今回はMyAge/OurAge世代が特に注目すべき骨盤底筋のお話。骨盤まわりと向き合って20年のkyo先生、数少ない骨盤底筋専門の理学療法士の田舎中先生、二人の対談でお届けします!
「骨盤底筋が原因で起こる尿もれや頻尿…
それは世の中が便利になったせいですよね」
「床の雑巾がけ、かまどでフーフー。昔は家事でも
骨盤底筋を無意識にものすごく使いましたから」
(写真右)
kyoさん
kyo
「骨盤セルフ調整『ペルヴィスワーク』が人気です!」の記事にも登場した、ボディワークプロデューサーのkyo先生。骨盤底筋のことならおまかせあれ!
(写真左)
田舎中真由美さん
Mayumi Tayanaka
1973年生まれ。理学療法士。腰痛、産後の骨盤周囲の痛み(恥骨痛、仙腸関節痛など)、尿失禁や骨盤臓器脱など骨盤底筋群のトラブルに対する骨盤調整、運動指導が専門。2017年9月、骨盤底筋に関する翻訳本を出版(『産後リハにおける腹部・骨盤へのアプローチ 腟・会陰部のケア、尿失禁、骨盤臓器脱、会陰・骨盤痛の予防のためのエクササイズ』 田舎中真由美 訳 ¥4,000/丸善出版)。フィジオセンター所属。
http://www.physiocenter.jp
骨盤底筋を意識するだけで
日本人女性は変わる!?
kyo 骨盤底筋の場所がわからない人が意外と多いんです。きちんと意識できていないとだんだん使わなくなり、知らないうちに衰える。それでスタイルがくずれたり尿トラブルが起きたり…。「小股が切れ上がった」とは足首の締まりを指すと同時に、骨盤底筋の強さを表す言葉だと思います。
田舎中 私は尿もれや頻尿に悩む人をよく見ているんですが、骨盤底筋も筋肉のひとつだという意識を持つだけでずいぶん違ってきますね。
kyo 実は日常的に誰でも使ってはいるんですよね、排泄という行為で。
田舎中 そうなんですが、排泄での使い方を間違っている人が多いです。排便の仕方なんて、誰にも習わずに小さい頃からそのままきてしまっていますから。例えば「うん」っと力んで力が入っている状態で出そうとする。つまり骨盤底筋をリラックスさせないで便を押し出す。それがまさに使い方の間違いで、骨盤底筋をわざわざ硬くして自分で便秘を呼んでしまう。そして便秘で便が出ないからいきむ…の悪循環。
kyo で、薬や病院に走ってしまう。
田舎中 薬を使うでも食事の改善でもなく、実は便秘も骨盤底筋だけで改善することが多いんですよね。
kyo 女性が出産前に骨盤底筋の意識がないというのも問題ですね。
田舎中 私はちょうど今、産婦人科で1カ月健診のお母さんの体のチェックをやらせてもらっているんです。腹筋や骨盤の状態、そしてまさに尿もれの状態…。産後にそれらを正しくチェックして、リハビリトレーニングをしてくれる施設、日本ではまだ少ないです。
kyo フランスをはじめ、ヨーロッパでは産後の骨盤底筋ケアは当たり前ですものね。
田舎中 ママたちに「骨盤底筋のエクササイズ、習ったことありますよね」と聞いてもだめで。出産入院時に書いたものが配られていたと思うんです。でもその意識がないから忘れていて「言われたかもしれません」くらいの感じ。まったく重要視されていない。
kyo 日本では秘め事的な感じで、人前では言わないというのもありますよね。あと、日本女性はもともと骨盤底筋が衰えるなんていう人が少なかったんだと思います、昔は。着物の文化だから、骨盤底筋がしっかりしていて生理のときに「経血コントロール」ができていたんですよ。
田舎中 下着は腰巻きだけ。生理用品なんてないですからね。
kyo ある程度経血をためておいて、トイレに行ったときに出す。昔はみんなそれができていたそうです。今は、垂れ流しじゃないですか、ある意味。
田舎中 確かに垂れ流し。吸収パッドにまかせていて、骨盤底筋は使わなくなっていますから。年を重ねてトラブルが起きるのは世の中が便利になったせい、と言っても過言じゃないです。
kyo そう、昔の人のように家事でも骨盤底筋を使わない。拭き掃除や洗濯でも立ったり座ったり、かまどでフーフー。みんな家電まかせになったのも骨盤底筋を退化させる原因ですよね。
次のページでは、骨盤底筋の役割とトラブルの原因を具体的にご紹介。
骨盤底筋の役割とトラブルの原因
≪骨盤底筋の役割≫
◆内臓や生殖器(特に膀胱、直腸、子宮)を支える
◆排尿のコントロール
◆排便のコントロール
◆生理の経血のコントロール
◆出産時に産道を伸縮させる
◆体幹を安定させる
⇓
≪骨盤底筋の機能が低下する原因≫
◆加齢
◆妊娠・出産
◆間違った使い方
◆便秘(排便でのいきみ)
◆女性ホルモン減少
◆重い荷物を日常的に持つ
◆強い咳を繰り返す
⇓
≪骨盤底筋の機能が低下して起こるトラブル≫
◆尿もれ・頻尿
◆ウエストのくびれがなくなる
◆下腹部がポッコリ出る
◆ヒップが下がる
◆太ももが太くなる
◆血流やリンパの流れが悪くなる
◆姿勢が悪くなる
◆子宮脱・臓器脱
次回もkyoさんと田舎中真由美さんの対談をご紹介します。
撮影/藤沢由加 ヘア&メイク/渡辺真由美 イラスト/内藤しなこ 構成・原文/蓮見則子