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皮膚の乾燥トラブル、カサつきや粉ふきも漢方薬で治せる?【西洋医学×漢方医学のスペシャリスト、今津嘉宏先生が教えます】

年齢を重ねるにつれて気になってくるのが肌の乾燥。冬は乾燥がますます進んで、かゆみや粉ふきを招くことも。そんな乾燥肌も、実は漢方薬で改善可能なのだそう。そこで、どんな漢方薬がどのように効くのか、漢方医学に精通する医師、「芝大門 いまづ クリニック」院長の今津嘉宏先生に教えていただきました!

漢方薬は、皮膚の乾燥トラブルにも効果があります。
特に冬に気になったり、悪化しやすい肌のカサつきや粉ふき。
なかなか治らない場合は、漢方薬も選択肢に
 

肌の乾燥を気にする女性のイメージ 5-1

水分や皮脂の分泌量の減少や、生まれ育った地域、食事、季節など、「乾燥肌」の原因はさまざま

年齢を重ねると、肌の水分や皮脂の分泌量が減ってくる影響などで、肌が乾燥しやすくなるものですが、空気が乾燥する冬は、いっそう肌のカサつきが深刻化。

 

まずは、そんな乾燥肌について、今津先生に伺いました。

 

「肌が乾燥しやすいかどうかは、さまざまな要因で変わります。

 

人は生まれ育った地域や環境によって、2~3歳くらいまでに汗腺の数が決まると言われています。汗を出す“汗腺”の数は人によって異なり、もともと汗腺が少ない人のほうが乾燥しやすくなる傾向があります。

 

また、食事の内容や季節によっても乾燥しやすくなることもありますし、アトピー性皮膚炎の人はもともと乾燥しやすい傾向があるなど、肌の乾燥の原因はさまざまです。

 

肌が乾燥すると、旱魃(かんばつ)のように肌にひび割れができ、すると肌が衣服などによって毛羽立ってしまい、それがかゆみ刺激となります。

 

そんなときに皮膚に爪を立ててかいてしまうと、表皮だけでなく、皮膚の奥の真皮が傷つき、紅(あか)みや出血の原因に。こうなると傷あとが残り、皮膚が厚みを帯びて、シミになってしまう場合もあります」(今津嘉宏先生)

体がカサカサ、かいてしまう

まずは保湿することが大事

「こんな事態を防ぐためにも、まずは簡単な方法で保湿をしましょう。

 

おすすめは、ワセリンでの保湿です。

ワセリンは、いろいろな外用薬の基剤となっていますし、価格も安いので保湿剤としてうまく取り入れましょう。

 

ただし、ワセリンは油なので、そのまま塗るとべたつきます。

使うときはシャワーやお風呂に入って、まだ肌に水滴がついている状態で塗るのがポイントです。肌の上でワセリンをクリーム状にすることで、しっかりと肌になじんで保湿されますよ」

 

女性ホルモンの変化による肌の乾燥には、駆瘀血剤(くおけつざい)が用いられることが多い

そんな乾燥肌は漢方薬でも改善できるそうですが、具体的にどんな漢方薬が用いられるのでしょうか?

 

「女性ホルモンの変化からくる皮膚トラブルに使われるのが、駆瘀血剤と呼ばれる漢方薬です。

 

駆瘀血剤とは、瘀血(おけつ)〈血(けつ)が停滞、あるいは偏在した状態〉を改善する漢方薬のことで、肌の潤いを増す働きがあります。

微小な血管の循環を改善して、皮膚の新陳代謝を調節し、乾燥した肌を守ってくれるのです。

 

そんな駆瘀血剤の中心となる漢方薬が、四物湯(しもつとう)です。

四物湯は、血を補ったり、血の巡りをよくしたりする薬効をもつ4つの生薬、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、川芎(せんきゅう)、地黄(じおう)で構成されています。

血を補って巡りをよくし、肌の保水力を回復させるので、乾燥肌の改善に効果的なのです。

 

駆瘀血剤には、当帰飲子(とうきいんし)温清飲(うんせいいん)などもあり、これらを用いることもあります。

 

また、この連載の第3回で更年期症状を取り上げたときにも紹介した、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)も駆瘀血剤で、これらを用いることもあります。

 

乾燥肌でも、月経周期に伴って肌の状態が変化したり、加齢による肌の老化などが関係している場合に、これらの漢方薬が用いられます。

 

それから、もうひとつ乾燥肌に用いることが多いのは、肌の寒熱(かんねつ)を調節する作用を持つ黄連解毒湯(おうれんげどくとう)です。

肌の温度が高くなると、水分が蒸発して乾燥してしまいます。温度が高くなった肌は、いつもより紅(あか)くなっています。中には、ホットフラッシュとして自覚する場合もあります。黄連解毒湯には、解熱作用があるので、肌の温度上昇による乾燥に効果があります」

服の上から肌のカサカサを気にしている

■乾燥肌に用いられる主な漢方薬

上で挙げた、それぞれの漢方薬の主な効能は、下記のとおりです。

 

●四物湯

皮膚の乾燥や、顔面の色素沈着、唇の暗赤色などといった瘀血の症状や、集中力低下、不眠、眼精疲労、抜け毛など、血虚(血の不足)の症状があることが選択のヒントになります。

皮膚のトラブルでは、皮膚の乾燥、皮膚掻痒症(そうようしょう)、しもやけなどのほか、月経不順、不妊症などの婦人科疾患に用いることも多い。

 

●当帰飲子

四物湯をベースにした漢方薬。

皮膚の乾燥や、慢性湿疹(分泌物が少ないもの)、かゆみ、湿疹、皮膚掻痒症、慢性蕁麻疹(じんましん)、尋常性乾癬(かんせん)、皮膚炎、アトピー性皮膚炎などに用いることが多い。

 

●温清飲

四物湯と黄連解毒湯(下記参照)を合わせたものが温清飲。

皮膚トラブルでは、皮膚の乾燥、アトピー性皮膚炎、湿疹、皮膚掻痒症、蕁麻疹、皮膚炎、酒皶(しゅさ)(赤ら顔)などに用いられます。

ほかに、動悸、不眠、神経症、消化器疾患、更年期障害による高血圧、のぼせ、顔面潮紅(ちょうこう)、情緒不安定などのほか、脳出血、眼出血、血尿など出血疾患にも用いられます。

 

●当帰芍薬散

気血水のうちの「血」の異常に用いる四物湯と、「水」の異常に用いる五苓散(ごれいさん)を含む漢方薬。

女性ホルモンの変化による皮膚のトラブルに用いられます。

冷えやむくみがあることが選択のヒントになります。

皮膚の乾燥や、皮膚の色ツヤがないなどの皮膚トラブルのほか、月経不順や月経困難症、月経痛、月経前症候群、更年期障害などの婦人科系の不調に用いられることが多い。

そのほか、頭痛、めまい、肩こり、貧血、倦怠感、動悸、耳鳴り、下腹部痛などに用いることも。

 

●加味逍遙散

女性ホルモンの変化による皮膚のトラブルに用いられます。

肩こり、疲労、精神神経症状があることが選択のヒントになります。

皮膚症状では、乾燥や皮膚に色ツヤがないなどの症状に用いられます。

ほかに、憂鬱感、イライラ、怒りっぽい、頭がボーっとする、のぼせ感、目の疲れ、四肢のしびれ、動悸、眠りが浅い、食欲不振、倦怠感、むくみなどのほか、月経不順や月経困難症、月経痛、更年期障害、不妊症などの婦人科系の不調にもよく用いられます。

 

●桂枝茯苓丸

女性ホルモンの変化による皮膚のトラブルに用いられます。

しっかりした体格で、赤ら顔、腹部充実(お腹まわりに脂肪がついてきた、脂肪がついている)などが選択のヒントになります。

皮膚の乾燥以外には、下腹部痛、のぼせて足は冷える、めまい、頭重、肩こり、下肢静脈瘤などのほか、月経不順や月経困難症、月経痛、更年期障害、不妊症などの婦人科系の不調にもよく用いられます。

 

●黄連解毒湯

「熱」による毒症状を解毒する漢方薬。

熱による症状があることが選択のヒントになります。

皮膚の乾燥のほか、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、皮膚炎、皮膚掻痒感、にきび、色素沈着などの皮膚症状のほか、高血圧、動脈硬化、鼻血、血尿、口内炎、慢性胃炎、自律神経失調症、神経症、不眠症、更年期障害、めまい、二日酔いなどに用いられます。

 

 

肌が乾燥してかゆみが強い場合や、かきこわしてしまった場合には、皮膚科を受診するのがおすすめですが、慢性的な乾燥肌の改善には、上記のような漢方薬を試してみるのもよい方法。

漢方薬に詳しい医療機関や漢方薬局などで相談してみましょう。

 

また、下では市販の漢方薬についても紹介します。

 

■編集部セレクト/

肌の乾燥トラブルに悩んだとき、市販の漢方薬から選ぶこともできます

カサつきや粉ふきなど肌の乾燥が気になる、なかなか治らないなど、症状に悩んだとき、いちばんよいのは病院に行って医師に診断してもらうことですが、病院に行く時間がない…といった場合もあるかと思います。

 

病院に行けないときの対策として、ドラッグストアなどで買える市販の漢方薬にはどんなものがあるか、チェックしておきましょう。

 

●当帰飲子

当帰飲子エキス顆粒24Hケース クラシエ

当帰飲子エキス顆粒「クラシエ」(第2類医薬品) 24包(8日分) ¥2,640(メーカー希望小売価格)/クラシエ薬品

製品の詳細はこちら(クラシエ薬品  公式サイト)

 

●温清飲

N-057 ST20包サック ツムラ

ツムラ漢方温清飲エキス顆粒(うんせいいん)(第2類医薬品) 20包(10日分) ¥2,640(メーカー希望小売価格)/ツムラ

製品の詳細はこちら(ツムラ 公式サイト)

 

T-61_温清飲エキス錠120Tケース クラシエ

温清飲エキス錠J(第2類医薬品) 120錠(8日分) ¥2,640(メーカー希望小売価格)/クラシエ薬品

製品の詳細はこちら(クラシエ薬品  公式サイト)

 

 

【教えていただいた方】

今津嘉宏
今津嘉宏さん
医師
公式サイトを見る

「芝大門 いまづ クリニック」院長。藤田保健衛生大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科・副医長、慶應義塾大学医学部漢方医学センター助教、北里大学薬学部非常勤講師などを経て、2013年に「芝大門 いまづ クリニック」(東京都港区芝大門)を開業。日本外科学会認定医・専門医。日本消化器病学会専門医。日本東洋医学会専門医・指導医。西洋医学と東洋医学に精通し、科学的見地に立って漢方による治療を実践。おもな著書に『健康保険が使える漢方薬の事典』(つちや書店)、『まずはコレだけ! 漢方薬』(じほう)などがある。

写真/Shutterstock〈イメージカット〉 取材・文/和田美穂

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