千曲川に続く静かな森の中に佇む「中棚荘」へ
ミホ まだまだ寒いこの時期、やっぱり温泉で温まりたいわよね〜。ということで今回私が選んだのが、長野県・小諸(こもろ)にある「中棚荘」。実は私、かれこれ十数年前に「中棚荘」に一度行ったことがあるんだけど、ここの「初恋りんご風呂」が大好きで、もう一度行ってみたくなって、ミワさんにもおすすめしたかったの。しかも毎年10月から春までの期間限定だから、いまのうちに行かなくちゃ!
ミワ りんご風呂、楽しみすぎるわ〜。
――そして2人は、小諸駅からタクシーで5分ほどの「中棚荘」に到着。
ミワ 自然の中にポツンと佇む宿で、趣があっていい感じね〜。野鳥の声が聴こえる静かな空間で、もうすでに癒されるわ。
↑中棚荘の趣のある建物。旅館業として開始したのは1926年(大正15年)で、創業100年を誇る
ミホ 中棚荘の宿泊館には、大正館と平成館があって、今回私たちが宿泊する大正館は、大正時代に建てられて増改築や修復をしてきた旧館。レトロな雰囲気で、旅情と郷愁をそそられるわよね〜。
ミワ かの文豪・島崎藤村が足繁く通ったらしく、藤村の詩の中に中棚荘が登場するものもあるらしいわよね。
ミホ 館内のラウンジも“大正浪漫”な雰囲気で落ち着く感じ。藤村が通った理由がわかるわ〜。
↑フロントの隣にあるレトロでシックなラウンジ
↑大正時代に建てられ、増改築や修復をしてきた中棚荘の原点である「大正館」
ミホ さっそくお部屋に行ってみましょう〜。大正館の歴史を感じる佇まい、とてもいいわね。
ミワ 今回の私たちのお部屋は、「藤村」の間。なんと、藤村が「千曲川旅情の詩」を執筆した部屋を復元した客室なんですって。
ミホ (部屋の戸を開けてびっくり)まあ!すでにお布団が敷いてあるわよ、ミワさん!
ミワ 最高だわ〜! コロナ対策の観点から布団を先に用意しておくってホームページに書いてあったけれど、誰も入ってこないし、お風呂から出たらいつでもすぐに寝っ転がれるし、とってもいいシステムよね〜。自由に過ごしたい私たちにぴったり。
ミホ しかも、こたつまであるわ! 雪国育ちの私は、郷愁をそそられるわ〜。角部屋で大きな窓から明るい日差しが入ってくる中、野鳥を眺めながらのんびりこたつに入れるなんて素晴らしい。そしてうれしいことに、湯たんぽまで置いてあるわ! この時期(訪れたのは2月)はまだまだ寒いから、ありがたいわね。寝るときに使いましょ。
↑部屋には最初から布団が敷かれているのがうれしい(今回、実はミワ&ミホ以外にもう1人、温泉好きの友達も同行したので布団は3つ用意されている)
記事が続きます↑「藤村」の間は角部屋で、こたつに入りながら中庭を眺めることができる
↑部屋の鍵には、藤村の言葉と似顔絵が描かれている。くるみのお菓子も美味
↑部屋には蓄熱式湯たんぽが置かれている。寝るときの冷え対策に。
ミワ 寒いとこたつから一歩も出たくなくなるわね。エアコンより、こたつのほうが旅情感を味わえるし、こたつって神~。
ミホ ミワさん、このままだと私たち、こたつから出られなくなりそうよ! 早く初恋りんご風呂に入りに行きましょ!
――さっそく、2人は初恋りんご風呂へ。
ミワ お風呂まで続くレトロな廊下や長い階段を歩いていると、期待感が膨らむわね。
ミホ 敷地の最上部にある源泉の近くに大浴場を作ったから、階段を登って行った場所にあるらしいわ。あら、本日の初恋りんご風呂は「ふじ」って書いてあるわね。さすが、りんご王国・長野。りんごの種類が多いから、そのときどきで温泉に入れるりんごの種類が変わるのね。
↑大浴場までの長い階段の途中に、この日の初恋りんご風呂のりんごの種類の案内が。ここには温泉水飲み場もある
ぷかぷかと浮かぶりんごに、ほっこりと癒される「初恋りんご風呂」
――そしてお風呂に到着。
ミワ わ〜、お湯にりんごがぷかぷか浮いていてかわいい〜♡
ミホ 壁には、「まだあげそめし前髪の……」で始まる島崎藤村の有名な「初恋」の詩が掲げられているわね。だから、「初恋りんご風呂」なのね。ちなみにミワさん、初恋の記憶ある?
ミワ 気が遠くなるほど昔だけれど、もちろん覚えているわ。初恋は誰にとっても美しい思い出ですもの。
ミホ そうよね。偶然出会ったイケメンが、実は子供の頃のお互いの初恋相手で、その人と再び恋に落ちるという展開には、残念ながらなかったけどね〜(涙)。
ミワ ミホさん、それは韓ドラの見過ぎよ!
↑大浴場の壁に掲げられている島崎藤村の「初恋」
記事が続きます↑りんごが贅沢に浮かんでいる「初恋りんご風呂」
↑泉質はアルカリ性単純温泉の美肌の湯。神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、関節のこわばり、慢性消化器病、冷え性、疲労回復などにもよいとされている
ミホ お湯につかると、りんごのほんのり甘酸っぱい香りがして、癒されるわね〜。今日のりんごはふっくらして立派な「ふじ」だから贅沢な感じ。宿の方に伺ったら、ジュース作りなどに使われる加工用のりんごを使っているらしいわ。
ミワ いい香りのりんごと一緒にお湯に浸かっているだけで癒され度が倍増〜。
ミホ 湯質はアルカリ性単純泉。源泉掛け流しで、初恋りんご風呂は42度くらいに加温してあるらしく、寒いこの時期にちょうどいい湯加減で、芯から温まるわね。
ミワ とろみがあって肌をベールのように覆う優しいお湯で、美肌になりそう。カランから出るお湯も温泉水なのもいいわね。
ミホ お風呂の真横に、戸でさえぎられていない畳敷きの脱衣所があるところも私が中棚荘を気に入っているポイント。解放感があるし、お風呂から上がってすぐ畳の上でくつろげるなんてありがたいわ。
↑初恋りんご風呂の横の脱衣所。戸で仕切られておらず畳敷きになっていてくつろげる
ミワ 露天風呂にも入ってみましょ。温度は内風呂より少しぬるめだけれど、野鳥のさえずりを聞きながら、いつまでも入っていられる心地よさね。
ミホ 初恋りんご風呂と露天風呂の無限ループになりそう〜。
↑露天風呂は少し温度がぬるめ。その分、ゆっくりと長く浸かっていられる。
ミワ 結局、私たちお風呂に1時間も入っていたけれど、もう夕食の時間ね。今回、「冬の味覚探訪/信州食文化プラン」という、和風創作会席に「氷餅の揚げまんじゅう」が付いてくるプランを予約したから、楽しみ。
↑夕食の先付け(シナノユキマス、サラダセロリ巻き、いくら、焼きりんごなど)、お造り(信州サーモン昆布〆、鮪など)、小鍋(立科産豚ロース粕鍋)。
ミホ お料理は、少しずつ温かい状態で出てくるのがいいわね。先付けはシナノユキマスや焼きりんごなど、お造りは信州サーモン昆布〆、小鍋は立科産豚ロース粕鍋と、派手ではないけれど地元の食材を活かした素朴で優しいお味のお料理ばかりで、ほっとするわね。
ミワ 素材も味付けも優しくて温泉後のデトックスした体にしみるわ~。
ミホ うれしいのは、お酒のメニューが充実している点。中棚荘は近くに「ジオヒルズワイナリー」というワイナリーも持っているの。今回、何年かぶりに中棚荘に来てみたくなったのは、ワイナリーもお目当てだったのよ。とりあえず、ワイナリーは明日行くことにして、今日は日本酒飲み比べセットをいただくわ。
ミワ お酒を選ぶときのミホさん、本当に楽しそうね。
ミホ そして、噂の「氷餅の揚げまんじゅう」が来たわよ〜。氷餅は、長野県大町市が発祥とされる、つきたてのお餅を吊るして凍らせて乾燥させた、冬の信州ならではの保存食なんですって。通常は和菓子として使われることが多い氷餅を、こちらでは和食風にアレンジしたそう。ふわふわした食感でおいしいわね♡。
ミワ とろ~りもちもちとしていて、おなかにもしっかりたまっておいしい。お昼ならこれ一皿でもいいくらいのボリューム感ね。基本の和食創作会席料理だけでも結構な品数だけれど、味付けが優しいから全品スルリと完食しちゃった。
ミホ ごはんが無農薬の自家米で、しかも釜炊き。この日はえんどう豆のごはんで、おいしかったわ〜。ごちそうさまでした。
↑冬の信州の名物「氷餅」をアレンジした揚げまんじゅう
――食後は、またまた温泉にたっぷりつかってから就寝。温泉宿に泊まるといつもなら朝早く目覚めることが多いミワも、温泉と湯たんぽのぬくぬく効果で12時から7時50分まで爆睡。そして翌朝の朝食がこちら。
↑朝食は、りんごジュース、ひじきの煮物や蒸し鶏、りんご糠漬け、カレイの西京漬け焼き、温泉卵、サラダ、麦とろごはん、味噌汁などヘルシーな献立。
ミワ 「中棚荘」、静かでりんご風呂も最高で、お料理もおいしくて、すごく居心地のいい宿だったわ。
ミホ 本当に。初恋りんご風呂の季節に来れてよかったわね。でも、りんご風呂をやっていない時期でも満足できそう。新緑の季節にまた行きましょうね。
中棚荘
長野県小諸市乙1210番地
TEL 0267-22-1511
↑中棚荘の中庭にある「こもれびテラス」。コーヒーやビールを飲みながらほっとひと息
チェックアウト後、中棚荘5代目荘主が代表を務める「ジオヒルズワイナリー」へ
ミホ 私たち、チェックアウトした後、ミワさんがレンタカー借りてくれて、中棚荘がやっている「ジオヒルズワイナリー」に行ったのよね。
ミワ 冬だったから、ぶどう畑は枯れていたけれど、浅間山や北アルプス、八ヶ岳を眺められる小高い御牧ケ原にたたずむ絶景のワイナリーで、1階はワイン醸造所で、2階はカフェ。中棚荘5代目荘主である富岡正樹さんが代表を務めていて、三男の隼人さんと、ベトナム人の奥様とで運営されているそうで、ワインとベトナム料理が楽しめるというユニークな組み合わせ。
ミホ 私がカフェで試飲した赤ワイン、「Mimakigahara2023_M」は、品種はメルロー。今年のさくらアワードで金賞を受賞したとあって、果実味の中にスパイシーさがある本格的なお味。もうひとつ試飲した、小諸産のぶどうを使った白ワイン「フォン・トム・ブラン」も豊かな香りとスッキリした酸味があっておいしかったわ。
ミワ 私は運転があるからベトナムコーヒーにしたけれど、こちらもおいしかったわよ。今度はランチも食べてみたいわね。
↑小高い丘の上にポツンと佇む「ジオヒルズワイナリー」。ビニールハウスをイメージしたという建物
↑ワインやベトナム料理が楽しめるカフェは360度ガラス張りのパノラマビュー
ジオヒルズワイナリーで、中棚荘の名物女将と遭遇!
ミワ そしてワイナリーのカフェで驚いたのは、宿で夕食のときにキリッとした着物姿でご挨拶に来てくださった中棚荘の女将さん(富岡洋子さん)が、ジオヒルズワイナリーのウエア姿で登場したこと。土日・祝日限定でやっているこのカフェを、女将さんもお手伝いされているとか。しかも女将さん、地元のラジオ局「SBC信越放送」で、「女将さんの小諸スケッチ」というレギュラー番組をもっていて、この日は、ラジオの生出演を終えた後だとおっしゃっていて、さらにびっくり。女将さん、大忙し!
↑中棚荘の名物女将、富岡洋子さん
ミホ しかも暖かい季節には大型バイクを乗り回していらっしゃるそうよね。なんてパワフルな女将さん! 中棚荘は長男・長女ご夫婦が切り盛りされていて、ワイナリーは三男ご夫婦が担当。そして中棚荘の別邸「はりこし邸」でできる結婚式は、ご長女と、ご長男の奥様がウェディングプランナーとして手掛けていらっしゃるそうで、中棚荘とご家族のお仕事をうまく繋げていて、正に敏腕女将!!
ミワ トークもお上手で、私たち、爆笑しちゃったわよね〜。
ミホ 中棚荘に行かれる方は、ぜひ女将さんとお話をしていただきたいわね。そして、ジオヒルズワイナリーもぜひ立ち寄ってみて!
ミワ くるみが名物の小諸は、くるみそばにくるみおはぎと、くるみを使ったものがおいしいし、りんご、信州味噌、ワインと特産品が多いから、道の駅での買い物も楽しかったわよね。またぜひ、行きましょうね〜。
ジオヒルズワイナリー
長野県小諸市山浦富士見平5656
TEL 0267-48-6422
カフェ営業時間(土・日・祝日のみ) 10:00〜16:00(ランチ11:30〜14:00)
【ミホ&ミワ プロフィール】
ミホ
健康、医療、美容、ダイエットをテーマに雑誌やWEB、書籍で執筆するヘルスケアライター。ワインエキスパートの資格あり。20年以上前に温泉ソムリエを取得。温泉と酒と鉄道をこよなく愛す。特に秘湯が好きで、過去に「日本秘湯を守る会」のスタンプ帳を2回コンプリートした経験あり。最近ハマっているのは推し活(平野紫耀くん強火担・Number_i箱推し)。
ミワ
ダイエット、美容記事のほかトラベル媒体でラグジュアリーホテル、宿の取材歴多数。健康と美容と旅を追求するヘルスケア&トラベルライター。温泉好きが高じて温泉ソムリエを取得。温泉とマッサージと猫をこよなく愛し、いいお湯を求めて、全国の温泉を渡り歩く。
取材・文/和田美穂