これは私の持論です。同じことを毎日やっていると、かならずマンネリ化します。でも、飽きるからこそ、人は進化するんだと思うんですね。
365日味噌汁の具が、豆腐とワカメだけだったら飽きるじゃない!油揚げとほうれん草も良いし、サヤエンドウにジャガイモ…バター味噌汁にすると美味しいのよね。大胆にアボカドとか、とにかく日本人は創意工夫研究の達人民族だと思います。たぶん和食のバラエティの豊かさって世界一だと思うし、和食だけでなく、日本で食べられる海外料理の豊富さも世界一よ!中華、韓国、イタリア、フランスはもちろん、アメリカ、ドイツ…あー書いているときりがない。
新しい珍しいものが大好きで、ちょっと飽きると創意工夫研究してアレンジするのが日本人。そのくせ、古いものもしっかり守る日本人って、私たちには普通だけど世界から見たら、変わった民族だと思われてるんじゃないかな。
もしかしたら、日本の常識は世界の非常識かもしれないと、最近思う一条ですが、話を戻すと、私が50年以上もマンガ家としてやってこられたのも、何を隠そう、飽きっぽいという性格のおかげなんですよ。
単行本も3巻くらいになると飽きてきて、この話も主人公の顔を描くのももう飽きたと(笑)。でもねぇ、飽きたからやめますってわけにもいかないから、とにかく何か新鮮な空気を、自分の興味をそそるエサをつくらねばマズイと考え、つまりシチュエーションを変えるんですね。
わかりやすいのが『プライド』で、3巻目くらいから飽きてきて、意識がだんだん海外に向き始めました。そうすると、いろいろ調べることも出てきて、とても飽きていられなくなるんですよ。今の仕事に慣れると、ちょっと余裕が出てきて、結果飽きるのです。余裕は創作活動の敵です。
たとえば恋愛ものを描いて当たったら、次も恋愛もので~みたいな話になるんだけど、飽きたのよ〜めんどくさいのよ〜同じようなものは描きたくないのよ〰️〰️!!やったことない、おもしろいことがやりたいんだよ!!それで節操もないくらい、いろんなジャンルのものを描きましたね。『砂の城』と『有閑倶楽部』と『ブライド』って、同じ人が描いたと思えないって、自分でも思います。
ずっと同じことをやっているほうが失敗もないし、安心するっていう人もいると思うけれど、そういう意味で、私は失敗を恐れない人だったのでしょう。
だって、失敗したって死ぬわけじゃないし、失敗した理由を受け止めて改善すればいいから、逆に失敗には学びがあるわけだものね。それより「この人、ず〰️〰️っと同じことやっているよね」って飽きられることのほうが怖かったな。というか、人に飽きられる前に自分で自分に飽きてしまうから、読者にも飽きられずに、続けてこられたんだと思います。
ちなみに昔、飼っていた愛犬の蘭丸は、ずっとドッグフードだと食べなくなるから、メインはドッグフードだけど、あれこれ私がアレンジしてました。近所の魚屋の兄ちゃんと仲良しだったから、血合いを大量に安く買って、それをうすら甘く煮つけたりしてね。贅沢だわ~。きっと飼い主に似たのであろう。
「砂の城」りぼん1978年7月号付録「砂の城イラストブック」描き下ろし
取材・文/佐藤裕美
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