美しい姿勢でリンパの通り道を確保する
猫背、反り腰、巻き肩、ぽっこりお腹、垂れ尻、そんなスタイルの悪さが、40歳を過ぎた頃から急速に悪化している気がする…という声をよく聞きます。
「これらは悪い姿勢を続けることで、リンパの流れが滞ることが原因のひとつと考えられます。
全身に張り巡らされているリンパの働きは、老廃物を集めて運ぶ下水道に似ています。そのリンパ管が集まるリンパ節は、外部からの細菌やウィルスなどの病原体や老廃物を浄化する浄水場のような役割を果たしています。
このリンパ管には、血液を送り出す心臓のようなポンプ機能がなく、末端の毛細リンパは自動的に流れてはくれません※。それを担うのが筋肉の動きです。
※太いリンパ管は平滑筋の収縮で微弱ですが自動的に流れます。
よく『リンパを流す』という言い方をしますが、リンパは本来、日常生活で体を動かしてさえいれば、自然に流れるものです※。ですから、リンパの流れをスムーズにするには、『リンパが流れる体を取り戻す』ことが重要です」(木村友泉さん)
※例外として、がんの転移などでリンパ節を切除した場合は、自然に流れないのでリンパマッサージやリンパドレナージなどの外力が必要になります。
※詳しくは第1回参照。
「私たちの体は骨と筋肉によって支えられていて、その中に3つの腔(くう/体内の空間)、①「口腔」、②「胸腔」、③「腹腔」があります。
①口腔/口を中心にした鼻から首にかけて
②胸腔/肩から横隔膜にかけて、肋骨の内側の心臓や肺がある部分
③腹腔/横隔膜から鼠径部(そけいぶ)にかけて、胃、腸、腎臓、肝臓、膀胱、子宮などがある部分
「美しい姿勢を保つためには、この3つの腔を円筒形に保つことが大切です。そのためには体幹がしっかりしている必要があります。
しかしながら、頭部が体重の約10%を占めるほど重く、体幹の筋肉が弱ってくると、この姿勢を支えられなくなります。やがて、口腔(首)が前に傾いたストレートネックや胸腔がつぶれて丸くなる猫背、腹腔が前に出っ張ったぽっこりお腹などになっていきます。いわゆる悪い姿勢ですね。腔の断面積が小さくなり、内臓の圧迫やむくみの原因になります」
【よい姿勢を保つPOINT】
①口腔/耳の後ろから鎖骨に向かって伸びている胸鎖乳突筋を柔軟に保つ。
②胸腔/体の前部分の筋肉(腹筋など)を意識して、巻き肩や猫背にならないように気をつける。
③腹腔/骨盤を立てるように意識して、お腹が前につき出ないように気をつける。
「体幹おじぎ」あなたはしっかりできる?
「よい姿勢を保つためには、体幹を鍛える必要があるのですが、とても効果的なのが『おじぎ』です。ここで実際におじぎをしてみてください。背中を丸めていませんか?
正しいおじぎは日本古来の方法で、上半身は真っすぐに保ったまま、股関節から折り曲げるようにします。これを私は『体幹おじぎ』と呼んでいます」
【1】
3つの腔を真っすぐに積み上げて立ちます。
【2】
3つの腔を真っすぐに保ったまま、股関節から体を折り曲げて、4秒かけてゆっくりとおじぎをし、8秒数えながら元に戻します。両手は自然に膝にそわせます。これを数回行います。
【POINT】
①背中と首を丸めずに真っすぐなまま
②胸腔と口腔も真っすぐなまま
③膝を曲げない
④股関節からゆっくり倒す
【これはNG】
首が前に出て、背中が丸まり、膝が曲がってはだめです。
「簡単に見えますが、実際にやってみてください。体幹がしっかりしていないと、この姿勢を保ったままおじぎをするのは結構きついはずです。イメージは着物を着た旅館の女将のおじぎ。
これを気がついたときに、1日数回行ってみてください。体幹が鍛えられて、リンパがスムーズに流れるようになります」
【教えていただいた方】
LHJ(Life &Health Joy)代表。薬剤師として勤務するかたわら、リンパケアのインストラクターに。体に負担がなく、効果的な美容・健康法であるリンパケアの普及に取り組んでいる。テレビ、ラジオ、講演などで活躍。著書に『60歳からのリンパケア入門』(宝島社)、『1日10分でどんどん若返る! 一生使える若返りリンパケア』(三空出版)など多数。
撮影/フルフォード海 取材・文/山村浩子