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年齢とともに変化していくことのひとつに……(君島十和子 美の格言⑲)

君島十和子

君島十和子

君島十和子. 1966年生まれ。モデルとして活躍後女優に。1996年、結婚を機に芸能界を引退。現在は自身のコスメブランド「FTC」のクリエイティブディレクターとして数々のヒットを生み出している。2女の母。

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君島十和子さんの大ヒット書籍「十和子道」から抜粋した言葉を美の格言としてお届けします。「十和子道」担当編集者ギリコから見たその言葉(格言)の背景や取材時のエピソードも合わせてお読みいただけます。

年齢とともに変化していくことのひとつに「色」との付き合い方があります。

メイクにせよ、洋服にせよ、好きな色やなじむ色がキレイに見せてくれるわけではありません。

必要なのは「効く色」です。

グリーンやオレンジなど敬遠しがちな派手な色のほうが、肌も輪郭もキレイに見えるという年齢肌の不思議を感じるはず。

多彩な色に囲まれた人生なのに、黒と茶とベージュで過ごすなんてもったいない。

「無難に」「目立たず」「みんな一緒の色」でいいなんてみすみす老け込んでいくようなものです。

臆せず色を試しませんか?

書籍「十和子道」P22、25、27より~


<担当編集者からみたこの言葉の背景>

今回の格言は色についてだが、私にとって「十和子道」に関して「色」というと表紙のことが真っ先に頭に浮かぶ。

 

なぜかというと本が発売されると読者から表紙について賛否両論があがったからだ。

これは10数年前に担当した「十和子塾」のときにはなかったことである。

 

書店の店頭に本が並んだとき、ふつうお客さんはまず表紙に目を留める。

 

いうまでもなく表紙の写真とデザインはとても重要だ。

 

「十和子道」の表紙のテイストを考える際、十和子さんから言われたのは

「無難にまとめようとしないでほしい」

「〝君島十和子らしさ〟にとらわれないでほしい」

の2点だった。

 

表参道にある十和子さんのコスメブランドFTCの店舗のキーカラーは白とグリーンだし、今までの十和子さんの著書を見るとキーカラーはやはり白であることが多い。

なので今回は敢えて「十和子道」の表紙には白とグリーンは使わないことにした。

 

代わりに従来の十和子さんのイメージには全くないピンク、それもドピンクを使うことにした。

 

その理由は〝遠くから見ても目立つから〟。

 

また写真についても顔の真正面のアップにし、目線はまっすぐこちらを見ているものでいくと決めていた。

これはその頃流行していた本の表紙とは全く違う。

 

当時ライフスタイル本というジャンルでよく見かけたのは、横に顔を向けた、見ているこちらとは目線が合わない写真を表紙にしたものだった。

わかりやすさやアピール力の強さより、雰囲気、空気感を重視した〝おしゃれ〟な表紙が多かった。

中には写真がブレていて、顔すらわかりにくい表紙の本もあった。

 

そんな流行に逆らうかのように私が目指したのは、とにかく目立つ本。

書店の売り場をなんとなくぶらぶらしている人の目に、遠くからでもボンッと飛び込んでくる表紙にしたかった。

 

「私はここにいます。私に気づいて」

とアピールする表紙にしたかった。

 

だって存在に気付いてもらえなければ、手にとってくれることはありえないのだ。

 

そして写真も、一般的な十和子さんのイメージとは違う服を着ているものにした。

表紙で着ているのは娘さんと共有しているという鮮やかな赤とブルーのチェックのシャツ。

FTCのパンフレットや雑誌の撮影などでは見ることがない柄とカジュアルさだ。

 

この表紙デザインを見せたとき編集部内からは

「十和子さんぽくない表紙。

もっとエレガントな服を着ている写真のほうがいいのでは」

「キーカラーもこの目立つピンクはちょっと(いまいち)……」

という意見が出た。

 

〝美容の本〟であれば私もエレガントな服を着た十和子さんの写真を選び、キーカラーも白、明るいグリーン、シルバーなど透明感のあるものにしたと思う。

 

 

でも「十和子道」は美容本ではない。

君島十和子さんという女性の暮らしを通して、その生きざまを紹介する本である。

 

ひとりの生活者として実際の十和子さんはこのシャツを着て家事をし、家族と食卓を囲んでいるのだ。

 

そこで表紙には「十和子道」という書名の上に 美容本ではない君島十和子の本 という一文を、そして顔のすぐ横に「50歳になりました」と載せた。

表紙の十和子さんと目が合った人が、その瞬間、真横の「50歳」という文字も見るようにという意図だった。

 

編集部の次は十和子さんに見てもらう番だった。

十和子さんから編集部に見せたときのようなネガティブな反応が出たら

「次にご本を出すときに白やグリーンといった今までのイメージの表紙に戻せばいいのです。

〝いかにも十和子さんらしい本〟なら今後どこの出版社、どの編集者と組んでも出せます。

だから敢えて今回は冒険しましょう」

と言うつもりでいた。

 

けれど。

 

返ってきたのは

「これでいいと思います」

だった。

一緒に見てくれた夫の誉幸さんも

「今までの家内のイメージと違っていていいのではないでしょうか」

とのことだった。

 

こうして昔からのファンには「意外」と言われるテイストの表紙となった。

 

本の発売直後、私は「十和子道」のエゴサーチをした。

ネットのレビューや個人のブログなど、「十和子道」についてを書いてあるものは片端からチェックした。

表紙についての賛否両論は、その際に目にしたのである。

 

たしかに今あらためて見ると、好き嫌いがはっきりわかれる表紙だなと自分でも思う。

 

あるとき山梨県内の書店だったと思うのだが、そこで働いている書店員さんのツイートを見つけた。

 

「売り場を通る人が見て、足をとめることの多い本」

と書いてあった。

(仕事で一日中デスクワークのときは、こんな鮮やかなパーカーで過ごすこともあるそう/「十和子道」P25より)

 

撮影/本多佳子、冨樫実和

★この連載は毎週木曜日更新です。次回は2020年3月19日配信です。お楽しみに!

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