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思考のクセを手放すヒント

年齢を重ねると、「〜しなければ!」「〜すべき!」という思考に陥る人は少なくありません。人生を頑張ってきた人ほど、その経験則から、つい自分の正しさにこだわってしまうのかもしれません。

 

でも、自分の頑なさにはなかなか気づけないもの。無意識の領域を扱うセラピストOCOさんに、そんな思考のクセから解放されるヒントを伺いました。

OCO(オコ)
プライマリー・プロフェッショナル・セラピスト。理学療法士として急性期~在宅までの幅広い疾患と病期のリハビリテーションに携わる。一側面だけではなく、あらゆる関係性を総合的に捉え、アプローチをしていく必要性を感じ、独立。西洋・東洋医学、量子力学を用いたキネシオロジーを主軸に、フラワーエッセンスやクラニオセイクラルなど幅広い知見や技術により、それぞれのクライアントに合ったベストな形で寄り添う。
※クライアントセッションについては、ご縁を大切にしたいという思いから、紹介制のみ

「ねば・べき」思考は、自身や他者からの刷り込みと、強いこだわりから生まれる

 

人間の意識を100%とすると、自分で自覚できる顕在意識はたったの5%。残り95%は、無自覚の潜在意識であると言われています。著書『わたしの解放ガイド』で話題のセラピストOCOさんは、その心のしくみから、95%を占める潜在意識にこそ、生きづらさから解放されるヒントがあると言います。

 

──── やはり人は年齢を重ねるほど、思い込みが強くなり、頑固になってしまうものなのでしょうか? OurAge世代は仕事などでキャリアを積んでいる人も多いだけに、自分のやり方、これまでの成功体験などにもこだわりがあり、その分「ねば・べき」思考が強くなっている人も少なくないように感じます。

 

OCO:まずお伝えしたいのは、自分の心の内側に意識を向けるということです。

他者を変えようとするのではなく、自分がどうありたいかを整理することが、肝心要のポイントです。

 

そのためには、「他者をコントロールすることはできない」「他者を自分の都合で変えることもできない」という大前提の事実を、きちんと理解する必要があります。あくまでも自分の心にある頑なさ、思い込みを見つけるヒントとして、お話をさせてください。

 

 

──── 他者の言動にフォーカスするのではなく、自分の心にあるものは何かを見つめる、という作業ですね。すると、自分は他者に対して、何らかの思考のクセを持っているんだ、ということに気づけるようになりますか?

 

OCO:そうですね。人間は誰しも、自然に自分の願いや希望を叶えたいという欲求を持っています。自らで行動し、段階を追って実現していく方法には、プラスのエネルギーが働きます。一方で、他者をコントロールして欲求を満たそうとした時には、不可能であるという事実と満たされない感覚、マイナスのエネルギーに直面します。

 

もし、身近な人との人間関係が円滑に進まない…など、日常生活の中でストレスを感じているならば、少し立ち止まって自分と他者を一度切り分けて、“わたし自身”に意識を向けてみましょう。「自分を苦しめている考え、思い込みはないだろうか?」という視点で、ご自身を振り返るタイミングを迎えていると言えるのかもしれません。

 

そして「ねば・べき」思考が強いなどの頑なさについては、自身や他者からの刷り込みが大きく関係しています。別の表現に言い換えるとするなら、「強いこだわりがある」ということです。そのこだわりが、その人を支えるということ以上に、その人自身を縛っている状態であり、また他者をも無自覚に縛ったり、押し付けたりしてしまっている状況です。ともするとそのこだわりは、あらゆるネガティブ感情の引き金になってしまうことが多くあるのです。その中でも、とりわけ問題となりやすいものが、怒りの感情です。

 

「稀有なセラピスト」として知られるOCOさん。その所以は、人が自分ではなかなか自覚できない、無意識の心にアプローチしていく技術から。

 

頑固さが怒りを生む構造とは?

 

────たしかに、頑固な人はいつもイライラしていて、怒っている印象があります。

 

OCO:例えば仕事について、「自分が楽しくてやりたいから、相応の努力もできる」という状態は、良好なエネルギーとなります。しかし、「誰よりも努力しなければならない」「ラクはすべきではない」という自分を縛り付けるような強いこだわり、価値観を持つ人がいたとします。ところが同じ職場には、「仕事は、いかにラクするかだ」という主義の人がいたらどうなるでしょうか。「仕事は頑張らなければならない」という信念がある人の身近には、正反対の価値観の人がいる。すると「もっと努力すべきなのに、なぜあの人は手を抜こうとするのか!」と怒りが湧いてきますよね。このように、ねば・べき思考は、自分を縛るだけでなく、他者にも、その縛りを押し付けることになりかねません。相手の価値観までを変えようとしたり、境界線を越え踏み入ってしまうことになったり。

 

つまり、自分のこだわりによって、すでに相手の境界線内に無自覚に立ち入っている状態こそが、頑固さからイライラ、怒りが生み出している構造というわけです。

 

怒りをぶつけられる側ももちろんストレスが溜まりますが、何より「ねば・べき」思考のご本人が、とても苦しい気持ちを味わうことになってしまうんですね。不要な刷り込みを手放すことは、ご自身を大切にしていく上で、本来的で重要なプロセスなのです。

 

──── 他者には他者の価値観があることを許せずにいると、自分がどんどん苦しくなる…。それは、辛いですね。

 

OCO:自分にとって大切な価値観があるように、他者には他者の大切な価値観があります。こだわりを手放せずにいることで、怒りの感情も生じやすくなることから、強いこだわりと怒りは、表裏一体と言えるのです。そして、自分の感情に向き合わず、他者に矛先や責任を向けようとすると、関係性の構築や修復は難解を極めるものとなります。その状態がさらに進んでいくと、「周りも、自分と同じ価値観でなければならない!」という信念から、他者をコントロールしようとする心が働いてしまいます。

 

ですからできるだけ早く、視点と意識を自分の内側へと向けることがとても大事なポイントなのです。

 

────子育ての場合であれば、子どもの希望には目を向けず、「こういう進路を選ぶべき!」など、親の価値観を一方的に押し付けてしまう、というケースもそうですよね。

 

OCO:はい。子どもには子どもの、その時の価値観があることを大切にしてあげてください。親としての価値観は、一つの個人的な価値観として切り離して考える必要があります。冒頭でも申し上げたように、他者を変えたり、コントロールしたりすることはできません。それなのに、どこかで他者を自分の所有物のように扱ったり、価値観を押し付けていたり、コントロール可能な対象と位置付けていたりした時に、関係性にひずみが生じてしまいます。

 

また、外部に責任の所在を向けると、自分に気づくことから遠ざかってしまうのです。他者に意識を向けているので結局は思い通りにはならず、また怒りが湧いてきてしまう…という、負のループにハマってしまいます。

 

怒りを含め、自分の中にあるさまざまな感情の起伏が出てくる原因は、実は自分のこだわりが作っていた、というわけなのです。この構造を知っていただくことで、ご自身の頑なさに気づくきっかけ、その糸口になるのではないでしょうか。

 

「頑固な年代」は、「気づきの年代」にもなれる

 

──── 「もしかすると私は、自分の正しさを証明しようとしているだけなのかも?」と、少しでも気づけたら、しめたものですね。

 

OCO:本当にその通りです。ご自身の中に、「〜であらねばダメ」と思い込んでいる事柄はないかを振り返るには、第2回(リンク)でご紹介した、自己対話用のノートを活用するのが有効です。感情的になっている時、できる限り余白のあるひとりの空間(集中力を要するので、夜より日中が◎)に身を置いて、お気に入りのお茶やコーヒーの香りなどに包まれながら、「今自分は、どうしたいのだろう?」「何を思い通りにしたいと考えているのだろう?」「なぜ自分でなく、他者をコントロールしたり、変えようとしたりする思考をしてしまうのだろう?」という問いに対する答えを、自己対話用のノートに書き出してみましょう。

 

──── 頑固さと怒りの構造を知る。そして気持ちを落ち着けて、自らを縛っている観念、思い込み、強くこだわっていることは何かを、自己対話ノートを通じて言語化してみる。それらの方法で、自分ではなかなか自覚できない頑なさが浮かび上がってくる、ということですね。

 

OCO:はい。自らの本来的な幸せへ向かっていくために、内側に気づいていくのです。心の揺らぎを少し緩和するためには、自分を縛っているこだわりを、少しずつ柔和にしてみましょう。そして、刷り込みやこだわりを解放することで、よりスムーズに望みは叶えられるという方法も同時に模索して、新たな体験を味わっていきましょう。すると次第に、ほかのものの見方、選択にも気づけるようになっていくので、「ねば・べき」という思考のクセも、感情の起伏、心の揺らぎも、自然となだらかになっていきます。人生を歩む上で、そういったプロセスを経て柔軟な視点を持ち、穏やかであれることは、大きなメリットへとつながります。

 

──── 頑なになりがちな年代であっても、変わる方法はある。それは希望ですね。

 

OCO:年齢とともに自らを支える価値観が強固になり、いつからか自分を縛るものになってしまう、という側面はたしかにあると思います。けれど別の見方をすれば、OurAge世代という年齢の方々だからこそ、ご自身の中にある思考のクセに気づき、改善することもできる。経験を重ねたからこそ、「私はどうありたいか」という自分軸に立って考えられる力を手にされていると感じています。

 

実はとてもやわらかい、余裕の在る「気づきの年代」なのだとも言えるのです。

 

OCOさんからの問いかけ

もう一段階、自分や他者を許せたあなたは、何に気づくことができたからでしょうか

 

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イラスト/OCO  取材・文/井尾淳子  撮影/イマキイレカオリ

 

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