前回はホテルやお店での「一流のサービスを受ける方法」を書きましたが、今回は飲食店での話題や、振る舞いについて書いてみたいと思います。
まず、私は初めて行くお店では「お友達に聞いてきました」とか「前を通るたびに、外観が綺麗なので(いつも賑わっているので)気になっていたんです」など、必ずお店にとってポジティブな、プラスαの一言を添えるようにしています。
お店を褒めると「そうですか、ありがとうございます」と、まずは心地よい答えが返ってくるはずです。
途中や帰り際に「いいお店ですね」と付け加えると、店側も喜び、「どうぞまたいらしください」と関係性ができ、気脈が流れます。
これが常連になる良いコミュニケーションの第1歩です。
レストランなどで一流のサービスを受けるには、やはりスタッフとの心の距離をできるだけ縮め、「このお客様にならサービスしてあげたい」と思わせることが大切です。
常連の上客としてワンランク上のサービスを受けている先輩は、「お店の常連になると、『ひと口だけ食べたい』とか『半分でいい』など、食べる量を調節してもらえたり、『このエビをフライにして』と調理方法をリクエストできるなど、ある程度のワガママを聞いていただけるので、食事に関してノーストレスで楽しい時間を過ごせます」と教えてくださいました。
あるイタリアンレストランでパンの美味しさを絶賛したところ、「明日の朝食にどうぞ」と、トリュフバター付きでお土産に持たせてくれた、なんていうご経験も。
「こういう特別感のあるサービスは、同席者が喜んでくれますし、自分の顔も立ちますね」
いったい、どうしたらこんな素敵なサービスを受けられるのでしょう。うかがってみると、そこには客側の、細やかな気づかいがありました。
「お店となじみになっても、生意気になってはいけない。なじみヅラをせず横柄にならないことです。たとえば、混んできたら席を立って新しい客にゆずる。自分はいつでも来られますからね。レストランでもバーでも、お店が空いている時は、スタッフとの会話に花を咲かせます」
「気づかいが見えてはいけない。後で振り返って、『あれって自分を気づかってくれていたんだ』と分かるような、さりげない気づかいこそが本当の気づかい」と考えていらっしゃるだけに、サービススタッフからルーティンやマニュアルで仕事をされると「心はどこにあるの?」と思ってしまうそうです。
もう一人、『気をつかっていると思わせないのが最高のサービス』だと教えてくれたあるバーのマスターがいます。もう長いおつきあいになりますが、開業して40年になる店を「ここは私の舞台だと思っています」とおっしゃるように、一輪の薔薇を筆頭に、季節を感じさせる生け花、バカラのクラシカルなグラス、長いカウンターに計算された間接照明、客の好みに合わせた音楽など、まるで映画の世界のようなお店を切り盛りしていらっしゃいます。そこを訪れると、気がつけば酔いしれて、お洒落な会話が弾み出す――。
よく見れば、あれこれ気をつかってくださっているのですが、マスターはそんなことはおくびにも出さず、ただただ優雅な時間が流れてゆく。これって究極の気づかいだと思いませんか?
究極のサービスは、気を遣っていても、それをわからせないということなのです。適当に構って、適度に放っておくことができるのも、おもてなしの上手な店です。
ただし、初対面でも親しくても、会話の内容については、いくつか注意点があります。暗いニュース、政治、宗教、人種、スポーツ(ひいきのチーム自慢など)の話題や愚痴飲み、悪口大会は避けましょう。
多様性があるので、周りの人が同意見だとは限らないこと、違って当たり前のことを話題に出すのはトラブルの原因になり、その場の空気が悪くなります。店の雰囲気も荒れて、必ず気分を害する人が出てきて、全員で楽しい時間を過ごすことができなくなります。他店と比べてここはどうだ、と批評する人もいますが、たとえ褒め言葉であってもNGで、上品な振る舞いとはいえません。
逆に自分の失敗談などをおもしろおかしく話すのは、親近感を持ってもらえるチャンスです。皆が笑える楽しく前向きな話題を心がけましょう。
だからといって、あなたが損をして、マイナスになるような話を自らする必要は全くありませんよ。
また、いい店だと思ったら、一人で3回通って馴染みになることです。店もお客を判断しています。とにかく間を空けずに3回通えば、店も馴染みと認めてくれるはずです。
女性でも、行きつけのお店を一つ二つ作り、常連になることをお勧めします。
例えばバーの常連になれば、店のマスターはあなたのその時の気分を察してくれ、ちょうどいい距離で、話を聞いたり、アドバイスをくれたりすることでしょう。
優秀なバーテンダーは、カウンターを川だと考えるそうです。むやみに川を越えてはいけない、踏み込み過ぎてはいけないし、話を他に漏らすこともしません。
疲れたなと思ったら、少しの時間でも、止まり木感覚でバーに立ち寄って、一杯飲む間、マスターや、バーテンダーと話して帰る。
たったそれだけで、質のいいカウンセラーや、お坊さんと対話したレベルに、癒されることもあるでしょう。
私は1日の仕事の疲れをクールダウンすると同時にそのように、バーを活用しています。
立つ鳥跡を濁さず。長居せず、1、2杯その日の気分のお酒を楽しんで、綺麗な飲み方をするお客でありたいものです。
柘いつか
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