大分空港からリムジンバスで約1時間で到着。由布院温泉へ
↑由布院駅。観光案内所で情報を入手してからまち巡りがオススメ
ミホ いつもおかわり温泉(温泉宿に宿泊した後に、日帰り温泉を巡ること)をしていく私たちだけど、さすがに「ENOWA YUFUIN」の温泉をひとり占めしたミワさんですもの、今回は公共温泉に寄らずに帰ったのかしら?
ミワ 別府温泉に次いで温泉湧出量、源泉数ともに全国2位の由布院温泉。そんなありがたい温泉地に初めて来たのに、おかわり温泉をしないなんてありえないわよ。
ミホ さすがミワさん! でも、1位は別府温泉、2位が由布院温泉、どちらも大分県でしょ。大分県は温泉県と言われるだけあって、恐るべしね。
ミワ そうなの。空港に足湯もあったし、大分県は温泉の宝庫よ。由布院温泉へは大分空港からリムジンバスを利用すれば1時間くらいで着くし、アクセスも便利なの。
ミホ 実は私、由布院には、はるか昔に大分の別の温泉地に行ったときに、ちょこっと立ち寄っただけだから、どんなところか詳しくは知らなくて。ぜひ教えてほしいわ。
ミワ 何しろ源泉数2位だからたくさんの温泉旅館や、車やバスを使って足をのばせば、日帰り温泉があるわよ。でも今回は、気軽に駅から歩いて行ける二つの公共温泉に立ち寄ることにしたの。
江戸時代の文献にも残っている檜を使った内湯「ゆのつぼ温泉」
↑道の両側にお土産屋さんが並ぶ湯の坪街道。正面に見える山は由布岳
ミワ まずは観光のメインストリート・湯の坪街道を通って「ゆのつぼ温泉」へ。
ミホ 「東の軽井沢、西の由布院」と言われるだけあって、おみやげ物屋さんがたくさんあるわね。お買い物も楽しそう。
ミワ 街道沿いには昔ながらの街並みが残っていて、ショッピングしながらのお散歩も楽しかったわ。私がうかがったのは平日だったのに、韓国や中国からの観光客がたくさんいらっしゃって、驚いちゃった。
ミホ 古き良き日本の趣が残っている感じだもの。日本人にはもちろん海外の方にとって魅力的な街並みなのね。目の前の山も素敵ね。私は自然が好きだから、山や川に囲まれた温泉はとても落ち着くの。
ミワ それならミホさん! 由布院はゼッタイ好きだわ。由布院のシンボル「豊後富士」とも呼ばれる由布岳は美しいし、横道に一歩入れば大分川流れていて、とても風光明媚な場所なのよ。
↑季節ごとの自然を感じることができる大分川。散策がてら温泉に立ち寄るのもおすすめ
ミホ 温泉も自然に囲まれた場所にあるの?
ミワ 1軒目の「ゆのつぼ温泉」は、メインストリートの湯の坪街道から1本入った大分川沿いにあって、街道沿いの喧騒が嘘のようにとても静かな場所。入口はまるで昔の駅舎のようなの。はじめは温泉だと気づかなくて、通りすぎてしまったわ。
ミホ 風情のある佇まいね。
↑木の扉を開けると、男湯と女湯に左右でわかれていて、靴を脱いで脱衣所へ
ミワ ここの共同浴場はとても歴史が古くて、江戸時代の文献にもその名前が残っているそうよ。
ミホ 江戸時代⁉ そんな時代から受け継がれているなんて! ますます興味が沸くわね。ところで、真ん中のポストは何かしら?
ミワ この料金箱に入浴料200円を入れてから入るのよ。
ミホ えっ、ポストにお金を入れるの? それも200円⁉ 美肌の湯に毎日そのお値段で入れるなんて羨ましい…。さすが温泉県!
ミワ 無人なのでおつりはもらえないから、こちらの温泉に出かける方は必ず小銭を用意していくことを忘れずに! 浴槽は檜を使った内湯。お風呂は大きくないけれど、窓から木漏れ日が入ってくる、とても静かで落ち着いた空間よ。
ミホ 鄙びた温泉が大好きな私の好み♡
↑石畳に囲まれた風情のある檜風呂に歴史を感じます。写真提供/由布市商工観光課
ミワ 午前中にうかがったのだけれど、先客に地元のマダムが一人いらっしゃって体を洗っていたの。「こんにちは」とあいさつをしたら、地元民じゃない私を見てびっくりされていたわ。きっと午前中は地元の常連さんしかいらっしゃらないのでしょうね。そして、シャワーはないから、浴槽に入る前に洗面器で浴槽のお湯をくんで、かけ湯をしながらお湯で汚れを落として湯船に入ろうとしたら…。
ミホ 入ろうとしたら?
ミワ 先客のマダムに「浴槽に入る前にお下をきちんと洗いなさいね」と声をかけられたの。突然のことだったから、ちょっとビビッてしまって「はい」と答えて、タオルでゴシゴシ全身を洗ってから温泉に入ったの。
ミホ 二人っきりだし、それは驚くわね(笑)。
ミワ (笑)。そして温泉に入ったら、マダムが話しかけてくださって。「この温泉はここに毎日通っているみんなで守っているんですよ。お湯が汚れないように、入浴前には石鹸で体を隅々まで洗って、泡をきちんと落として、お湯に泡が入ったり、汚れないように気をつけて入るのがここのルール。お年寄りが多いから、コロナ以降は以前よりもっと気をつかって、みんなで感染をしないようにここのお湯を大切に使って、守っているんですよ」と教えてくださったの。
ミホ 石鹸で体を洗うのは温泉前、温泉後、どちらが正しい論争が結構前からあるものね。
ミワ いろいろな考え方があると思うけれど、ここのお湯を毎日使っていらっしゃる地元マダムたちは、この温泉をいつまでもキレイに保つために、細心の注意を払って温泉を利用されているの。そのお気持ちに胸を打たれたわ。
ミホ いいお話ね。そして泉質はどうだったのかしら?
ミワ 温泉は単純温泉で、Phが高めのやわらかいお湯でとても気持ちがよくて。地元マダムの温泉愛とやさしいお湯にほっこり癒された貴重な体験だったわ。でも、ちょっと熱めのお湯だったから、長く入っていられなくてお風呂から上がってしまったのね。
そうしたら地元マダムが「もうあがっちゃうの? せっかくだから、もっとゆっくりしていきなさいな」って声をかけてくださったの。マダムとも打ち解けて「いいお湯をありがとうございます。また必ず来ますね!」って、ずっと昔からの知り合いのように笑顔でお別れしたの。
ミホ 温泉のようにやさしくてあったかい出会いね。そういう出会いがあるのが公共温泉の良いところ。
ゆのつぼ温泉
住所 大分県由布市湯布院町川上1087番地1
入浴料 200円
営業時間 10:00~22:00(変動あり)
定休日 なし
由布院駅から一番近い共同温泉「乙丸温泉館」
↑駅から駅前・由布見通りをまっすぐ進んで約5分で到着
ミワ 二軒目に寄った公共温泉は、由布院駅から最も近い共同温泉「乙丸温泉館」。駅から近いから、地元の方はもちろん、観光客にも広く親しまれているのですって。
ミホ 観光帰りに立ち寄るのにも便利な立地ね。
ミワ 歩き疲れた体に温泉が染みるはずよ。大通りから1歩入ればすぐに見つけることができるから、迷うことなく行けると思うの。こちらの入浴料も200円。
ミホ こちらの温泉も? 由布院にいれば毎日そのお値段で温泉に入れるのね。
ミワ 温泉好きにとって由布院は天国♡ 入浴料の200円を入口にいらっしゃったスタッフの方にお渡ししたら「お賽銭箱に入れますね」とおっしゃって。驚いてそちらを見てみると、館内には温泉の守り神・薬師如来が祭られていて、そちらの賽銭箱に入浴料を入れるのですって。
ミホ 薬師如来さまにお賽銭を入れて温泉をいただくなんて、何だかありがたい気持ちになるわ。
↑大きな窓が気持ちのいい解放感のある浴槽。(許可を得て男湯を撮影)
ミワ 私がうかがったのはちょうどお昼前くらいだったのだけど、どなたもいらっしゃらなくて、大きな窓から日の光が差し込んだ浴槽は解放感があってとても気持ちがよかったわ。もちろん浴槽に入る前には「ゆのつぼ温泉」の地元マダムの教えを守って、受付で石鹸を買って、体を隅々までキレイに洗ってから入ったの。
浴槽も脱衣所もとてもキレイで、地元のみなさんがこちらのお湯を大事に守っていらっしゃるのを実感。私のあとから入ってこられた地元マダムも笑顔で「こんにちは」と声をかけてくださって。掛け湯をしたらいきなり入るのではなく、きちんと体も髪も洗ってからゆっくりと浴槽に入られていたわ。
ミホ みなさん、きちんとルールを守っていらっしゃるのね。
ミワ そう。だから私たち観光客も、地元マダムに守られているキレイな温泉をおすそわけしていただけるのよ。だからこそ、観光客も地元のルールを守らなければいけないわ。
ミホ 東北には湯守がお湯を守っている温泉がたくさんあるけれど、地元のマダムに守られている温泉というのも、とても素敵ね。
ミワ 本当にそうね。こちらも由布院温泉の代表的な単純温泉。Phが高めでやわらかくて、刺激の少ないとてもやさしいお湯。肌の弱いミホさんにも気に入ってもらえると思うわ。
ミホ いつか必ず、由布院温泉巡りをしなくては。そのときは、もちろん地元マダムの教えを守って温泉を楽しみます。
乙丸温泉館
住所 大分県由布市湯布院町川上2946番地1
入浴料 200円
営業時間 6:30~22:00
定休日 第3木曜日
【ミホ&ミワ プロフィール】
ミホ
健康、医療、美容、ダイエットをテーマに雑誌やWEB、書籍で執筆するヘルスケアライター。ワインエキスパートの資格あり。20年以上前に温泉ソムリエを取得。温泉と酒と鉄道をこよなく愛す。特に秘湯が好きで、過去に「日本秘湯を守る会」のスタンプ帳を2回コンプリートした経験あり。最近ハマっているのは推し活(平野紫耀くん強火担・Number_i箱推し)。
ミワ
ダイエット、美容記事のほかトラベル媒体でラグジュアリーホテル、宿の取材歴多数。健康と美容と旅を追求するヘルスケア&トラベルライター。温泉好きが高じて温泉ソムリエを取得。温泉とマッサージと猫をこよなく愛し、いいお湯を求めて、全国の温泉を渡り歩く。
取材・文/山本美和