昔、男友達が言っていたことですごく印象に残っていることがあって、「なんでも『道』(どう)がつくとすごいんだ。だから『衆道』(しゅうどう=男色の道)もすごいんだ」と。なるほど~と思ったわ。何かすごいのか、よくわからないけど(笑)。
でも、剣道にしろ、茶道にしろ、極道にしろ、なんかすごそうよね。つまり命をかけられる、極めるということに日本人は「道」とつけたのだと、そのとき思ったのよね。
「道楽」もまさにそうで、「趣味」は、あくまで自分のためにやるものだけど、その趣味が自分より大事になって、命をかけられるようになると「道楽」になるんですね。つまり究極の「オタク」ってこと。
そういう意味では、ノーベル賞をとるような人は、みんな道楽なのよ。あと健康オタクで、「健康のためなら死んでもいいという人」って、いるじゃない? 熱波がきてる中で走ってる人とか(笑)。絶対体に悪いと思うから、本末転倒なんだけど、あれもほぼ道楽。台風来たからサーフィンとか、まさに命がけですよ。
そして私にとってマンガはまさに道楽だったのよね。マンガのためなら命をかけられたし、喜んでマンガの奴隷になりました。ようは「匠」(たくみ)になりたいと思ってたんです。
私の定義だと「匠」というのは、同じことを熱心に40年くらいやって極めた人なんだけど、気づいたら40年やっちゃってたし、もう十分でしょうと。それで死ぬ寸前に「道楽」から卒業したわけ。
体がぼろぼろだったというのもあるけど、「私の人生、マンガしかなかった。こんなことなら世界一周しておけばよかった~!!」と後悔するのもイヤだった。それで「一条ゆかり」は横において、「藤本典子」(本名)のために時間を使おうかなと思ったんですね。
今はマンガ道から解放されて、楽しく生きています!!
「有閑倶楽部」りぼんオリジナル1989年冬の号口絵ポスター
取材・文/佐藤裕美