直腸性便秘が悪化すると、骨盤臓器脱(骨盤底疾患)を招く危険性も! 直腸性便秘と関連するトラブルについて聞きました。
教えてくれたのは…
山名哲郎さん Tetsuo Yamana
松峯寿美さん Hisami Matsumine
怖い理由 その2 直腸脱 RECTAL PROLAPSE
強くいきむ習慣が直腸重積や直腸脱を招くリスクも
直腸性便秘がもとで女性に起こりやすいのは〝直腸重積 (じゅうせき) 〟と〝直腸脱〟 などのトラブル。「便が出ないから」と強くいきむ習慣によって、直腸の出口の近くで直腸の壁が内腔にめり込んで重なる〝重積〟が起こります。これは、骨盤底筋や周囲の支持組織の支え が衰えたことによって、直腸自体が下がってしまうことが原因。いきんでも肛門がなかなか開かないため、腸の中に腸がめり込んでしまうのです。
しかも、直腸重積が重症化すると、体内で重積した部分が肛門の外に飛び出す直腸脱を招く心配があります。いきめばいきむほど、緩んだ骨盤底筋にさらに負荷がかかり、直腸が下がってきてしまうのです。
直腸重積がある人の場合、「便がスムーズに出ない」「残便感がある」「肛門のあたりで引っかかる」というのがおもな訴え。直腸脱を予防するためには、便秘薬で排便をコントロールしつつ、「強くいきまないように」と医師から指導されます。
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直腸脱は70代以降に多い骨盤底疾患
直腸重積が進行して直腸脱になると、直腸が肛門から出たり入ったりするのを繰り返したり、10㎝くらい出たままになってしまう場合もあります。「直腸脱は70代以降の女性に多い骨盤底疾患。40~50代の女性が発症するのはまれですが、長年の便秘歴がトラブルを招く可能性もあるということを知っておきましょう」(山名先生)
慢性的な便秘に悩んでいる場合、市販薬に頼っても問題はありませんが、腸を刺激するタイプの薬を常用すると体が慣れてしまい、薬の使用量が増えてしまいがち。「市販薬を購入する場合は、便を軟らかくする非刺激性の酸化マグネシウムを選びましょう。そして、市販薬が効かない人は、便秘をこじらせないためにも早めに受診してほしいです」(山名先生)
直腸重積は、腸が腸の中にめり込んだ状態 /強くいきむのを繰り返すうち、腸の内腔に腸がはまり込んだ状態に。腸の壁が重なった部分が狭くなるため、便が通過できません。いきんでも肛門が開かず、直腸自体が下に下がってしまいます
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症状が進むと直腸が肛門から脱出する直腸脱に!
直腸重積が重症化すると、骨盤底筋や肛門括約筋に負荷がかかり、直腸の位置がさらに下がってしまいます。便を出そうと強くいきむことで、便ではなく肛門から直腸が脱出してしまうことが!
【便秘と大腸がんは関係あるの?】
大腸がんは、今や女性のがんの罹患率の第2位(厚生労働省の2016年度人口動態統計)。便秘そのものが大腸がんの原因になることはありませんが、逆に大腸がんが便秘を引き起こすことがあります。特に肛門に近い直腸にがんができると、便が出にくくなり、排便が不規則になるケースが多いのです。もともと規則正しい排便リズムの人が「数カ月前から便秘になった」と受診した場合、医師は大腸内視鏡検査で、がんやポリープの有無をチェックします。もしも5㎜以上のポリープが見つかったときは、がん化を予防するために切除するのが一般的です。
イラスト/内藤しなこ 取材・原文/大石久恵