興味深かったのは、自分としては「これはけっこう高い値がつくに違いない」と期待したものが安く、「これは安い値しかつかないだろうな」というものに高い値がついたこと。
需要と供給のバランスなのでしょうが、有名ブランドのものでも凝った(変わった)デザインだと安く、誰がみても一目で○○ブランドのものだとわかるデザインだと高いのです。
丁寧にみてくれた証なのか、そんなこんなでけっこう時間がかかった査定の結果は……
じゃじゃ~~~ん!
15万円。
店に向かう道すがら「数万円になればいいな」くらいに思っていたので、びっくり。
金額に納得したので、その場で売却手続きです。
手続きといっても身分証明として車の免許証を提示し、売却同意書にサインするだけ。
(人によっては何軒かまわって査定してもらい、一番買い取り金額が高いお店で売却するようですが、私にはそのファイトというか気力がなかった……)
キレッキレの新札で15万円をもらい帰ろうとしたら
「まだ他にあるならぜひ持ってきてね。
そうだ、バッグはない? うちはボロボロのものでもOKだから、売りたいバッグがあったら遠慮せず持ってきて」
と声をかけられました。
バッグ?
…………。
使わなくなったバッグなら、
ある。
ありますよ。
それもたくさん。
店から帰宅すると即、今度は処遇に困っていたバッグをバンバン紙袋に入れ、再びお店へ。
実は買ったときの値段が高すぎて捨てるには惜しいバッグ(かといってもう使わない)が家にあったのです。
もっとも古いものは大学時代、重い教科書と辞書(英米文学科だったので辞書は毎日持って歩いていた)とテニスの道具を一緒くたに入れていた巨大な通学バッグ。
ブランド品ですが大学時代に使い倒してボロボロ。おまけに長年棚にしまい込んだままだったので変色もしています。かさばるので捨てるにも面倒くさくて、ずっと放置していたのです。
さすがにこれは値段なんてつかないだろうと思ったけど、「この機会を逃したら永遠に処分できない!」と持って行くことにしました。
他にはバッグ以外だと5年も使った、あるハイブランドのスマホケースもダメもとで持っていってみることに。これもかなりボロボロ。キルティング仕様なのですがケースの角は擦れて中の芯材が見えてしまっています。
バッグは数が多いことに加え、ひとつひとつがけっこうかさばるので一度だけでは運びきれず、家とお店をなんと2回も往復することに。
どれも〝自分へのご褒美〟として買ったもの。
セコいかもしれませんが購入時の高かった値段をはっきり覚えていたり、まだ十分使えるため、捨てるに捨てられなくて後生大事にしまいこんできたバッグたちです。
それらをいくら近所とはいえ、災害級の猛暑の中、汗だくで2往復して運びこむ私。
その間ひたすら思っていたことはただひとつです。
「もう〝自分へのご褒美〟だとかなんとか理由をつけて買物するのは控えよう。
だって手放すのはこんなに大変なんだから」
こうして最初のアクセサリーを含んだこの日の買い取り額は……
総計39万円。
39万円なんていう大金に再び驚く私。
(↑売却同意書。これにどの品にいくらの値がついたかすべて書かれている。買い取り金額に納得しているとはいえ、つい購入時の価格と比較してしまい一瞬複雑な気持ちになるので、あまり見たくない)
ちなみに値段がつかないかもと思っていたくらいボロかった学生時代の通学バッグの買い取り額は、なんと12000円(捨てなくてよかった)。
そしてスマホケースは500円でした。
今、不用品はフリマアプリで売る方も多いことと思います。
私もバッグに関してはフリマアプリで売ることもちらっと考えました。
けれどアプリをダウンロードして登録して、1点ずついろんな角度から品物の写真を撮ってサイトに載せて、売れた場合はきちんと梱包して買ってくれた人に送る……という手間を考えると、くじけてまた棚にしまいこんでしまいそうだったので、今回はリサイクルショップに一気に持ち込むことにしたのです。
3度目の買い取りが終わり店を出たとき、外はもう夕方になろうとしていました……
モノの処分の大変さを痛感した1日でした。
※フリマアプリやネットオークションなどで貴金属を売った際、税金がかかる場合があります。
それについてはOurAgeの記事『フリマアプリ、ネットオークションの儲けも税金がかかる?
』があります。合わせてお読みいただけましたらうれしいです。