2017年9月、連載第3回に「カブの種はミレー蒔き」として、カブの種まきのことを綴りました。
画家のミレーが描いた“落穂拾い”なる姿勢でトライするも、翌日には腰痛激しく、ベッドから降りるのが大変だった・・なお話でした。
そんな私がついに、リアルなミレーの“落穂拾い”を体験する機会に恵まれました!
ことの始まりは今年5月、長野に住む知人がお仲間と田植えをすると聞き、遊びに行くと、普段はオフィスで建築やデザインの仕事をしている人たちが、土を踏み、楽しそうに苗に触れていました。
その姿を、誘われてもいないのに車に積んだ長靴に履き替えそうなほど熱い眼差しで見ていたらしく、「ぜひ、収穫を!」と、嬉しい言葉をもらって待つこと数ヶ月。
「今度の日曜、田んぼ集合!」とのメッセージが届き、10月の初め、念願のお手伝いが叶いました!
朝8時、黄金色の田んぼで早くも作業をする人の姿が見え、急いで新調した長靴に履き替え、お仲間にご挨拶、進め方の指示を頂きます。
(ちなみに畑で履いているAIGLEの長靴では、水抜き後の乾き切っていない土にハマって脱げるかもとのアドバイスをもらい、買いに出たものの、田植えや稲刈りはどこも似た時期すぎて、狙っていた足袋型長靴は残念ながら売り切れ。
それでも最終的にワークマンスタッフさんからの「こちらも田んぼ作業に人気ですよ」とのありがたいアドバイスのおかげで、履き口が絞れるタイプの長靴を買うことが出来ました)
入門するかのよう、「お邪魔します」と入田(って言わないか)、カサカサと揺れる稲穂は近くで見ると尚、美しくてうっとり。
こんな近くでは滅多に見られないぞ!と稲の一つ一つに見惚れていると、どんどん刈られていくので、我に返ってお手伝いスタート!
このチームは2年目の稲刈りとのことで、参加者それぞれにマイカマ持参。
長靴&手袋を準備したまでは良かったのにカマまで気が回らず、お借りすることに。
稲を刈る人、稲をまとめてジュートで縛る人、午前中は刈りとりを中心とした作業に勤しみます。
以前、稲刈りロケで教わった、根元に当てたカマを手前に引くというコツを覚えていたおかげでスムーズに刈り取れるものの、稲を抱え運ぼうと体を起こすと、こ、こ、腰が・・。
刈ることに集中していて気づいていなかったけど、この作業は深い前屈姿勢が基本。
畑でも似た姿勢での作業はあるけれど、「ちょっと休憩」と、ぬかるんだ土に腰を下ろすことも出来ず・・。
機械が担う理由の一つが掴めました。
稲を見てもお腹がグウと鳴る時間がやってきたので、待ちに待ったお昼ご飯!
総勢20人ほどが持参したお弁当を家族ごとに囲んで食べるスタイルは、昔過ごした運動会の日のようで、懐かしく温かな雰囲気がある一方、おにぎりと畑の水菜サラダしか持ってこなかった一人参加の私は、器やおかずなど皆様からお裾分けをいただくことに・・。
長野県小諸市にある老舗味噌店「矢吹味噌」で作ってくれた豚汁も美味しかったなあ。
(あまりに優しい味で、自宅用土産にお味噌を買っちゃいました)
「初めまして」のお顔も多かったけれど、ご飯を共にすればすっかり仲間!
午後は稲を乾燥させる稲架(はさ)掛けに着手。
「やってみたかった!」と稲を抱えて立てられた柵へ行くと、
「まずこの束を7:3に分けて、3は手前にひねってから7を奥に押したら掛けて・・」
「!!!」な思考回路となった私は秒でお手上げ。
勝手なイメージでは束ねた稲を半分に割って掛けているのかと思っていたけど、分量が多い束と少ない束が交互に重なるように詰めて掛けることで、風が吹いても稲ごと倒れたりせず、乾燥を促せる、さすがな先人の知恵なんだそう。
掛けることを諦めた私は、束を差し出す役に徹することに。
するとデザインを職とするチーム、しばらくしてから「ここ、なんか綺麗じゃないな〜」と、綺麗に見えるよう稲架掛けまでデザイン、さすが!
いつ教わったか思い出せないけれど、手を合わせ「いただきます」と感謝する文化で育って良かった・・と改めて。
どこかの誰かが育てたものであっても、それらを作る人の手間と努力、またそれらを運んでくれる力があってこそ、「何を食べようかな?」とワクワクがもらえるのだから。
土の上の“落穂”を例の姿勢で徹底的に拾いあげ、この日の作業は無事終了!
「乾燥も脱穀も無事に進みますよう」
そう願いながら、お手伝いさせてもらったお礼を伝えて、打ち上げに向かうみんなとはお別れ。
家に帰り、この時間がいかに大変で楽しかったかを夫に報告、全身使って働いた後のビールと眠りをしっかり楽しみ、気持ちよく起きた翌朝・・「うう・・これ知ってる辛さだ・・」
(なんなら歳を重ねた分、痛みが消えるまでの時間が増えた)、痛みという余韻と再会を果たしました。
それでも炊き上がったお米を見たら、腰の痛みがあったなんて吹き飛ぶほど、幸せな気持ちになるのだろうなあ・・なんて、とてもありがたく、素晴らしい経験になりました。
「いただきます」早く言いに行きたいなあ!
加藤紀子
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