病人のイチバンの特権

誰でも通るプレ更年期に、こうやって様々な選択肢が用意されているとき、自分の信念や、考え方がわかって自分自身が何者かについての勉強になる。ほかの人に改めて話を聞くと、それもまたびっくりするほどさまざまで、その人の信心のバランスがどこらへんにあるかがわかる。

 

 

同じ日本に生まれて、同じ義務教育を受け、似たようなテレビ番組を見て育ってきたはずなのに、心のうちはバラエティに富んでいる。人はさまざまなグラデーションで何かを信じ、何かを信じていない。

 

 

祈祷、まじない、カルマ、インナーチャイルド、最新医療の情報マニア、現代医療万能主義、自分だけは病気にならないという根拠のない選民思想。これが、大病や、事件、事故、災害、親しい者の死などによってより強固なものになったり、一八〇度変わったりする。

 

 

人々の心の中にあるものを知ること。これが、リサーチの醍醐味であり、わたしの仕事の原点だ。

 

 

わたしの母は、原因も治療法もわからない難病にかかり、8年前には意思表示ができなくなった。そしてわたしたち家族は、突然、彼女の命を延命するかの選択を委ねられることになったのである。そのことが生命について、自分はどう考えているかを問い直すきっかけとなっている。

 

 

今のわたしの病気は命にかかわるようなものではないのだが、それはたまたまそうであったに過ぎす、次は延命に関わることかもしれないし、闘うか闘わないかの選択になるかもしれない。そのとき、医療をどう考えるかが、再び問われることになるだろう。

 

 

すべての選択は、その人らしさだ。毎日、わたしたちはさまざまな選択をして暮らしている。チキンかビーフか。オレンジジュースかアップルジュースか。黄色信号で止まるか、アクセルを踏むのか。結婚するのか、やめておくか。

佐々さん_photo

 

「思い煩うな」と自己啓発書は言う。「判断をやめて大いなるものに委ねよ」と宗教者はささやく。でも、どうせなら思い悩める自由を存分に味わいたい。無数の選択の繰り返しと集積がわたしの個性であり人生なのだから。

 

 

選択肢が複数あることの幸福を想う。十分に情報にアクセスできることのありがたさを感じる。医療が受けられること、医師に意見が聞けること、代替医療を勧めてくれる友人がいることに感謝する。理性と合理性は父母の教育のおかげだ。そして今回、新たに学んだことは、考え方が自分とは異なっているとしても、他人の選択を尊重し理解すること、そして、健康でいる時には見えなかった、待合室にいる大勢の人たちを知ったことだ。

 

 

病人の一番の特権は謙虚になれることだ。病を得ることで、もっと賢くなれるはずだということを、わたしは信じていたいと思う。

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