管理栄養士として大手企業社員食堂、病院、保育園に長年勤務。食育、災害食、SDGsに力を注ぎ、2014年に管理栄養士の業務を行う会社を起業。レシピ開発を行うほか、全国で講演・講座・ワークショップを行う。NHK「あさイチ」、日本テレビ「ヒルナンデス! 」「ZIP! 」、TBS「マツコの知らない世界」「王様のブランチ」などテレビ・ラジオに出演多数。缶詰レシピ、レトルトレシピの達人としても活躍中。『からだにおいしい缶詰レシピ(法研)』『体と心がよろこぶ缶詰「健康」レシピ』(清流出版)ほか著書多数。
缶詰は旬の食材を使った、栄養たっぷりの健康食材
今泉:はじめまして。管理栄養士・防災食アドバイザーの今泉マユ子です。
ギリコ:災害対策への意識が高まる昨今。いざというときのために非常食を備えている人も多いようです。
かくいう私もその一人。
自宅の食品棚には、さまざまな種類の缶詰が並んでいるのですが、悩ましいのは、賞味期限切れ前に非常食を入れ替えること。
賞味期限が近づいてきたら、食べて新しいものを補給するというローリングストックを実践したいのですが、缶詰をそのまま食べるのはわびしいし気もするし…と持て余しぎみなんです。
そこで今回は、管理栄養士で防災食アドバイザー、缶詰料理の達人でもある今泉先生に、実際にギリコがストックしている缶詰を使って、簡単にできてしかもおいしい(←ここが特に大事!)缶詰レシピを教えていただきたいということで、我が家に来ていただきました。どうぞ、よろしくお願いいたします。
さっそくですが、我が家の備蓄食材を見てください。
〔上の写真:ギリコ家の備蓄食材。これはほんの一部で、ほかにレトルトカレーやお湯で溶く粉末スープなども大量にあります〕
今泉:うわー、さすが自宅に発電機や蓄電池まで備えているという防災意識の高いギリコさん! たくさん缶詰やレトルトを備蓄していますね。
これらの非常食、普段はどんなふうに消費しているのですか?
ギリコ:それが単に非常食として買って、置きっぱなしにしているだけで、平時に食べようという気持ちは持てなくて。
かと言って捨てる、ということもできなくて悩ましいです。
今泉:缶詰にあまりよい印象をお持ちではないのですね。
ギリコ:はい、実はそうなんです。
今泉:そういう方はけっこう多いみたいです。
「買い物ができないときの手抜き食材」とか「一人暮らし男性の手軽なおつまみ」というような、ちょっとネガティブなイメージでしょうか。
ギリコ:それに、インスタント食品と一緒で、体に悪いような気がしています。
今泉:あー、それ、誤解なんですよ。
長期保存が可能ということで、保存料がたっぷり入っているのではないかとか、高温処理で加工されているから栄養はなくなっているのではないかとか、思っている方も多いですね。
でも、実は、逆なんです!
缶詰は素材を缶に入れて中の空気を抜き、真空の状態で加熱殺菌します。
そして、密封するので、保存料や殺菌剤などを使用する必要がないんです。さらに、真空処理されているので、酸化することもないです。
それと、使用されている食材は、旬の時期にとれた栄養価も高いもの。
それを、産地に近い場所にある工場で、フレッシュなうちに素早く加工処理しているため、栄養の損失が少ないんです。
缶詰の工場は、漁港や畑の近くにあることが多いですね。
それから、魚が骨ごと丸ごと食べられるくらいまで柔らかく加工できるというのも、缶詰ならではです。
ギリコ:知らなかった! 缶詰のイメージが変わりました。
魚缶のDHA・EPAで血液サラサラ&脳活
今泉:ギリコさんのお家には、魚の缶詰のストックが多いですね。
魚はお好きですか?
ギリコ:食べるのは好きなのですが、家ではあまり調理はしないです。
仕事で疲れて帰宅してから調理するには、魚はちょっと面倒ですし、ごみの始末が大変だとか、調理後の生臭いにおいも気になります。家ではあまり魚を調理したくないです。
今泉:そうですかー。魚は認知症予防やアンチエイジング、骨粗しょう症予防などの観点からも、ぜひ積極的に食べていただきたい食材です。
缶詰なら、下処理済みですぐに使えますし、調理後のにおいもほとんど気になりません。
ごみの処理も缶を洗うだけでOKです。
ギリコ:確かに…なんだか簡単にできそう。やる気になってきました!
今泉:魚は肉と同様、良質なタンパク質源。
また、魚に含まれている脂質には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれる脂肪酸が豊富に含まれています。
ギリコ:よく、サプリメントで見かける成分ですね。
今泉:そうですね。EPAは、血液中のコレステロールを低下させて血栓をできにくくし、血液をサラサラにする効果があり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞の予防に役立ちます。
一方、DHAは、善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを下げるほか、脳細胞の成長を促して、脳を活性化し、認知症を予防する効果があるといわれています。
どちらも、健康的な生活を維持するためにとても重要な働きをする成分ですが、体内で十分に作ることができないので、食事等で積極的に摂取する必要のある必須脂肪酸です。
ギリコ:私たち40代、50代のOurAge世代は、脳の老化も気になるし、血管の健康も気になるので「ぜひ魚を積極的に食べたほうがいい」ということはいつも頭にあります。
それが、缶詰を使うことで簡単にできるならうれしいです。
今泉:魚には、不足しがちなビタミンDも豊富に含まれています。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、免疫力にも関与する栄養素なので、ぜひ缶詰をもっと活用して、魚をもっと食べていただきたいですね。
サバとトマトの旨味たっぷり!おしゃれそうめん
ギリコ:魚の栄養は私たちにうれしいこと尽くめなのですね。
では、さっそくレシピを教えてください。
まずは、サバ缶を使ったレシピをお願いできますか?
サバ缶は「健康によい」ということで、何度もブームになっていますが、どうやって食べたらいいのか、イマイチよくわからないんですよね。
今泉:わかりました! では、まずはサバ缶から行きましょう!
ギリコさん。さっそくですが、計量スケールをお借りできますか?
ギリコ:計量スケール? ないです。
いつも料理は目分量で作っているので、いちいちグラムを測って料理することはしてません。
でも、今日はこうして今泉さんに来ていただくのだから、用意しておくべきでした。
今泉:大丈夫、問題ありません。
私は管理栄養士なので、レシピの栄養価計算をするために必ずグラム数を書きますが、普段、家族の料理を作るときはギリコさんと同じようにほぼ目分量です。
この記事内のレシピの数値は参考ということで書きますが、お好みで分量は調整して、自由に作ってみてくださいね。
★サバ缶のトマトそうめん
〔材料(2人分)〕
ゆでたそうめん…2玉(400g)
サバ水煮缶…1缶(200g)
トマトジュース…1本(200ml)
好みでめんつゆ…大さじ1~2
好みでオリーブ油…少々
好みで香り野菜(パクチー、青じそ、パセリなど、そのときあるもの)…適量
〔作り方〕
ボウルに、サバ水煮(缶の汁ごと)、トマトジュース、めんつゆを入れて混ぜ、ふたつの器に等分に分けて、食べやすい大きさに切った香り野菜をのせる。別の器にゆでたそうめんを盛る。
ギリコ:えっ、これで出来上がりですか?
すごい簡単…。
今泉:そうめんは、乾麺をゆでてもよいですが、私はゆでてあるタイプをよく使います。
お皿に盛るだけでよいので、とっても便利ですよ。
ギリコ:熱い日にお湯を沸かしてそうめんをゆでるのって、かなりやりたくないので、ゆでてあるタイプであれば、冷蔵庫から出してすぐ食べられて便利ですね。
今泉:まずは、サバ缶を開けて、ボウルに入れます。
ほら、見て!
まるまる太った上等なサバが入っていますよ!
そこに、トマトジュースを注ぎ入れます。
めんつゆもお好みで加えてください。
あとはサバの身をほぐしながら混ぜればOKです。
今泉:トマトジュースはメーカーによって結構、状態が違います。
今回、ギリコさんのお家にあったトマトジュースはサラサラタイプでしたので、水を加えませんでしたが、もっとドロドロしたタイプの場合は水を少し(200mlのトマトジュースに対して1/2カップ程度)入れるとよいです。
また、サバ缶を今回、1缶200gのものを使用しましたが、もう少し小容量のものを使用した場合は、水やトマトジュースの量を増やして、量を調整してみてください!
香り野菜は、パクチー、青じそ、パセリなどお好みのものを。たっぷりのせるとおいしいです。
缶詰を使うからこそ、あっという間に完成、そしておいしい!
ギリコ:すごい! 所要時間わずか1分45秒です。これなら、暑い日も手早く作れてうれしいです。
今泉:トマトには体を酸化から守ってくれる「リコピン」が含まれているので、美肌や老化予防にもぜひ積極的に食べましょう。トマトジュースを常備しておくと、夏バテしているときにもさっと栄養がとれていいです。
ギリコ:そういえば、調味料はめんつゆ以外、何も足していませんよね?
今泉:それもサバ缶の魅力のひとつ。サバに旨味がしっかりあるので、ほかの調味料は不要です。お好みでオリーブオイルをたらすと、風味がよくなるのでおすすめです。
ギリコ:こんなに簡単にできるなら、疲れて会社から帰ってきてもすぐに作れて助かります! しかもさっぱりしていて、本当に本当においしい!
今泉:ぜひお試しください!
取材・文/瀬戸由美子
★今泉マユ子さんのオフィシャルブログ「レトルトの女王 缶詰の達人♪」はこちら!
https://ameblo.jp/gogoshokuiku/