専門家が答えます
睡眠の疑問Q&A
ひと言で「睡眠障害」と言っても、原因やパターンはさまざま。睡眠についての悩みも、生活習慣や体質、年齢によって異なります。ここでは、よく聞くOurAge世代の睡眠の悩みや疑問について、睡眠の専門家である三島和夫先生に解説していただきました。
Q:万年睡眠不足…放っておくとどうなる?
A:さまざまな病気のリスクが高まります
「睡眠が足りていないと、脳や体の疲れは解消されずに蓄積されます。そのため、日中の眠気や倦怠感をはじめ、集中力、記憶力、判断力などの低下が現れます。さらには、ホルモンや自律神経の乱れから、うつ病や肥満、糖尿病、高血圧、脳卒中などのリスクが高まります。また睡眠時間が短い人ほど、アルツハイマー型認知症の原因とされるアミロイドβがたまりやすくなることが判明しています」
Q:週末の寝だめで睡眠負債は解消する?
A:アジア旅行に行ったのと同じ時差ぼけに
「休みの日は、日頃の睡眠不足を解消しようと、起床時間を遅くして、寝だめしている人も少なくないでしょう。しかしこれは体への大きな負担になります。睡眠と覚醒を調節するホルモンの分泌や、自律神経の働きは変わらないのに対し、そこからズレた時間に寝起きをすることで時差ぼけのような状態になります。時差が1〜2時間で、アジア旅行と同レベルの時差ボケに。
毎週末これを繰り返していたら、睡眠不足の解消どころか、知らず知らずのうちにパフォーマンスの低下や、うつ、生活習慣病のリスクを高めることになります」
Q:まとまった睡眠がとれない。こま切れ寝でも大丈夫?
A:30分でも早く寝る工夫を!
「メジャースリープ(深いレム睡眠と浅いノンレム睡眠をひと晩に4~5回繰り返す質のよい眠り)という、脳と体をメンテナンスする質のよい睡眠のためには、ひと晩でノンレム睡眠、レム睡眠の両方をとる必要があります。昼寝や寝だめでは、眠気が消えるだけで、普段の睡眠負債を解消することはできません。平日、どうしてもまとまった睡眠時間がとれない場合には、30分でもいいので早く布団に入り、前日の睡眠不足を少しずつ解消するように、生活習慣を工夫しましょう」
Q:昔のように眠れない…それって年齢のせい?
A:仕方ないことです。神経質に感じないで!
「60代以降になると、夜中に一度も目を覚まさない人はごくわずかです。年齢とともに、就寝中の刺激を遮断する機能が弱くなり、夜中に目が覚めやすくなることがわかっています。目が覚めてもスムーズに眠りに戻れるなら、あまりストレスに感じなくてもいいと思います。疲れているのに眠れない場合は『過覚醒型』の不眠症が疑われますので、一度検査をおすすめします」
秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座教授、日本睡眠学会理事。 睡眠薬の臨床試験ガイドライン、睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者などを歴任
イラスト/東 千夏 構成・原文/高田あさこ