更年期の不調や美容の悩みにも◎。
「脂溶性ビタミン」(ビタミンD、A、E、K)の効果に注目!
用量を守り、過剰摂取には注意して
私たちの体に必須で、不足すると健康を損なったり、命にかかわることもあるのが「ビタミン」や「ミネラル」。
サプリメントをとるなら、まず補いたいのはこれらの栄養素です。
「ビタミンの中でも、特に40代、50代の女性に意識してとっていただきたいのが、水溶性のビタミンでは、ビタミンCとB。脂溶性のビタミンでは、ビタミンD、A、E、Kです」と林巧先生。
「水溶性ビタミン」については、この連載の第3回で詳しく紹介しました。
今回は、「脂溶性ビタミン」について、各ビタミンの効能やサプリメントでとる場合のポイントを、林先生に教えていただきます!
■ビタミンD
骨粗しょう症予防にも、免疫力アップにも欠かせません
「ビタミンDは、40代、50代の女性にとって重要なビタミンです。
女性は、閉経後にエストロゲン(女性ホルモンのひとつ)の減少によって骨粗しょう症になりやすくなりますが、ビタミンDには、カルシウムの吸収を促進する作用があるので、骨密度の維持や骨粗しょう症予防に役立ちます。
また、ビタミンDは、免疫細胞の調節にも関与し、がんの発症や感染症罹患のリスクを低減する効果もあります。
近年、新型コロナウイルスやインフルエンザなど、さまざまな感染症が流行っているため、ビタミンDにますます注目が集まっています。
そのほか、ビタミンDには、動脈硬化や高血圧のリスクの低減、抑うつ症状の緩和、認知機能維持などの効果があることもわかっています。
ビタミンDは、日光を浴びることで体内でも合成されますが、女性は日焼け止めや日傘などで紫外線予防をしている人が多いので、ビタミンD不足の人が多いです。
実際、日本骨粗鬆症学会や日本抗加齢医学会などでも、日本人の多くがビタミンD不足であるという報告があります。
こうした背景もあり、サプリメントを活用して補うのがおすすめなのです」
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「ビタミンDは脂溶性で、油と一緒にとると体への吸収が高まるので、食後にとるのが効果的。
市販のサプリメントは、商品ごとに含有量が異なるので、パッケージに書かれた量を目安に摂取するとよいでしょう。
体調の改善が見られない場合は増やしてとるのもよいですが、脂溶性ビタミンは上限量が決まっているので要注意。
ビタミンDの場合は、1日の耐容上限量(健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限)が100μg(4000IU)となっているので、これを超えないようにしましょう。
また、注意しなければいけないのは、ビタミンDとビタミンAは、適切な量をとればお互いの働きを補完し合うのですが、どちらか一方をとりすぎると、もう一方の吸収や作用が阻害され、欠乏症の症状が出てしまうということ。
ビタミンDをとりすぎるとビタミンAが欠乏し、肌あれやドライアイなどの症状が出やすくなります。
ですから過剰摂取には気をつけましょう。
最近は、ビタミンDとビタミンAが一緒にとれるサプリメントも販売されているので、そういったものをとるのもよいでしょう。
食事から摂取する場合には、ビタミンDを含む食品(魚、きのこ、卵黄)などとともに、ビタミンAを含む食品(レバー、にんじん、かぼちゃ、緑黄色野菜)なども積極的に取り入れましょう。
また、ビタミンDを摂取することによるビタミンA不足を心配する場合は、脂肪酸と一緒にとるとビタミンAの吸収が促進されるので、オメガ3系脂肪酸を含む青魚などと一緒にとるのがおすすめです」
■ビタミンA
皮膚や目の粘膜の健康維持のほか、免疫機能のサポート効果も!
「ビタミンAは、皮膚や目の粘膜の健康を保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。
視力の低下や、夜間にものが見えにくい“夜盲症”の予防に役立ちます。
皮膚の粘膜を健康に保つ働きに加えて、抗酸化作用もあるので美肌の維持にも効果的。
そのほか、免疫機能をサポートする働きもあります。
ビタミンAも脂溶性なので、上限量を守ってとることが大事。
成人女性の1日の耐容上限量は2700μgRAEなので、これを超えないよう、パッケージに記載された量を目安に摂取しましょう。
また、前述したように、ビタミンAとビタミンDは互いに競合するので、どちらもバランスよくとることもポイント。
適切な量をとれば、お互いの働きを補い合うので、骨の健康においても協力的に働いてくれます」
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■ビタミンE
血行促進、抗酸化作用、更年期症状の緩和まで、女性にうれしい効果が多数!
「ビタミンEは、血行をよくする効果で知られているビタミン。
血管拡張作用によって血液循環を促進し、冷えや肩こりの改善に役立ちます。
また、抗酸化作用が高く、同じく抗酸化作用のあるビタミンA、ビタミンCと一緒にとると効果がアップします。
ビタミンEには、皮膚の潤いを保ち、髪の乾燥や切れ毛を防ぐ効果もあるので、美容にとても役立ちます。
更年期以降は、酸化ストレスが増加しやすくなりますが、ビタミンEは抗酸化作用によってこれを軽減してくれるので、酸化ストレスによる慢性疾患リスクの低下も期待できます。
さらにビタミンEには、ホルモン分泌や免疫機能を調節する作用もあり、ホットフラッシュや疲労感などといった更年期症状の緩和にも役立つとされているので、40代、50代の女性には積極的にとっていただきたい栄養素です。
ビタミンEの許容上限摂取量(過剰摂取による健康障害を予防する観点から、特定の集団において、ほとんどすべての人に健康上の悪影響をおよぼす危険のない、栄養素摂取量の最大限の量)は1日800mgとされています。
それを超えない範囲で、商品のパッケージに記載された量を目安に摂取しましょう。
食品では、アーモンドなどの種実類や、ひまわり油などの植物油、ウナギ、かぼちゃ、モロヘイヤなどに多く含まれます」
女性特有の体の不調の悩み、肌や髪へのよい効果など、女性にうれしい働きがたくさんありますね!
■ビタミンK
カルシウムを骨に取り込むのを助け、骨粗しょう症を防ぎます
「脂溶性ビタミンの中で、ビタミンKも意識してとっていただきたい栄養素です。
ビタミンKは、骨形成にかかわるオステオカルシンというタンパク質を活性化させ、カルシウムを骨に取り込みます。
ですから骨粗しょう症の予防によいのです。
骨粗しょう症予防というと、ビタミンDがよく知られていますが、ビタミンKも一緒にとるとより効果的です。
また、骨粗しょう症予防にカルシウムを摂取している人も多いと思いますが、カルシウムをサプリメントや薬で長期的に多くとると、余分なカルシウムが骨や血管などに沈着し、石灰化の原因になることがあります。
ビタミンKには、血管へのカルシウムの沈着を防ぐ作用があるので、カルシウムと一緒にとるのもおすすめです。
ビタミンKは、多量に摂取しても健康被害が見られないので、上限量は設定されていません。
商品のパッケージに書かれた量を目安に摂取しましょう。
食品では、納豆やモロヘイヤ、ブロッコリー、小松菜、わかめなどに多く含まれます」
以上が、特に意識してとりたい「脂溶性ビタミン」です。
「サプリメント初心者の方は、水溶性ビタミンも脂溶性ビタミンも、複数のビタミンがまとめてとれるマルチビタミンを利用するのがおすすめです。
そのうえで、ビタミンCなど、多めにとりたいものをプラスしてとるのもよいでしょう。
自分の体調を見ながらとるようにしましょう」
次回は、「ビタミン」とともに私たちの体に欠かせない栄養素、「ミネラル」をサプリメントでとる場合のポイントをご紹介します。
【教えていただいた方】

はやし・たくみ●医師。1966年、北海道札幌市生まれ 。札幌医科大学卒業。札幌医科大学附属病院では更年期専門外来を担当。斗南病院、函館五稜郭病院、NTT東日本札幌病院を経て、2009年「はやしたくみ女性クリニック」を開業。日本産婦人科学会専門医、日本女性医学学会(旧日本更年期医学会)女性ヘルスケア専門医、日本女性心身医学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本性差医学・医療学会認定医などを取得。産婦人科、女性内科、性差医療の視点から保険診療、保険外診療の両面で、その人その人に合ったケアを行い、女性のこころとからだの健康をサポートしている。
写真/Shutterstock〈イメージカット〉 取材・文/和田美穂