股関節の可動域を取り戻して、垂れ尻とむくみ脚を克服
ヒップの下垂が加速化した、長年の足・脚のむくみに悩まされている、または腰痛や膝痛を抱えている…。40歳を過ぎた頃から、そんな悩みが増えてきます。
「これもリンパの流れが滞る原因をそのままにしている結果だといえます。
全身に張り巡らされているリンパの働きは、老廃物を集めて運ぶ下水道に似ています。そのリンパ管が集まるリンパ節は、外部からの細菌やウィルスなどの病原体や老廃物を浄化する浄水場のような役割を果たしています。
このリンパには、血液の流れを促す心臓のようなポンプ機能がなく、末端の毛細リンパは自動的には流れてはくれません※。それを担うのが筋肉の動きです。
※太いリンパ管は平滑筋の収縮で微弱ですが自動的に流れます。
よく『リンパを流す』という言い方をしますが、リンパは本来、日常生活で体を動かしてさえいれば、自然に流れるものです※。ですから、リンパの流れをスムーズにするには、『リンパが流れる体を取り戻す』ことが重要です」(木村友泉さん)
※例外として、がんの転移などでリンパ節を切除している場合は自然に流れないので、リンパマッサージやリンパドレナージなどの外力が必要になります。
※詳しくは第1回参照
「下半身がよくむくむという人は、股関節の可動域が狭い傾向があります。
股関節の形状は球関節で、太ももの大腿骨の丸い頭の部分(大腿骨頭)が骨盤の受け皿(寛骨臼)にはまり込む構造をしています。これにより前後左右に動き、広い可動域が確保されているのです。
ところが長時間のデスクワークなどで、股関節を動かさないでいると、脚の動きをスムーズにする滑液も出ず、太ももや骨盤まわりの筋肉や靭帯が硬くなってしまいます。特に股関節まわりには、リンパ節が集まっているので、ここが詰まるとリンパ液がスムーズに流れてくれません」
足をフルフルと揺らすことで股関節を緩めます
では、股関節を緩めるには、どのような方法が効果的なのでしょうか?
「それは片足立ちをして足先をフルフルと揺らすことです。上下に細かく揺らすことで、太ももや骨盤まわりの筋肉が緩み、その振動は大腰筋→横隔膜へと伝わります。これにより、下半身(横隔膜より下部分)を効果的に緩めることができます」
【1】
5~10㎝程度の台の上(もしくは階段)に左足で立ちます。台がない場合は床に立つのでもOK。体が安定しない場合は、椅子の背もたれや壁、階段で行う場合は手すりなどに軽く手を置いて、倒れないように体を軽く支えると安全です。
※写真の椅子のキャスターは動かないようにロックしています。
【2】
右足を足の縦幅分くらい前に出します。出した足は床から浮いた状態です。上体はそのまま真っすぐに保ち、足先を上下に細かくフルフルと揺らします。脚の骨に振動が伝わることが大切です。これを4秒ほど続けます。
【3】
続いて、右足を斜め45度くらい前に出し、同様に足先を上下に細かくフルフルと揺らします。これを4秒ほど続けます。
【4】
右足を真横に開いて、同様に足先を上下に細かくフルフルと揺らします。これを4秒ほど続けます。
【5】
右足を斜め45度くらい後ろに引き、同様に足先を上下に細かくフルフルと揺らします。これを4秒ほど続けます。
【6】
最後に右足を真後ろに引き、同様に足先を上下左右に細かくフルフルと揺らします。これを4秒ほど続けます。
【7】
左足をひと通り行ったら、足を変えて、左足を同様にフルフルと揺らします。これを1セットとして、1日1~3セット行います。
【これはNG】
ポイントは膝とつま先が同じ方向を向いていることが大切です。膝が内側に向いて内股のようになっていたり、足先が外を向いて外股になっていると、膝を痛めてしまうので注意が必要です。
「お風呂上がりなどの一日の終わりのリラックスタイムに行うといいでしょう。下半身を緩めることで、リンパが自然に流れる体に導きます。足・脚のむくみが解消して、ヒップアップにも役立ちます」
【教えていただいた方】
LHJ(Life &Health Joy)代表。薬剤師として勤務するかたわら、リンパケアのインストラクターに。体に負担がなく、効果的な美容・健康法であるリンパケアの普及に取り組んでいる。テレビ、ラジオ、講演などで活躍。著書に『60歳からのリンパケア入門』(宝島社)、『1日10分でどんどん若返る! 一生使える若返りリンパケア』(三空出版)など多数。
撮影/フルフォード海 イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子