前回は、骨の強さは骨密度に加えて、骨質が大切であることを知りました。今回は、骨質を判断する基準についてみていきます。
強い骨プロジェクト⑫
骨の糖化が原因の骨折は
決して稀なことではない
骨質を判断するマーカーはあるのでしょうか?
「骨コラーゲンの代表的なAGEs※はペントシジンという物質です。また、酸化ストレスを受けると、血液中のホモシステインという物質の濃度が高くなります」
※タンパク質の糖化反応(メイラード反応)によってつくられる生成物
これらの物質が骨質を知る指標になると、斎藤先生たちの研究グループが発表。欧米や日本でも大規模な研究がされた結果、骨粗しょう症は3つのタイプに分けられること、そして、これらが「骨密度も骨質もよい人」と比べて骨折リスクがどれほど上がるかを割り出した結果があります。
① 低骨密度型(3.6倍)。
② 骨質劣化型(1.5倍)。
③ 低骨密度+骨質劣化型(7.2倍)。
「この結果からわかる通り、低骨密度型と骨質劣化型のダブルパンチになると、骨折リスクが非常に高まることが判明しました。しかも、その比率は、①:②:③=5:3:2となり、骨質劣化型が決して珍しいものではないことも明らかになりました」
特に日本人は遺伝的に、骨質を悪くするホモシステインが高くなる体質の人が多いそうなので、積極的に骨質の維持を心がけることが必要です。
次ページで、タイプ別骨折リスクと骨糖化のキーワードをまとめました。
タイプ別骨折リスク
閉経後の日本人女性502人を対象に、骨粗しょう症を3タイプに分け、骨密度も骨質もよい人に比べての骨折リスクを検証。ふたつが重なるとハイリスクになることがわかりました。
骨糖化のキーワード
骨質の劣化は、血液中のホモシステイン値や尿中のペントシジン値が指標に。これらの検査は、現在は骨粗しょう症に対しては保険適用外ですが、近い将来、一般的になりそうです。
ペントシジン
酸化や糖化で劣化した悪玉架橋の主成分。糖尿病や高血圧などの生活習慣病のある人に生じやすい
ですが、健康な人でも加齢などで増えていきます
ホモシステイン
食事からとったタンパク質が代謝される過程で生じる物質で、体内に過剰に増えると活性酸素を発
生し、コラーゲン架橋を悪玉に変えます
次回は、骨を丈夫にする方法をご紹介します。
立体クラフト撮影/中川十内 立体クラフト・カリグラフィ/矢島タカシ 構成・原文/山村浩子