お金や人間関係、やりたいこと…等々、悩みが尽きないOurAge世代。「それらを個別に解決しようとするのは、実は遠回りです」とは、多くの相談者の心のしくみを扱うセラピストのOCOさん。
「すべては本人が、どうありたいかということにつながっています」というその考え方とは?
最終回となる今回は、悩みからの解放について、伺いました。
OCO(オコ)
プライマリー・プロフェッショナル・セラピスト。理学療法士として急性期~在宅までの幅広い疾患と病期のリハビリテーションに携わる。一側面だけではなく、あらゆる関係性を総合的に捉え、アプローチをしていく必要性を感じ、独立。西洋・東洋医学、量子力学を用いたキネシオロジーを主軸に、フラワーエッセンスやクラニオセイクラルなど幅広い知見や技術により、それぞれのクライアントに合ったベストな形で寄り添う。
※クライアントセッションについては、ご縁を大切にしたいという思いから、紹介制のみ
将来への不安・お金・人間関係。
それぞれの悩みごとは、分けて考えない
理学療法士としてのキャリアを持つセラピストOCOさん。著書『わたしの解放ガイド』では、自分の本当の本心を「自分で気づいていくこと」へのプロセスが丁寧に解説されています。また、「私はこうありたい」という自分主体の姿勢で生きることは、さまざまな悩みからの根本的な解放につながる、とも。
──── OurAge世代の悩みというと、健康以外では、将来への不安(やりたいこと)・お金・人間関係などでしょうか。それらについても、OCOさんの著書のテーマである「自分主体の生き方」が解決の糸口になるのでしょうか?
OCO:そうですね。将来への不安・お金・人間関係は、それぞれ独立した問題のように見えるかもしれませんが、整理していく重要な部分は、実はすべて本人がどうありたいか、という部分でつながっています。
──── 具体的にはどういうことでしょうか?
OCO:お金の問題について考える時を例にしてみましょう。
もしご自身が心から、「こういう人生を歩みたい」と思えることにしっかり着眼して行動していくと、それに必要な人間関係は形成されていきますし、同時に、自分自身の人格もその方向にふさわしいものへと磨かれていきます。するとそこには、お金というエネルギーもちゃんと流れてくる。…というのが、本来的なプロセスです。
ですから、「自分はどうありたいのか」ということに焦点を当てていくことが、全体性(お金などの表層的な数値で判断できるところだけではなく、内的な充足や、本来的な幸福につながるということ)が整っていくということになります。
──── 心の底ではどうしたいのかを基準に、丁寧な自己対話を重ねる、と。
でも、それでも「全然お金が入ってこない!」となることはないのでしょうか? 疑い深くてすみません(汗)。
OCO:いえいえ。もし、それでもお金が十分に得られないと感じるとか、「もっとお金が欲しい!」と考えてしまう場合は、本当にその額が、ありたい自分の姿と本質的に繋がっているのか、自分に必要なのかを見つめる必要があります。お金だけを単独で求めていて、「自分の本質的な欲求」とズレている可能性があるかもしれません。
純粋な願いからではなく、他者との比較、あるいは必要以上の承認欲求が原因になっていることも考えられます。
自分との「良い関係」から生まれる相乗効果
OCO:ある調査によると、人間が最も幸福だったと感じる瞬間の多くは、「他者と良い関係性を築けて良かった」という喜びなのだそうです。
──── お金のあるなしでは計れない豊かさですよね。それは、良くわかります。
OCO:他者と良い関係であることは、幸福につながりますよね。
この他者との良い関係性を築くためには、何よりもまず、「自分との良い関係性をしっかり築いていく」ということが重要です。そこで大切になってくるのが、自分の気持ちを、自分がちゃんとわかってあげられているかどうか、なのです。それは他者との比較で語られるようなものではなくて、ただ自分の中にある「こうありたい」という気持ち。それはかけがえのない、パーソナルな宝物です。この宝物を基盤にして行動していくことで、将来への不安・お金・人間関係などのテーマも、自然と調和していくのです。
結果として人生全体が満たされて、切り離された悩みとして感じられることも少なくなっていくのだと思います。
──── 「心からの本心」は宝。それをキャッチすることで、人生がどんどん良くなっていくのは、どういうしくみによるのでしょう?
OCO:自分自身がどう感じているのか、それに気づくことは、とても幸福なことです。そのためには、「環境」が大きな役割を果たします。私たちは自分を大切にしていないとき、自分に合わない、快適ではない人的環境・労働的環境・生活環境を選んでしまうことがあります。けれども、自分の思いを尊重できれば、自分にとって最適な環境を意識的に選び取ることができるようになります。自分にとって心地がよいということは、身近な他者も同じように心地よさを感じています。そこで良い相乗効果がどんどん生まれてくる、というしくみです。
一方で、自分の中で「なんとなく嫌だな」と感じることをガマンしてしまうと、途端に相乗効果は下がってしまうんですよね。
──── 嫌なこと、モヤモヤすることに対しては、向き合うよりもガマンしてしまう人は少なくありません。そういう時はどうすれば?
OCO:モヤモヤなど、少しでも何か思うことがあれば、その感情は無視せずにキャッチしてまずは内省してみましょう。ゆっくりと、なぜモヤモヤするのか、心の中にある原因を探りましょう。
さらに「どうすればもっと快適になる?」と能動的に考えることで、状況を改善する方法はきっと見つかります。人間関係では距離感を調整したり、環境を変えたり、それは自分で選びとることができるのだと、前向きに捉えることが重要です。するとまた、良い相乗効果の循環は生じてきます。
「自分主体」と「わがまま」との違いは?
──── 自分主体という生き方について、「それは自分のことだけしか考えない、わがままな考え方では?」と思う人も多いかもしれません。そこはどう考えればいいですか?
OCO:「わがまま」という言葉が、自分に対して、あるいは他者への指摘として頻繁に出てくる場合、その背景には「ねばべき思考」が隠れていることが多いのです。「こうあらねば」「こうすべき」という強いこだわりは、自分自身の自然な宝物としての本心を否定したり、抑え込んだりするだけではなく、さらには他者に対しても「ねばべき」を反映して、相手の繊細な宝物を傷つけたり、阻害してしまうことにもなりかねません。それがコントロールしようとする気持ちにつながっていることは、第4回でお伝えしました。
「自分主体で生きる」とは、自分の本当の気持ちを丁寧に見つめて、「自分はどうしたいのか」を正直に認識すること。宝物の気持ちに気付いている、その状態にある人は、「わがまま」という言葉自体、自分に対しても他者に対しても、出てくることはないはずです。
──── なるほど…。身近な人に対して、「それってわがままだよね!」と言ってしまいがちな時は、自分の心の状態を見つめる必要がありそうです。
OCO:相手が何かを伝えてきた時、「わがままだよね」と返すのは、その方自身が、自分の宝物に気付いていない、大切にできていないからかもしれません。だからこそ、ご自身のために、「自分の心の底にある宝物の気持ちに気づくための時間」をとってあげてほしいと思うのです。
「わがまま」という言葉を、なぜ使うに至るのか。そこを見つめてみることが肝要です。 率直に、自分にとって大切であることを見つめること。そして、どんなに小さな一歩でも現在位置から目的地までの実践を重ねていくこと。その姿こそが、自己実現というプロセスそのものなのです。コミュニケーションは言語によるものだけではなく、そのものへの眼差しや姿勢を反映するもの。あなた自身があなたを大切にする時、相手もあなたを大切にするコミュニケーションをとっていくのです。すると対等な関係で、お互いの妥協点を探る、建設的な対話が可能になります。
──── 私たちは日常の中で、深く考えず、自分の感情をないがしろにしがちなのかもしれませんね。自分の感情、思いは丁寧にキャッチして、気づく。そして自分主体を意識する。それが悩みをみずから大きくしてしまわないヒントとなることがよくわかりました。
これまで5回にわたってお伝えしてきた、OCOさんによる「自分軸のつくり方」は、今回が最終回となります。
あらゆる悩みからの解放は、自分自身に目を向け、自分主体で考えることが第一歩と教えていただきました。OCOさんの著者『わたしの解放ガイド』では、より詳しく、本当の自分を知るためのメソッドをご紹介しています。
今より自分らしく生きるために、考え方のヒントをつかんでいただけたら嬉しいです。
OCOさんからの問いかけ
何者かになるのではなく、あなたがあなたとして成し遂げたいことは何でしょうか。
「やりたいことが見つからない」「人生に希望が見えない」「そこはかとなく不安がある」そんな思いを抱えながら、日々に追われて生きているあなたへ、セラピストOCOさんが贈る心の深層を紐解くための一冊『わたしの解放ガイド』(ワニブックス/¥1,650税込)。
イラスト/OCO 取材・文/井尾淳子 撮影/イマキイレカオリ