こんにちは。あっという間に10月になり、また新しく始まるドラマが楽しみなライブ大好き編集者のすぎです。
でも家のハードディスクレコーダーが、もう録画できないほどパンパン! いつか見たいと思って録ってある映画を、あきらめて何本か消すことになるのでしょうか(泣)。
さて、音楽とライブをこよなく愛する私ですが、ドラマ、映画、演劇もかなり好き。物語が好きなんですね。ここで堂々と「小説も」と言いたいところですが、人に誇れるほどには読めておらず・・。
コロナ禍になって気づいたのは、私の読書タイムは主に移動時間中だったということ。旅行や帰省、通勤時間が激減したら、読書量も激減してしまいました。家にいると、ずっとテレビを見ちゃうので。
なのにハードディスクレコーダーがパンパンなのは、11月1日発売のMyAge秋冬号に向けて、今、めちゃくちゃ働いているから! 寝る以外、ほとんど家にいないから!! っていうか、ほとんど寝てもいないから!!!(すみません、興奮しました。でも、それだけ頑張って丁寧に良い本を作っています。どうかご期待ください)
・・と、また前置きが長くなりましたが、少し前に「物語」を堪能できる幸せな小説に出会いました。
伊吹有喜さんの『犬がいた季節』
です。
なんの予備知識もなく、「2021年本屋大賞ノミネート!!」という帯の文字に惹かれて読んでみたところ・・いろんな懐かしさが駆け巡り、とても温かい気持ちになりました。
物語の中心は、ある高校に迷い込み、そのまま飼われることになった犬のコーシローが過ごした12年間。昭和最後の年から平成の5つの時代に、コーシローと触れ合う高校生(=その章の主人公)は移り変わり、それぞれの青春が連作短編として描かれます。
恋や友情、進路や家庭問題というのは高校生にとっての普遍的なテーマだと思いますが、舞台が三重県四日市市(よっかいちし)の進学校というところにも、愛知県出身の私はとてもシンパシーを感じました。自分の町が嫌いなわけじゃないけれど、名古屋も近くにあるけれど、やっぱり「東京」に行きたかったから。
そんな18歳の自分への懐かしさとともに、阪神淡路大震災や援助交際といった災害や社会問題から、「写ルンです」「マディソン郡の橋」「たまごっち」といった流行りもの、流れていた音楽の数々が、その時代の記憶も呼び覚まします。
スピッツの『スカーレット』とブルーハーツの『TRAIN-TRAIN』が鍵となる第4話は、男の子が密かにバンドをやっていたりすることも含め、とても好きな話でしたし、GLAYの『HOWEVER』に繋がる第5話のタイトルも秀逸。
そして時は流れ、すべてのエピソードを回収するような令和元年の最終話は、「物語」の終わりはこうであってほしいと思わせるものでした。
この小説は、作者・伊吹有喜さんの母校である四日市高校に、実際に放し飼いの犬がいたことから生まれたらしく、駅前のアーケード街から工場の風景まで、実在する場所がふんだんに描かれています。(観光三重というサイトには『犬がいた季節』の散策マップなるものまで公開されていました)。
実は私、2019年に小田和正さんのライブを観に行ったことがあって、その四日市ドームが、第4話(1997年)で「今月オープンしたばかり」と登場し、主人公2人が見ていた対岸の工場の景色を「私も見た!」と思えたのは、有名観光地ではないだけに、マニアックな嬉しさがありました。
ちなみに、こちらは四日市のご当地グルメ「とんてき」。(小説には登場しません)。
四日市には陶芸家の内田鋼一さんが立ち上げた「BANKOアーカイブデザインミュージアム」があって、一度行ってみたかったというのも、ライブ遠征を決めた理由です。
ひょんなところで四日市の思い出もよみがえり、いくつもの懐かしさに包まれたのでした。