変わらないからこそ価値がある! 道後温泉本館で明治にタイムスリップ
↑道後温泉本館入口。早朝は6時の営業開始前から人が並んでいることも
ミワ ミホさん、聞いて~。私、5年半ぶりに全館営業を再開したばかりの道後温泉本館に行ってきたのよ。
ミホ 早いわね、ミワさん。温泉マニアの鑑だわ(笑)。先日そのニュースを新聞でも見たけれど、どこがどう変わったのかしら? 建物がキレイになったの?
ミワ いいえ、見た目はほとんど変わっていないの。むしろ道後温泉は国指定の重要文化財だから、変えちゃダメなんですって。だから、2019年から5年半もゆっくりと時間をかけて、歴史的、文化的な価値はそのまま残して、見えないところで耐震性を高めるなどの細かい技術を駆使して保存修理されているらしいの。
ミホ 古き良き歴史を残す…なんてすばらしい考え方! 実は私、道後温泉に行ったことがないのよ。
ミワ それはもったいない! 私、今回で4回目よ(ドヤ顔)。外観もさることながら、明治時代に改築された雰囲気をそのまま残す浴槽や休憩室は、そこにいるだけでタイムスリップした気分になるわ。旅をしながら静かにゆっくり温泉を楽しみたいOurAge世代の大人女子にピッタリの温泉がここ。一度行ったら、何度も行きたくなる要素が満載よ。
聖徳太子も感動したお湯とその歴史を知れば、さらに魅力倍増!
↑正面入り口から左側にある本館棟。昔はこちら側が入口だったそう。
ミホ ミワさんは道後温泉のどんなところに魅了されているの?
ミワ まずはその歴史的背景ね。道後温泉は伊予の「風土記」にも登場する日本三古泉のひとつ。ケガをした白鷺がここのお湯を見つけたといわれているの。だから道後温泉本館には、本館の一番上や、柵の上にもシンボルの白鷺のオブジェがいっぱい!
ミホ 赤い塔屋の上の鳥は白鷺だったのね。写真で見たことがあるわ。
ミワ それにあの聖徳太子も来浴していて、その泉質に感動して石碑まで建てさせているんですって。
ミホ 歴史上の人物、聖徳太子まで‼
ミワ 「源氏物語」にも登場しているし。江戸時代には松山藩主・松平定行が身分別に士族用、僧侶用、婦人用、庶民男子用に分けて温泉施設をつくったという歴史も。そして現在の建物は明治23年(1890年)、多くの反対を押し切って初代道後湯之町町長・伊佐庭如矢(いさにわゆきや)氏が「100年後にもほかが真似できないものを!」という想いで、改築したものがベースになっているそうよ。
ミホ ミワさんお勉強したわね~。
ミワ 歴史を知ると、よりお湯のありがたみが増すでしょ。明治時代に城大工が手掛けた建物は、映画「千と千尋の神隠し」を彷彿とさせるような重厚感。館内に入ると、お城のような急な階段や狭い廊下が迷路のように入り組んでいて、歴史を旅しているようにワクワクした気分になるの。
いつでも最高のお湯を提供する18源泉のブレンド湯
↑神の湯男性の浴室。正面の陶板壁画に白鷺が描かれています
ミホ お湯もすばらしいんでしょ?
ミワ もちろん! 泉質は美人の湯と呼ばれるアルカリ性単純泉。これは全国のいろいろな場所にあるけれど、道後温泉は老若男女、誰もが喜ぶ優しいお湯ね。刺激が少なくてほんの少しとろみがあって、シルクのようにそっと肌を包んでくれる感じかしら。私は一日でほかの道後のお湯と合わせて4回も入ったけど、湯あたりは全然ナシ。肌の弱いミホさんにもおすすめしたい!
ミホ 源泉かけ流しかしら?
ミワ 無加温・無加水の源泉かけ流し。そのシステムが独特で、20度から55度の18本の源泉からくみ上げられたお湯をブレンドして、42度の適温にしているそう。だから季節や天候などによっても源泉ブレンドが変わるんですって。いつ行っても最高にいい状態の源泉をいただけるのよ。
ミホ 源泉ブレンド‼ 最高級のコーヒーみたいじゃない。ますます興味津々!
坊っちゃんも浸かった⁉ 砥部焼の陶板壁画が目印の「神の湯」
↑こちらは神の湯女子の浴室。壁画には大国主命と少彦名命が描かれています。全館営業再開後は、ボディソープやシャンプー、ドライヤーも完備
ミワ 道後温泉には神の湯と霊(たま)の湯の2つの浴室があるんだけど、泉質は同じ。
ミホ その違いは?
ミワ 浴室の雰囲気ね。ぜひ両方入っていただきたいけどお値段が違うの。まず温泉だけをサクッと楽しみたい方は700円(60分)で入れる神の湯を選んで。
ミホ 名前が神々しいわ。
ミワ 浴槽の扉を開けるとバーンと目に飛び込んでくるのが、石造りの浴室と砥部焼の陶板壁画。「湯釜」と呼ばれる湯口からは温泉が流れていて、全国のどこの温泉にもない、公衆浴場とは思えない品の良さを感じられるのよ。この道後温泉独特のレトロな雰囲気の中でお湯に入っていると、令和であることを忘れちゃう。それに温泉の深さも魅力。ふつうの温泉の浴槽は40~50㎝が多いけど、ここは80㎝と深いの。肩までしっかりつかったり、足だけつけてぼーっとしたり…。少し熱めのお湯だから、すぐに体がポカポカになるの。
ミホ 深いお湯って、全身に水圧がかかって気持ちがいいものね。
↑以前は男湯だけにあった看板も、現在は女湯でも見られます
ミワ ここで絶対見逃さないでほしいのが、陶板壁画の横にある「坊っちゃん泳ぐべからず」の看板。
ミホ 「坊っちゃん」って、あの夏目漱石の「坊っちゃん」?
ミワ そうそう。小説『坊っちゃん』の舞台は松山。東京から来た坊っちゃんは松山のことを「田舎だ」なんてディスりながらも、道後のお湯はべた褒め。浴槽に誰もいない時を見計らって泳いじゃってたのよ。
ミホ 坊っちゃん、やんちゃ(笑)。
ミワ それが見つかってかけられたのが「湯の中で泳ぐべからず」の看板。神の湯には小説をもとに「坊っちゃん泳ぐべからず」の看板がかけられているの。
ミホ 遊び心があっていいわね~。道後温泉に行く前にもう一度『坊っちゃん』を読み返してみようかしら。ところで、もうひとつの浴室はどのような雰囲気なの?
広々と開放的な「霊の湯」で、のびのびゆったりお湯に浸かる
↑まさに公衆浴場といった開放的な空間。霊の湯二階席・三階個室・三階貸し切り室の利用者のみ入浴可能
ミワ こちらは浴槽中央の湯釜に、道後とゆかりの深い大国主命(おおくにぬしのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)の二神像が鎮座している開放的な空間。広々としていて、よりゆっくり入りたい方におすすめね。
ミホ どちらかなんて選べない…。
ミワ そんな方には霊の湯の休憩室の二階席(2000円/60分)や個室(2500円/90分)を利用すれば、神の湯、霊の湯のどちらも楽しめるし、浴衣や貸しタオルもついているから、温泉後もゆっくりくつろげるわ。
ミホ 浴衣で涼むなんて風情があっていいわ~。
湯上りは休憩室でぬるめのお茶と茶菓子を頂きながらまったりと
↑レトロな器は昔から大事に使われている年代もの。ぬるめのお茶が温泉後の体に染みます
ミワ サービスも日本のおもてなし精神にあふれているのよ。お湯から上がってこちらの休憩室に来ると、お茶とお茶菓子(個室は道後名物の坊っちゃん団子)を出してくださるの。そのお茶が入浴後のほてった体に合わせて、わざわざちょっとぬるめにして提供しているんですって。台座に乗ったお湯呑みもかわいいでしょ♡ 道後温泉は映えポイントだらけ!
↑こちらは霊の湯二階席の休憩室
ミワ 神の湯にも貸し浴衣がついた休憩室とのセット(1300円/60分)もあるの。お湯だけでも最高なんだけど、せっかく道後温泉に来たら、みなさんには広間でゆっくりくつろぎながら温泉を堪能してほしいわ。浴衣を着て広間でお茶をいただきながら、ほっと一息。道後温泉でしか味わえない非日常な世界観よ。
ミホ 大人女子の一人旅でも、友人同士の旅でも、どちらでも楽しめそうね。
↑道後温泉オリジナルタオルは館内の売店で販売中。お土産にぜひ!
ミワ 売店でつい道後温泉タオルを買っちゃったの。厚みがあって結構大きめのタオルなのに、これで220円!しかもかわいいでしょ♡
ミホ あら温泉タオルだらけって言ってたのに、また買ってしまったの? でも確かにかわいい♡ あら、でも帰りに買ったってことは、道後温泉では使わなかったの?
ミワ そうなの(笑)。気づいたのが遅くて、家で愛用中(笑)。貸しタオルもあるから手ぶらで来ても大丈夫なんだけど、白鷺のロゴが素敵なこのタオルもいいでしょ。
ミホ 道後温泉って奥が深いわね~。
ミワ 話題はまだまだあるわよ。今日は道後温泉本館のことをお話したけれど、道後温泉には3つの公衆浴場があるの。次回は本館以外の2つの外湯を紹介するわ。
DATA
道後温泉本館
住所 愛媛県松山市道後湯之町4-30
☎ 089-921-5141
HP https://dogo.jp
営業時間 神の湯階下・6時~23時
霊の湯・6時~22時
料金 6種類の入浴コースがあるので、HPで確認を!
【ミホ&ミワ プロフィール】
ミホ
健康、医療、美容、ダイエットをテーマに雑誌やWEB、書籍で執筆するヘルスケアライター。ワインエキスパートの資格あり。20年以上前に温泉ソムリエを取得。温泉と酒と鉄道をこよなく愛す。特に秘湯が好きで、過去に「日本秘湯を守る会」のスタンプ帳を2回コンプリートした経験あり。最近ハマっているのは推し活(平野紫耀くん強火担・Number_i箱推し)。
ミワ
ダイエット、美容記事のほかトラベル媒体でラグジュアリーホテル、宿の取材歴多数。健康と美容と旅を追求するヘルスケア&トラベルライター。温泉好きが高じて温泉ソムリエを取得。温泉とマッサージと猫をこよなく愛し、いいお湯を求めて、全国の温泉を渡り歩く。
画像協力/道後温泉事務所 取材・文/山本美和