医療ジャーナリスト 増田美加さんの更年期女性の医療知識 アップデート講座
この連載では、MyAge/OurAge世代の女性が知っておきたい最新の医療知識をご紹介していきます。教えてくださるのは、医療ジャーナリスト の増田美加さんです。
腟萎縮のレーザー治療が女性のQOLを上げる?(後編)
取材でご協力いただいたのは
八田真理子さん Mariko Hatta
乳がんを経験していると治療の第一選択肢が使えない!
「更年期で一度、腟や外陰部が萎縮すると自然に元に戻ることはありません。市販薬の軟膏を長期間にわたって使い続け、赤く腫れて難治性の腟外陰萎縮症になってしまう人もいます」と更年期女性の腟萎縮症状を数多く診察している、婦人科医師の八田真理子先生は言います。
日本産科婦人科学会のガイドラインによると、「腟萎縮症状の治療の第一選択はエストロゲン腟錠の局所投与。次に、全身にエストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)。性交痛には潤滑ゼリー」とされています。ほかに、骨盤底筋トレーナーに教わる骨盤底筋トレーニングも推奨されています。
「エストロゲン腟錠が婦人科で最も多く行われている治療法です。しかし症状が進んでいる人は、腟錠を継続的に入れ続けることが必要に。また全身投与のHRTだけでは、腟の潤いを取り戻せない人もいます」と八田先生。
また、私のような乳がん経験者はエストロゲンなどのホルモン剤はすべて禁忌。治療として使うことができません。今、乳がんは日本女性全年齢で11人に1人。更年期世代だけを見ればさらにその割合が高くなっています。
次のページに続きます。
腟萎縮の不快症状に炭酸ガスレーザーによる最新治療が登場
そこで登場したのが、顔のリフトアップやたるみ改善に使われている炭酸ガスフラクショナルレーザーを、腟と外陰部に照射する新たな治療法。腟萎縮を改善し、腟萎縮による不快症状(乾燥、かゆみ、灼熱感、におい、緩み、性交痛、頻尿、尿もれ)を改善する外陰部と腟部への最新レーザー再生術「モナリザタッチR」です。腟、外陰部の線維芽細胞の活性化、コラーゲン線維新生、血流改善、抗酸化力の向上など、粘膜組織の代謝能力アップが確認されています。
私のように乳がん既往で腟萎縮があるけれどホルモン補充ができない人、外陰部のシワやたるみが気になる人にも有効。さっそく八田先生のクリニックでチャレンジしてみました。治療は、麻酔クリームを塗り、約20分。その後、腟内に専用プローブを挿入し360度レーザー照射(約1分)、プローブを替えて外陰部にもレーザー照射(約3~5分)。その後、軟膏を塗り保冷剤で患部を冷やし、すべての工程は10 分で終了。そのまま帰宅し、3時間冷却。その日は湯船禁止でシャワーのみ。
麻酔クリームを塗っても、私は照射中そこそこ痛かった。しかし、ビフォーアフターを八田先生に頼んで写真に撮ってもらいましたが、驚くほどふっくら! 痛みを忘れました。 そして今回、尿もれに悩むAさんにも治療を体験してもらい、その感想を聞いています(詳細は前編を参照)。
即効性もありますが、治療1カ月で効果が上がり、さらに12カ月後に効果実感が高まるという評価検証があるので、今後が楽しみ。回数を重ねるとさらに効果が高い、というデータも。効果の持続は2回行って8~10カ月程度。永久に効果が続くわけではなくお肌のメンテナンスと同様に定期的ケアが大切。やってみて、これは婦人科で行うべき治療と思いました。
レーザー治療前に、子宮や卵巣に病気や異常がないことを確認し、子宮がん検診のいい機会にもなります。更年期以降の人生を我慢して過ごすのではなく、QOLを上げて積極的な人生を送りたい。膣外陰部は女性の“コア”。ケアをしない手はありません。
【腟レーザー治療が受けられる医療機関】
婦人科検診も同時に受ける機会になるよう、婦人科クリニックで受けたい。皮膚科ほかで受ける場合は、婦人科で子宮や卵巣に異常がないかの診察を受けてから治療することをおすすめします。腟レーザー治療「モナリザタッチ®」が受けられる全国の医療機関リストはこちらのサイトから。
イラスト/堀川理万子