内転筋が硬いと、骨盤底筋を含めたお腹のインナーマッスルの
動きが悪くなり、ぽっこり下腹や尿もれの原因に
加齢とともに起こる体型のくずれでも最初に感じやすいのが、下腹がぽっこり出てくること。その原因に大きくかかわっているのが内転筋の衰えなのだとか。
「内転筋は、股関節の付け根あたりから太ももの内側、膝の内側にかけてつながる筋肉。脚を閉じたり、内側に寄せたりするときに使われますが、日常生活ではこの動きをあまりすることがないので、使われずに硬くなっている人が多いです。つまり内転筋は、使われずにさぼっている『さぼり筋』です。
内転筋は実は、お腹の深部のインナーマッスルや横隔膜にもつながっていて、内転筋が使われず硬くなった状態だと、これらの筋肉の動きも悪くなってしまいます。その結果、下腹がぽっこりと出てしまい、全身の体型のくずれを招く引き金になるのです」(KAORUさん)
さらに、内転筋の衰えは尿もれの原因にも…。
「内転筋が硬いと、骨盤内臓器を下から支える骨盤底筋の動きも悪くなって衰えてしまい、尿道を締める力が弱まってしまいます。そのため、咳やくしゃみをした瞬間など、ちょっとしたタイミングに尿もれしやすくなるのです」
では、こんな状態を改善するには?
「まずは硬くなっている内転筋をほぐしてから、内転筋のストレッチをして伸ばし、最後に内転筋を強化するトレーニングをします。それに加えて、骨盤底筋を緩めるメソッドも取り入れると、動きがよくなって尿もれの予防・改善にもつながります」
以下がKAORUさんおすすめの3STEPの「ゆる筋トレ」。
STEP1 「ほぐす」
内転筋ほぐし
① 体の右側を下にして寝て、右腕は上に伸ばし、左脚を軽く曲げて内ももにフォームローラーを当てます。
※フォームローラーは、筋膜リリース用のローラーならなんでもOK。ない場合は、細長いステンレスボトルなどにバスタオルを巻いて円柱状にして使ってもOK。
② 左腰を前に押し出しながら床に伏せるように動くと、フォームローラーがゴロゴロと内ももの付け根から膝方向に動きます。上から下までまんべんなく刺激してほぐしましょう。ほぐれるまで行って。終わったら反対側も同様に。
STEP2 「伸ばす」
内転筋のストレッチ
① よつばいになって、ひじから下を床につけて手を組み、両脚を股関節からなるべく大きく開き、足先を外に向けます。
② そのまま坐骨を突き出すイメージで、体を後ろに引きます。体を床と平行に保ったまま引きましょう。①②を5回。
背中が丸くなってしまうと内転筋が伸びにくいのでNG。体が床と平行になるように保ったまま体を引きましょう。
STEP3 「強化する」
内転筋のトレーニング
① 体の右側を下にして寝て、右腕は真っすぐ上に伸ばし、両脚はそろえて、左手は体の前に置いて支えます。このときお尻を締めて体を一直線にし、床と垂直になるようにしましょう。
② 体を床と垂直に保って、お尻を締めたまま左脚を遠くに伸ばすように上げます。脚は高く上げるのでなく、腰幅程度に上げればOK。
③ 次に、右脚も内ももから伸ばすように上げて左脚とそろえます。お尻の力が抜けていると脚が上がらないので、しっかり力を入れましょう。
④ 最後に両脚を下ろします。①〜④の動きを10回。終わったら、今度は体の左側を下にして同様に行って。
尿もれの予防・改善にはこれもプラス!
骨盤底筋緩め
椅子に座ってお尻の穴の少し前のあたりに、テニスボールなど硬めのボールを当てます。手を座面において体を支えてそのまま10秒座ればOK。これだけで骨盤底筋が緩んで動きやすくなります。これを行ったあとに腟を締める動きをすると、効果的に骨盤底筋が鍛えられます。
お尻の穴の少し前、腟口のあるあたりに当てましょう。
この「ゆる筋トレ」をこまめに実践して、体型のくずれと、尿もれを防ぎましょう。
【教えていただいた方】
1962年生まれ。アプロ主宰。指導歴40年。 “姿勢で人生を変える”をテーマに指導を行う。姿勢に関する分析をホリスティックに行う独自のメソッドは、多くのファッション誌・フィットネス情報誌で紹介されている。自分の姿勢の現在の状態を把握し、ウェルネスコンサルティングが受けられる「姿勢分析」メニューが人気。自身、還暦とは思えないウェルネスな姿勢美は、まさに日々のエクササイズの賜物。近年、スタジオワークのかたわら、後進の指導や著作活動、オンライングループレッスンやイベントを通して、多くの人たちにそのメソッドを発信中。著書に『テニスボールダイエット』(幻冬舎)、『自分で整体ストラップ』(講談社)、『テニスボールでほぐす!のばす!やせる!』(扶桑社)、『クッションピラティス 内ももを締めれば勝手にやせる!』(幻冬舎)など。
撮影/藤澤由加 ヘア&メイク/田代ゆかり(Happ’s) 取材・文/和田美穂